14 / 14
新たな誓い
しおりを挟む
『さて、行くか…』
先に立ち上がったギムレットは、メイファの脇を抱え、ヒョイッと小川から立ち上がらせた。
「1人で立てます!!!」
キッと睨みつけたメイファの目つきは、以前ほどの迫力はない。
寧ろ蕩けているなと遠くから見守っていたアンリは思った。
『少し外にでよう…皆はそのまま休んでいてくれ』
少し離れたところで待機していた従者たちに声をかけ、ギムレットはメイファを連れ出した。
グリーンプラントのドームの外には宮殿の周りのオアシスとはまた違う木々が茂っていた。
ドームの外でも熱帯の植物が根ずいているんだなとメイファは感心した。
ギムレットは無言で前を歩き、メイファがそれに続いていた。
しばらくすると、ギムレットは立ち止まった、その前には綺麗に磨きあげられた墓標があった。
『メイファ、私の母だよ』
いつものギムレットのからかう表情とは違い、真面目な顔だ。
『母には、君をちゃんとメイファとして紹介したかったんだ。』
だから2人きりでやってきたという。
『母君…私の妻のメイファです。』
ギムレットの表情だけで、この2人が仲の良い親子であったことが分かる。
『メイファ、君は何か理由があってケイトとして嫁いできたのかもしれない。
でも…私は嫁いできたのが君でよかったと思ってるよ』
メイファは目を潤ませて、墓標の前に跪いた。
「お母様、メイファでございます。この度、ギムレット殿下の妻として嫁いで参りました。末永くよろしくお願いいたします」
(ギムレットは、私自身を認めてくれた。)
その事が何よりもメイファの胸を熱くした。祖国の両親にもいつも聡明な姉ケイトと比べられ疎まれて育ってきた。
メイファにとって、自分自身を認めて貰えたことは、何にも変え難い喜びであった。
それからメイファは、これまでの事を語り出した。
デューク王国が祖国の敵だったとしても、これ以上ギムレットに楯突く必要はないと思ったのだ。
姉には想い合う相手がいたこと、病弱で砂漠の気候には耐えられないと思ったこと…。デューク王国は祖国の敵で、策略でパナギア王国が嵌められ、結婚を迫られたと思っていること…。
黙って聞いていたギムレットは、少し間を置いてメイファを抱きしめた。
『そうか…祖国の敵とは心外だな…私は色々と敵を作ってきたからな、恨みを買って悪い噂もあったのかもしれないな。
メイファは、姉想いの優しい子だ。それにいつも太陽のような明るい笑顔、砂の国デュークにはメイファのような王妃が必要だ。』
『改めてメイファとして私と結婚して欲しい。』
跪き、メイファの左手をとったギムレットは、その手にキスをした。
「ギムレット…ありがとう。」
メイファの目からは涙が溢れた。
ギムレットは立ち上がり、メイファを抱きしめながら、いつもの調子で頭をポンポンと撫でた。
『さてさて、でも私を騙そうとした罰を与えなくてはな……』
ギムレットはいつものからかう顔で言った。
『どーしてくれようかなぁ…』
メイファの涙はすっかり止まってしまい、苦笑いで誤魔化した。
ギムレットは、愛おしそうにメイファの首筋に触れたり、唇をなぞったりしている。
メイファの心臓は弾け飛びそうなのであった。
『帰ったら、もう一度結婚の披露宴を行おう。みな、祝杯の準備をしてくれ!』
いつの間にか集まって見守っていたアンリや従者たちは、わぁと歓声をあげ2人を祝福した。
メイファは、何の復讐も出来ないままだったが、そのことはすっかり忘れてしまっていた。
カルロスだけは複雑な気持ちであった…だがメイファの幸せそうな顔を見ていると自然と笑みがこぼれるのであった。
…… Fin ……
拙い表現力、構成で申し訳ありませんでしたが、楽しく執筆させていただきました。
最後まで御付き合い頂き、ありがとうございました!
