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第五章その1 ~ほんとに勝ったの?~ 半信半疑の事後処理編
デートを尾行。探偵になった気分で
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誠達が玄関を出たのと同じ頃。後ろから2人をつける人影があった。
抜き足差し足、あちらの塀からこちらの電柱へ。はたまた放置された廃車の後ろに。見つからないよう、位置を変えながらついていくのだ。
「なんや、鳴っちも鶴っちも元気そうやないの」
先頭に立つ関西弁の少女・難波は、やれやれと肩を竦めた。
いかにも陽気そうな顔立ちで、ショートカットの栗色の髪。上半身は虎柄のTシャツ、下半身はオリーブ色のカーゴパンツだ。
季節外れの半袖なのは、元々暑がりだからであるが、彼女は誠と同じ人型重機小隊の隊員なのだ。
「これなら心配いらへんな。難波ちゃんも安心やで」
「それはいいけど、何で隠れるのよ?」
そう言って難波の後ろから覗くのは、同じ隊の副官を務めるカノンだ。
茜色に澄んだ瞳、緩やかにウェーブを描く赤い髪。そして頭上に生えた2本の角。
言わずと知れた鬼娘なのであるが、500年前、前世の誠に助けられて恋に落ちた彼女は、それからずっと人間の味方なのである。
鬼神族でも始祖の血筋のため、歳をとるのが極端に遅く、今でも見た目は20歳になるかならないかぐらい。
「ええやんカノっち、サプライズは必要やで」
「だよな、こういうのわくわくするぜ。昔やったかくれんぼみてーで」
短髪で元気のいい少年・宮島が頷くと、隣にいたスキンヘッドの少年・香川が続けた。
「い、いやしかし、覗きは悪趣味だぞ宮島。仏の教えにも背くだろうし……」
香川は罪の意識があるのか、少し気まずそうである。
宮島と香川、そしてカノンも、上半身は防寒繊維のスウェット、下半身はカーゴパンツだ。
暑がりの難波が異常なだけで、今は12月。彼らの服装が正しいのだろうが……そこで香川のスキンヘッドに、子犬サイズの牛が飛び乗った。
「別にウシろめたく思わなくてもいいでしょう。神も仏も、このぐらいはギリOKです」
「そうじゃい、それより大きい声出すなよ。ワシらがつけとるのがバレるぞ」
眼帯を付けた狛犬も香川の右肩に飛び乗り、口に前足を当てて『静かに』のポーズを取った。
「そう心配しなくてもよござんす。姫様もお疲れでやんすし、あんまり感知出来てないようで」
菅笠をかぶった旅装束のサルが、今度は香川の左肩に飛び乗る。
「けど念のためや、隠れのまじないかけとるからな」
更にキツネがジャンプしてきて、香川は慌てて両手でキャッチする。
「心配いらんさコン三郎、もし見つかったら、肉体美で彫刻に見せかければいい」
他の神使より何倍も大きい龍が、そう言って香川の背に飛び乗った。
香川は背を曲げ、重さに悲鳴を上げる。
「ぬおっ、こいつだけ飛びぬけて重いっ……!」
「そりゃあ筋肉リュウリュウだからな」
龍は嬉しそうにダンベルを取り出し、筋肉ポーズをとっている。
難波はそんなじゃれあいを楽しげに見ながら、一同に声をかけた。
「よっしゃ、ほんならついてくで。もしかしたら、ロマンスシーンもあるかもしれんし」
「ちょっとあんた、ロマンスって何なのよ……ってこの台詞、前にも言った気がするわね?」
カノンはデジャヴに襲われるが、ともかく一同は追跡を再開した。
抜き足差し足、あちらの塀からこちらの電柱へ。はたまた放置された廃車の後ろに。見つからないよう、位置を変えながらついていくのだ。
「なんや、鳴っちも鶴っちも元気そうやないの」
先頭に立つ関西弁の少女・難波は、やれやれと肩を竦めた。
いかにも陽気そうな顔立ちで、ショートカットの栗色の髪。上半身は虎柄のTシャツ、下半身はオリーブ色のカーゴパンツだ。
季節外れの半袖なのは、元々暑がりだからであるが、彼女は誠と同じ人型重機小隊の隊員なのだ。
「これなら心配いらへんな。難波ちゃんも安心やで」
「それはいいけど、何で隠れるのよ?」
そう言って難波の後ろから覗くのは、同じ隊の副官を務めるカノンだ。
茜色に澄んだ瞳、緩やかにウェーブを描く赤い髪。そして頭上に生えた2本の角。
言わずと知れた鬼娘なのであるが、500年前、前世の誠に助けられて恋に落ちた彼女は、それからずっと人間の味方なのである。
鬼神族でも始祖の血筋のため、歳をとるのが極端に遅く、今でも見た目は20歳になるかならないかぐらい。
「ええやんカノっち、サプライズは必要やで」
「だよな、こういうのわくわくするぜ。昔やったかくれんぼみてーで」
短髪で元気のいい少年・宮島が頷くと、隣にいたスキンヘッドの少年・香川が続けた。
「い、いやしかし、覗きは悪趣味だぞ宮島。仏の教えにも背くだろうし……」
香川は罪の意識があるのか、少し気まずそうである。
宮島と香川、そしてカノンも、上半身は防寒繊維のスウェット、下半身はカーゴパンツだ。
暑がりの難波が異常なだけで、今は12月。彼らの服装が正しいのだろうが……そこで香川のスキンヘッドに、子犬サイズの牛が飛び乗った。
「別にウシろめたく思わなくてもいいでしょう。神も仏も、このぐらいはギリOKです」
「そうじゃい、それより大きい声出すなよ。ワシらがつけとるのがバレるぞ」
眼帯を付けた狛犬も香川の右肩に飛び乗り、口に前足を当てて『静かに』のポーズを取った。
「そう心配しなくてもよござんす。姫様もお疲れでやんすし、あんまり感知出来てないようで」
菅笠をかぶった旅装束のサルが、今度は香川の左肩に飛び乗る。
「けど念のためや、隠れのまじないかけとるからな」
更にキツネがジャンプしてきて、香川は慌てて両手でキャッチする。
「心配いらんさコン三郎、もし見つかったら、肉体美で彫刻に見せかければいい」
他の神使より何倍も大きい龍が、そう言って香川の背に飛び乗った。
香川は背を曲げ、重さに悲鳴を上げる。
「ぬおっ、こいつだけ飛びぬけて重いっ……!」
「そりゃあ筋肉リュウリュウだからな」
龍は嬉しそうにダンベルを取り出し、筋肉ポーズをとっている。
難波はそんなじゃれあいを楽しげに見ながら、一同に声をかけた。
「よっしゃ、ほんならついてくで。もしかしたら、ロマンスシーンもあるかもしれんし」
「ちょっとあんた、ロマンスって何なのよ……ってこの台詞、前にも言った気がするわね?」
カノンはデジャヴに襲われるが、ともかく一同は追跡を再開した。
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