新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART2 ~鎮西のジャンヌダルク~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

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第二章その6 ~目指すは阿蘇山!~ 火の社攻略編

あるはずのないもの

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「……ぞろぞろと来やがったな、人間ども」

 攻め寄せる軍勢を睨み、焔は静かに呟いた。

 彼自身も巨大な鎧に乗り込み、黒き社の警護についているのである。

 やがて彼の眼前に、燐火の姿が映し出された。

「やけに大人しいわね、焔。いつものおふざけはお休み?」

「……まあな燐火ちゃん。御前様自ら尻拭いをして下さってるんだ。俺がヘタ打つわけにゃいかねえんだわ」

 焔は珍しく淡々と答え、配下の一同にも声をかける。

「……お前達も頼むぜ。とにかく御前様の復活を邪魔させるな。何があってもここだけを守ればいい」

『心得ました』

 配下の連中は口々に答えた。

「……それはそうと燐火ちゃん。あいつらノコノコやってきたが、作戦でもあるのかね。俺っちの手駒も、今回は普通に阿蘇攻めするとしか言ってなかったけど」

「まさかこの軍勢を真っ向から倒せるとは思ってないでしょうけど……窮鼠きゅうそは何するか分からないわ」

 燐火はそう言って、いつものように肩をすくめる。

「それで、もう一つの奥の手はどうなの?」

「夜祖様のアレか。不知火様いわく、土蜘蛛に手柄を取られるのは困るんで、発動はギリギリまで待つんだと。出来れば使わずに済むのが一番さ」

 焔はそこで視線を鋭くした。

「…………どうもあっちに、やっかいなのがいるみたいだぜ。神人以外にも、変な軍師みたいなのがよ」

「……あの地下でった、第5船団のパイロットでしょ。鹿児島攻めを邪魔してくれたのもそいつかしら」

「かもな。だが今度はそうはいかないだろ」

 焔はそこで拳を握り締めた。

「海も遠い、艦砲射撃も届かない。引っ掻き回そうったって、俺達はここで御前様を守るだけだ。おまけに戦力は、質も量もこっちが圧倒的だぜ。これで攻めれるもんなら攻めてみろよ」

「……ちょっとは調子が戻ってきたじゃないの」

 燐火はそう言って口元を緩めるが、次の瞬間。

「……待って焔、何か見えない?」

「何かって、何が」

 焔も急いで目を凝らした。

 迫る人間達の軍勢……それを迎える味方の布陣。

 何もおかしい所はない。そう、何も…………

「な、何だあ……!?」

 一瞬、焔は目を疑った。

 先程まで何も無かったはずの場所に、巨大な人工物が現れていたのだ。

 鋭角的な金属で造られたそれは……人間の船???

「ふ、船だと……!?」

 焔は頭が働かなかった。

 あるはずのないものがここにある。

 しかしどう見ても、それらは人間の護衛艦であった。

「なんだよあれ!? あんなもん、こんな山奥とこにいるわけないだろ!?」

 叫ぶ焔をよそに、居並ぶ護衛艦が輝いた。

 衝撃と共に、多数の味方が細切こまぎれになって宙を舞う。

 強力な艦砲射撃が、超低空で襲ってきたのだ。

「くそったれ、あの船を潰せっ!」

 焔は配下に命じ、軍勢の両翼が突出して船に迫った。

 だがまたも船の姿が消えると、今度は別の場所に現れたのだ。

「な、なんだ、どうなってんだ!?」

 数隻の護衛艦が現れては消え、また別の場所に現れる。

 味方の軍勢は乱れに乱れ、砲撃で散々に打ち崩されていく。
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