先に立ち上がったギムレットは、メイファの脇を抱え、ヒョイッと小川から立ち上がらせた。
「1人で立てます!!!」
キッと睨みつけたメイファの目つきは、以前ほどの迫力はない。
寧ろ蕩けているなと遠くから見守っていたアンリは思った。
『少し外にでよう…皆はそのまま休んでいてくれ』
少し離れたところで待機していた従者たちに声をかけ、ギムレットはメイファを連れ出した。
グリーンプラントのドームの外には宮殿の周りのオアシスとはまた違う木々が茂っていた。
ドームの外でも熱帯の植物が根ずいているんだなとメイファは感心した。
ギムレットは無言で前を歩き、メイファがそれに続いていた。
しばらくすると、ギムレットは立ち止まった、その前には綺麗に磨きあげられた墓標があった。
『メイファ、私の母だよ』
いつものギムレットのからかう表情とは違い、真面目な顔だ。
『母には、君をちゃんとメイファとして紹介したかったんだ。』
だから2人きりでやってきたという。
『母君…私の妻のメイファです。』
ギムレットの表情だけで、この2人が仲の良い親子であったことが分かる。
『メイファ、君は何か理由があってケイトとして嫁いできたのかもしれない。
でも…私は嫁いできたのが君でよかったと思ってるよ』
メイファは目を潤ませて、墓標の前に跪いた。
「お母様、メイファでございます。この度、ギムレット殿下の妻として嫁いで参りました。末永くよろしくお願いいたします」
(ギムレットは、私自身を認めてくれた。)
その事が何よりもメイファの胸を熱くした。祖国の両親にもいつも聡明な姉ケイトと比べられ疎まれて育ってきた。
メイファにとって、自分自身を認めて貰えたことは、何にも変え難い喜びであった。
それからメイファは、これまでの事を語り出した。
デューク王国が祖国の敵だったとしても、これ以上ギムレットに楯突く必要はないと思ったのだ。
姉には想い合う相手がいたこと、病弱で砂漠の気候には耐えられないと思ったこと…。デューク王国は祖国の敵で、策略でパナギア王国が嵌められ、結婚を迫られたと思っていること…。
黙って聞いていたギムレットは、少し間を置いてメイファを抱きしめた。
『そうか…祖国の敵とは心外だな…私は色々と敵を作ってきたからな、恨みを買って悪い噂もあったのかもしれないな。
メイファは、姉想いの優しい子だ。それにいつも太陽のような明るい笑顔、砂の国デュークにはメイファのような王妃が必要だ。』
『改めてメイファとして私と結婚して欲しい。』
跪き、メイファの左手をとったギムレットは、その手にキスをした。
「ギムレット…ありがとう。」
メイファの目からは涙が溢れた。
ギムレットは立ち上がり、メイファを抱きしめながら、いつもの調子で頭をポンポンと撫でた。
『さてさて、でも私を騙そうとした罰を与えなくてはな……』
ギムレットはいつものからかう顔で言った。
『どーしてくれようかなぁ…』
メイファの涙はすっかり止まってしまい、苦笑いで誤魔化した。
ギムレットは、愛おしそうにメイファの首筋に触れたり、唇をなぞったりしている。
メイファの心臓は弾け飛びそうなのであった。
『帰ったら、もう一度結婚の披露宴を行おう。みな、祝杯の準備をしてくれ!』
いつの間にか集まって見守っていたアンリや従者たちは、わぁと歓声をあげ2人を祝福した。
メイファは、何の復讐も出来ないままだったが、そのことはすっかり忘れてしまっていた。
カルロスだけは複雑な気持ちであった…だがメイファの幸せそうな顔を見ていると自然と笑みがこぼれるのであった。
…… Fin ……
拙い表現力、構成で申し訳ありませんでしたが、楽しく執筆させていただきました。
最後まで御付き合い頂き、ありがとうございました!
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛
三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。
「……ここは?」
か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。
顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。
私は一体、誰なのだろう?
【完結】夜会で借り物競争をしたら、イケメン王子に借りられました。
櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のセラフィーナには生まれつき前世の記憶があったが、覚えているのはくだらないことばかり。
そのどうでもいい知識が一番重宝されるのが、余興好きの国王が主催する夜会だった。
毎年余興の企画を頼まれるセラフィーナが今回提案したのは、なんと「借り物競争」。
もちろん生まれて初めての借り物競争に参加をする貴族たちだったが、夜会は大いに盛り上がり……。
気付けばセラフィーナはイケメン王太子、アレクシスに借りられて、共にゴールにたどり着いていた。
果たしてアレクシスの引いたカードに書かれていた内容とは?
意味もなく異世界転生したセラフィーナが、特に使命や運命に翻弄されることもなく、王太子と結ばれるお話。
とにかくツッコミどころ満載のゆるい、ハッピーエンドの短編なので、気軽に読んでいただければ嬉しいです。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
小説家になろう様への投稿時から、タイトルを『借り物(人)競争』からただの『借り物競争』へ変更いたしました。
二度目の初恋は、穏やかな伯爵と
柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。
冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる