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第五章その2 ~おめでとう!~ やっと勝利のお祝い編
修学旅行ってこんな感じ?
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一方その頃、女子達のお座敷である。
年頃……というには年齢差があり過ぎるが、ともかく乙女が集まれば、すぐに眠れるわけもない。皆好き勝手にお喋りを楽しんでいた。
(なんかこれ、修学旅行みたいやな。行った事無いけど)
難波は昔見たアニメの記憶を思い出しながら、目の前の光景を眺めた。
布団を座敷に敷き詰め、その上に浴衣姿の皆が座っている。
今にも恋バナや枕投げ、熱いプロレスが始まりそうだったし、見回りの先生がふすまを開けたりしそうだ。
(こういう時は恋バナやけど……気まずくなりそうやし、やめとこか)
難波は気を取り直して鶴に尋ねた。
「そんで鶴っち、よそんところではどうだったん?」
「そうね、それはもう、すんばらしい活躍だったわ」
鶴は得意げに語り始める。
「押し寄せる敵をちぎっては投げ、ちぎっては投げ。まさに伝説級の活躍、そして真面目さだったわ」
コマが呆れてツッコミを入れる。
「また話を盛る気だな。誤魔化さずに、ちゃんと映像で見せてあげなよ」
「もう、終始しょうがない狛犬ねえ」
鶴はしぶしぶ小さな映写機を取り出した。女神から借りた神器の一つで、思い出や心を映す便利な道具だ。
「返さないで粘ったら、ナギっぺがくれたのよ。予備がもう1つあるからって。これも鶴ちゃんの日頃の行いよね」
「いやいや、日本を取り戻したから大目に見てくれたんだと思うよ?」
コマもツッコミがフル回転であるが、ともかく一同は、映し出された映像を眺めた。
旧宮崎県の日南海岸撤退戦。逃げる部隊に『火車』が追いつき、火球を吐いて大暴れしていた。
そして旧鹿児島市での防衛戦。満ち潮を利用して、『城喰い』という1500メートル級の巨大餓霊を打ち倒した。
天草や船団長を穏やかに説得?し、邪神・熊襲御前の復活を阻止すると、息つく暇もなく能登半島へ急行。第2・第4船団を駆け回り、船団長の縁結びを企んだ。
闇の神人、強力な幽鬼兵団などに苦しめられながらも、最後には船団長同士がカップルとなり、強固な同盟が結ばれたのだ。
やがて魔王ディアヌスが復活し、進撃を開始。
南アルプスで闇の神人と戦い、愛鷹山山頂から長距離砲撃を試みる。最後は超巨大人型重機の震天と、魔王ディアヌスの一騎打ちだ。
「おっ、こっからはうちらの戦いやな」
ディアヌス戦が終わると映像が撒き戻されたのか、今度は四国の戦いが再現された。
旧香川県からの撤退戦。
そして5000を超える敵部隊を迎え撃つ、高縄半島防衛戦。この時は本当に、全員死を覚悟していた。
お姫様やコマ、そして女神が来てくれなければ、確実に怪物の餌になっていただろう。
その後は、四国各地の避難区を襲う敵を次々打ち破り、船団議員の佐々木氏を味方につけた。
鳴門地区の防衛戦では、山中で無数の敵と鬼ごっこしたし、四国最後の戦いでは、クーデターで旗艦みしまが狙われたのだ。
「…………………………」
まるで神話の絵巻物のような大活劇を、一同は見つめていた。
どれも恐ろしく、いつ命を落としてもおかしくない事態のはずだったが、こうして見ると少し懐かしく感じるのは気のせいだろうか。
「……ほんま、色んな事があったんよな。必死やったから、あんま覚えてへんかったけど」
難波が言うと、鳳が微笑んだ。
「そうですね。でもこれからが本番でございますよ。日本が復興して、生き残った皆さんが幸せになる事……それが亡くなった方々への一番のお弔いです」
「なんか香川の言いそうな事やわ」
難波は天井を見上げてニヤついた。
ちょうど男どうしでふざけていたのか、2階から「アーッ!?」と悲鳴が響いてくる。
「賑やかやな、シモネタで盛り上がっとるんやろか」
「しっ、シモネタって、あんたねえ……!」
カノンはそこまで言って、トマトのように顔が赤くなる。
「なんやカノっち、鳴っちジュニアの事思い出しとるんか?」
「ちっ違うわよっ! 大体あたしは見てないじゃない」
「いや、カノっちにも見せてやりたかったで。鳴っちのやつ、顔に似合わずそれはそれは鳴っちやったで」
「どういう意味よっ!」
カノンが真っ赤な顔でツッコミを入れ、鶴も、鳳も赤い顔で笑った。
ひとしきり笑って、やがてコマが口を開いた。
「でも、飛鳥さんの言う通りだよ。昔、岩凪姫様も言ってた。復興って、ただ町が元に戻るだけじゃないって。そこに生きてる人が笑顔を取り戻して、それで初めて復興だってさ」
「ナギっぺにしてはいい事言うわね」
鶴は目の前に女神がいないので、好き勝手な事を言う。
難波は苦笑して、それから床の間の神棚を見つめた。
「女神さんかあ……最初は怖く見えたけど、案外優しいとこあるんよな」
難波が言うと、鶴が凄い勢いで訂正してくる。
「まあ、それは誤解よ。ナギっぺときたら、ほんとに怖いし厳しいんだから」
「それは君が遊びすぎるからだろ」
コマは慌てて訂正し直した。
「君以外の前では、結構優しいんだよ? それにほら、日本奪還のお役目を受けて、かなりプレッシャーだったんだ。だからさ、」
コマはそこで言葉を切った。
「だから今頃、きっとホッとしてると思うよ?」
年頃……というには年齢差があり過ぎるが、ともかく乙女が集まれば、すぐに眠れるわけもない。皆好き勝手にお喋りを楽しんでいた。
(なんかこれ、修学旅行みたいやな。行った事無いけど)
難波は昔見たアニメの記憶を思い出しながら、目の前の光景を眺めた。
布団を座敷に敷き詰め、その上に浴衣姿の皆が座っている。
今にも恋バナや枕投げ、熱いプロレスが始まりそうだったし、見回りの先生がふすまを開けたりしそうだ。
(こういう時は恋バナやけど……気まずくなりそうやし、やめとこか)
難波は気を取り直して鶴に尋ねた。
「そんで鶴っち、よそんところではどうだったん?」
「そうね、それはもう、すんばらしい活躍だったわ」
鶴は得意げに語り始める。
「押し寄せる敵をちぎっては投げ、ちぎっては投げ。まさに伝説級の活躍、そして真面目さだったわ」
コマが呆れてツッコミを入れる。
「また話を盛る気だな。誤魔化さずに、ちゃんと映像で見せてあげなよ」
「もう、終始しょうがない狛犬ねえ」
鶴はしぶしぶ小さな映写機を取り出した。女神から借りた神器の一つで、思い出や心を映す便利な道具だ。
「返さないで粘ったら、ナギっぺがくれたのよ。予備がもう1つあるからって。これも鶴ちゃんの日頃の行いよね」
「いやいや、日本を取り戻したから大目に見てくれたんだと思うよ?」
コマもツッコミがフル回転であるが、ともかく一同は、映し出された映像を眺めた。
旧宮崎県の日南海岸撤退戦。逃げる部隊に『火車』が追いつき、火球を吐いて大暴れしていた。
そして旧鹿児島市での防衛戦。満ち潮を利用して、『城喰い』という1500メートル級の巨大餓霊を打ち倒した。
天草や船団長を穏やかに説得?し、邪神・熊襲御前の復活を阻止すると、息つく暇もなく能登半島へ急行。第2・第4船団を駆け回り、船団長の縁結びを企んだ。
闇の神人、強力な幽鬼兵団などに苦しめられながらも、最後には船団長同士がカップルとなり、強固な同盟が結ばれたのだ。
やがて魔王ディアヌスが復活し、進撃を開始。
南アルプスで闇の神人と戦い、愛鷹山山頂から長距離砲撃を試みる。最後は超巨大人型重機の震天と、魔王ディアヌスの一騎打ちだ。
「おっ、こっからはうちらの戦いやな」
ディアヌス戦が終わると映像が撒き戻されたのか、今度は四国の戦いが再現された。
旧香川県からの撤退戦。
そして5000を超える敵部隊を迎え撃つ、高縄半島防衛戦。この時は本当に、全員死を覚悟していた。
お姫様やコマ、そして女神が来てくれなければ、確実に怪物の餌になっていただろう。
その後は、四国各地の避難区を襲う敵を次々打ち破り、船団議員の佐々木氏を味方につけた。
鳴門地区の防衛戦では、山中で無数の敵と鬼ごっこしたし、四国最後の戦いでは、クーデターで旗艦みしまが狙われたのだ。
「…………………………」
まるで神話の絵巻物のような大活劇を、一同は見つめていた。
どれも恐ろしく、いつ命を落としてもおかしくない事態のはずだったが、こうして見ると少し懐かしく感じるのは気のせいだろうか。
「……ほんま、色んな事があったんよな。必死やったから、あんま覚えてへんかったけど」
難波が言うと、鳳が微笑んだ。
「そうですね。でもこれからが本番でございますよ。日本が復興して、生き残った皆さんが幸せになる事……それが亡くなった方々への一番のお弔いです」
「なんか香川の言いそうな事やわ」
難波は天井を見上げてニヤついた。
ちょうど男どうしでふざけていたのか、2階から「アーッ!?」と悲鳴が響いてくる。
「賑やかやな、シモネタで盛り上がっとるんやろか」
「しっ、シモネタって、あんたねえ……!」
カノンはそこまで言って、トマトのように顔が赤くなる。
「なんやカノっち、鳴っちジュニアの事思い出しとるんか?」
「ちっ違うわよっ! 大体あたしは見てないじゃない」
「いや、カノっちにも見せてやりたかったで。鳴っちのやつ、顔に似合わずそれはそれは鳴っちやったで」
「どういう意味よっ!」
カノンが真っ赤な顔でツッコミを入れ、鶴も、鳳も赤い顔で笑った。
ひとしきり笑って、やがてコマが口を開いた。
「でも、飛鳥さんの言う通りだよ。昔、岩凪姫様も言ってた。復興って、ただ町が元に戻るだけじゃないって。そこに生きてる人が笑顔を取り戻して、それで初めて復興だってさ」
「ナギっぺにしてはいい事言うわね」
鶴は目の前に女神がいないので、好き勝手な事を言う。
難波は苦笑して、それから床の間の神棚を見つめた。
「女神さんかあ……最初は怖く見えたけど、案外優しいとこあるんよな」
難波が言うと、鶴が凄い勢いで訂正してくる。
「まあ、それは誤解よ。ナギっぺときたら、ほんとに怖いし厳しいんだから」
「それは君が遊びすぎるからだろ」
コマは慌てて訂正し直した。
「君以外の前では、結構優しいんだよ? それにほら、日本奪還のお役目を受けて、かなりプレッシャーだったんだ。だからさ、」
コマはそこで言葉を切った。
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