『「あんな化け物と結婚なんて嫌!」と妹が泣くので私が身代わりになりました。……あの、化け物どころか、国一番の美形で紳士な旦那様なんですけど?

ラムネ

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第4話『旦那様は心配性で過保護』

朝、目が覚めた時、最初に視界に入ってきたのは、至近距離で見つめてくる紫水晶のような瞳でした。

「……っ!」

思わず心臓が飛び跳ねそうになりましたが、それが昨夜、私と夫婦の契りを交わしたばかりの夫、ジークハルト様であることに気づき、ほうっと息を吐き出しました。

窓からは柔らかい朝の日差しが差し込み、天蓋付きのベッドを黄金色に染めています。 昨夜の嵐のような天気とは打って変わって、今日は雲ひとつない快晴のようです。

「……おはようございます、旦那様」

私が挨拶をすると、ジークハルト様は眩しいものでも見るように目を細め、ため息交じりに呟きました。

「夢じゃ、なかったか」

その声は、どこか切羽詰まっていて、ひどく掠れていました。 よく見ると、彼の目の下には薄っすらと隈(くま)ができています。

「旦那様? もしかして、一睡もされていないのですか?」

「……ああ。眠れるわけがないだろう」

彼は私の頬にそっと触れました。その指先は相変わらず少し冷たいけれど、昨夜のような怯えはありません。 ただ、壊れ物を扱うような慎重さは変わっていませんでした。

「目を閉じたら、お前が消えてしまう気がした。朝起きたら、またあの冷たい鎧と仮面の日々に戻っているんじゃないかと……そう思ったら、瞬きさえ惜しかった」

子供のような言い分でした。 北の国境を守る冷徹な騎士、化け物と恐れられる辺境伯の言葉とは、到底思えません。

私は胸が締め付けられるような愛おしさを感じ、彼の手を自分の頬に押し当てました。

「消えませんよ。私はここにいます。貴方様の妻として」

「……エルサ」

「もし不安なら、何度でも確かめてください。私は幻ではありません」

私が微笑むと、ジークハルト様は安堵したように肩の力を抜き、シーツの中に顔を埋めました。

「ああ……本当に、よかった」

その姿は、巨大な大型犬が飼い主に甘えているようにも見えました。 昨夜の情熱的で雄々しい彼も素敵でしたが、今の無防備な彼もまた、たまらなく魅力的です。

この銀髪の美青年が、世間で言われる「化け物」だなんて、誰が信じるでしょう。 私だけの秘密。 そう思うと、少しだけ優越感がくすぐられました。

「さて、旦那様。そろそろ起きませんと。使用人たちが心配しますわ」

「……あいつらか。どうせ俺の部屋になんて、死体処理のつもりで来るんだろうがな」

彼は自嘲気味に笑いましたが、その表情は以前ほど暗くはありませんでした。 彼はベッドサイドに置いてあった仮面に手を伸ばしました。

「待ってください、旦那様。城の中でも、その仮面をつけなければならないのですか?」

「……俺の魔力は、お前にだけは効かないようだが、他の者にとっては猛毒だ。お前を抱いて少し落ち着いたとはいえ、まだ制御しきれる自信がない」

彼は寂しげにそう言いながら、慣れた手つきで鉄仮面を装着しました。 カチャリ、という冷たい音と共に、あの絶世の美貌が隠されてしまいます。

少し残念ですが、仕方がありません。 彼が周囲を気遣う優しい人であることは、私が一番よく知っていますから。

コンコン。

控えめなノックの音が響きました。

「……旦那様。お目覚めでしょうか。朝食の準備が整っておりますが……」

扉の向こうから聞こえたのは、昨日のメイドの声でした。 声が震えています。 きっと、「返事がない=花嫁は死んだ」と思っているのでしょう。

ジークハルト様は仮面の奥から私にウインク(したような気配)を送ると、わざと威厳たっぷりの低い声を出しました。

「入れ」

「し、失礼いたします……!」

重厚な扉がゆっくりと開き、メイドたちが恐る恐る入ってきました。 彼女たちは部屋に入るなり、まず床を見ました。 きっと、私の死体が転がっているのを覚悟していたのでしょう。

しかし、そこに広がっていたのは、ベッドの上で優雅にモーニングティー(まだ飲んでいませんが)の気分で座っている私と、その横でガウンを羽織り、くつろいでいる旦那様の姿でした。

「え……?」

メイドの一人が、ぽかんと口を開けました。 トレイに乗っていた水差しが、ガチャンと音を立てて傾きそうになります。

「お、奥様……? ご無事、で……?」

「ええ、おはよう。とてもよく眠れましたわ」

私がにっこりと微笑むと、メイドたちは幽霊でも見たかのように目を見開きました。 そして、次にジークハルト様を見ました。

普段なら、朝のジークハルト様は魔力が不安定で、部屋中に黒い稲妻が走っていることも珍しくないそうです。 しかし今朝の彼は、仮面こそつけていますが、纏っている空気は穏やかそのもの。 あの禍々しい瘴気が、嘘のように消え失せているのです。

「だ、旦那様の魔力が……凪いでいる……?」

「おい、何を突っ立っている。妻の着替えを手伝え。それとも、俺が着させようか?」

ジークハルト様の言葉に、メイドたちは弾かれたように正気に戻りました。

「い、いえ! 滅相もございません! すぐに準備いたします!」

彼女たちは慌てて動き出しましたが、その顔には恐怖よりも困惑と、隠しきれない好奇心の色が浮かんでいました。 一晩で何が起きたのか。 化け物公爵の寝室から、五体満足で、しかも艶やかな笑顔で生還した花嫁。

これは、城中の噂になること間違いなしでしょう。

                  ◇

着替えを終え、私たちは食堂へと向かいました。 長い廊下を歩く間、ジークハルト様はずっと私の手を握っていました。 それも、ただ繋ぐのではなく、指を絡ませる「恋人繋ぎ」で。

すれ違う騎士や使用人たちが、ギョッとして壁に張り付き、二度見していきます。 「あの黒騎士様が、女性と手を繋いでいる……?」 「しかも、あんなに大切そうに……」 そんな囁き声が聞こえてきますが、ジークハルト様は気にする様子もありません。 むしろ、見せつけるように私の腰に手を回したりします。

食堂に到着すると、そこには目を疑うような光景が広がっていました。

長いテーブルの上には、これでもかというほどの料理が並べられていました。 ローストビーフ、七面鳥の丸焼き、山盛りのフルーツ、焼きたてのパン、色とりどりのスープ、何種類ものチーズ……。 十人前のパーティ料理ではありません。 朝食です。

「……あの、旦那様? これは……?」

「お前のために用意させた。何が好みかわからなかったからな、とりあえず作れるものは全部作らせた」

「ぜ、全部……」

テーブルの向こうには、コックたちが整列して緊張した面持ちで立っています。 彼らもまた、「北の化け物」の食卓に毒見なしで挑む気概を見せていますが、その視線は私の反応を固唾を飲んで見守っていました。

ジークハルト様が私の椅子を引き、エスコートしてくれました。 彼が席に着くと、給仕長が震える手でワインを注ごうとしました。

「待て。朝から酒は飲まん」

ジークハルト様が手で制しました。

「えっ? し、しかし旦那様はいつも、魔力の痛みを紛らわすために、朝から強い酒を……」

「必要ない。今は気分がいい」

彼は仮面の下で笑っているようでした。 そして、私の方を向くと、なんと自分でナイフとフォークを手に取り、一番美味しそうな肉を切り分け始めたのです。

「さあ、エルサ。口を開けて」

「……はい?」

「『あーん』だ」

食堂中の時間が止まりました。 給仕長が持っていた空のボトルを落としました。 護衛の騎士が、槍を取り落としました。

あの、冷酷無比、残虐非道、歩く災害と恐れられるジークハルト辺境伯が。 花嫁に、「あーん」をしようとしている。

「だ、旦那様……恥ずかしいです。自分で食べられます」

私が顔を赤くして断ろうとすると、仮面の奥の瞳が悲しげに揺れました。

「嫌か? 俺の手から食べるのは」

「い、嫌ではありませんが……人前ですし……」

「夫婦だぞ? 何も恥じることはない。ほら」

彼は引く気配がありません。 フォークに刺さった肉汁滴るお肉が、私の口元で揺れています。

私は観念しました。 この人は、一度こうと決めたらテコでも動かない頑固さも持ち合わせているようです。

「……あーん」

パクッ。 私が小さく口を開けて肉を食べると、ジークハルト様は全身で喜びを表現するように震えました。

「可愛い……」

「……っ!」

「リスが食べているようだ。もっと食べろ。ほら、次はこのスープだ」

そこからは、怒涛の餌付けタイムでした。 私が「もうお腹いっぱいです」と悲鳴を上げるまで、彼は甲斐甲斐しく私の世話を焼き続けました。 自分は一口も食べていないのに、私が食べるのを見るだけで満腹だと言わんばかりに。

周囲の使用人たちは、最初は恐怖の目で見ていましたが、次第にその表情が生温かいものへと変わっていきました。 「旦那様、あんなキャラだったのか……」 「奥様、すげぇ……猛獣使いだ……」

どうやら、私たちの評価は「恐怖の君主と生贄」から「バカップル」へと急速に書き換えられつつあるようです。

                  ◇

朝食後、ジークハルト様は私を応接間に連れて行きました。 そこには、すでに数人の商人が待機していました。 彼らは街から呼び出された服飾商や宝石商のようでしたが、ジークハルト様の姿を見ると、やはりガタガタと震え上がっています。

「こいつらに、最高の品を持ってこさせた」

ジークハルト様がソファに深く腰掛け、鷹揚に言いました。

「お前の荷物を見たが……あれは何だ。ボロボロのドレスが数着だけ。宝石の一つもない。伯爵家というのは、娘を乞食のような格好で送り出すのが流儀なのか?」

彼の声には、隠しきれない怒りが混じっていました。 私の実家での冷遇ぶりを、彼は荷物を見ただけで察してしまったのでしょう。

「い、いえ、あれは私が……急いでいたので……」

私が庇おうとすると、彼は私の手をギュッと握りました。

「隠さなくていい。お前がどんな扱いを受けてきたか、想像はつく。だからこそ、許せんのだ」

彼は商人を睨みつけました。

「おい、見せてみろ」

「は、はいっ! ただいま!」

商人が慌てて商品を広げました。 色とりどりのシルク、ベルベット、レース。 机の上には、ダイヤモンド、ルビー、サファイアといった宝石が煌めいています。 どれも王都の一流店でも見たことがないような、最高級品ばかりです。

「エルサ、好きなものを選べ」

「え……でも、こんな高価なもの……」

私は躊躇しました。 実家では、新しいドレスなんて数年に一度、マリアのお下がりがもらえるかどうかでした。 自分で選ぶなんて経験、一度もありません。

「選べないなら、全部だ」

「はい?」

「ここから、ここまで。全部置いていけ」

ジークハルト様が、商品の列を端から端まで指差しました。 商人が目をひん剥きました。

「ぜ、全部でございますか!? これ、城が一つ買えるくらいの金額になりますが……!」

「構わん。金なら腐るほどある。俺の妻を飾るのに、予算などという言葉はない」

「待ってください! 旦那様、待ってください!」

私は慌てて彼の腕にしがみつきました。 このままでは、私は一日に十回着替えても追いつかないほどのドレスと、体中に巻き付けても余るほどの宝石を所有することになってしまいます。

「そんなに沢山あっても、使いきれません! それに、私は……その、自分に似合うものがわかりません。今まで、選んだことがないので……」

私の言葉に、ジークハルト様は一瞬動きを止め、それから痛ましげに顔を歪めました。 彼は商人に「少し待て」と合図し、私に向き直りました。

「……そうか。なら、俺が選んでもいいか?」

「ええ、もちろんです。旦那様が選んでくださるなら、それが一番嬉しいです」

「よし」

彼は立ち上がり、真剣な眼差しでドレスの生地を吟味し始めました。 その様子は、戦場で敵の布陣を見極める将軍のように真剣そのものでした。

「この青は、エルサの瞳には少し派手すぎる……もう少し淡い、朝霧のような色がいい」 「この宝石は重すぎる。彼女の細い首が疲れてしまう」 「このレースは肌触りが悪い。却下だ」

彼の選定基準は、デザインよりも「いかに私が快適か」「いかに私を美しく見せるか」に特化していました。 そして何より、「私の体を気遣う」視点が徹底されています。

「足が冷えないように、厚手の靴下も必要だな。北の冬は厳しい」 「寝間着はもっと肌触りの良いものを。最高級の綿花を使ったやつだ」 「あと、部屋履きの靴もだ。ふかふかのやつを持ってこい」

結果として、選ばれたのは、華美な装飾品よりも、実用性と品質を極めた最高級の日常着の山でした。 もちろん、夜会用のドレスや宝石もしっかりと購入されましたが。

「……こんなに、たくさん」

積み上げられた箱の山を見て、私は呆然としました。 これだけで、私の実家の資産価値を超えているかもしれません。

「まだ足りないくらいだ」

ジークハルト様は満足げに頷きました。

「俺は今まで、稼いだ金を何に使えばいいのかわからなかった。戦って、領地を広げ、魔物を狩る。それだけで金は貯まるが、使い道がなかった。だが、やっとわかった」

彼は私の髪に口づけました。

「俺の富も、力も、すべてはお前のためにあったんだ」

その言葉は、どんな宝石よりも輝いて聞こえました。 この人は、本当に不器用で、極端で、でも誰よりも深い愛を持っている人。

私は胸がいっぱいになり、涙がこぼれそうになるのを必死で堪えました。

「ありがとうございます、旦那様。……大切にします。一生」

「ああ。……だが、一生着るには足りないだろうから、来シーズンもまた買うぞ」

「ふふ、気が早いですわ」

私たちは顔を見合わせて笑いました。 その光景を、商人たちも、控えていたメイドたちも、微笑ましそうに(そして少し羨ましそうに)見守っていました。

いつの間にか、部屋の空気はすっかり緩んでいました。 「化け物の城」と呼ばれたこの場所に、温かい春の風が吹き込んだ瞬間でした。

「さて」

買い物を終え、商人を帰らせた後、ジークハルト様は少し真面目な顔になりました。

「エルサ。これから少し、領内の視察に出ようと思うのだが、ついてきてくれるか?」

「視察、ですか?」

「ああ。お前にも、この地を見てほしい。これからお前が暮らす、この辺境の地を」

彼は少し不安そうでした。 北の辺境は「不毛の地」と呼ばれています。 寒く、貧しく、何もない場所だと。 私がその光景を見て、失望するのではないかと恐れているのでしょう。

でも、私は首を横に振りました。

「喜んでお供します。貴方様が守ってきた土地ですもの。きっと素敵な場所に違いありません」

「……そう言ってくれると、救われる」

彼は私の手を引き、立ち上がりました。

「行こう、エルサ。俺たちの領地へ」

こうして、私たちは初めての二人での外出……いいえ、領地デートへと向かうことになったのです。

しかし、そこで私が目にしたのは、噂とは全く違う、驚くべき光景でした。 そして同時に、この領地が抱える「男所帯ゆえの深刻な問題」にも直面することになるのですが……それはまた、次のお話。
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