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第五章その3 ~夢のバカンス!~ 隙あらば玉手の竜宮編
乙姫ライブフェスへようこそ!
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屋外広場には、既に凄い熱気が渦巻いていた。
会場に詰め掛けた魚介達は、手に手に団扇やプラカードを持っていたが、そのどれもに乙姫2人が写っている。
ギチギチと声を上げるイセエビが、熱心に何かを訴えかけてきたが、誠は適当に「そ、そうですよね……」と同意しておいた。
やがて音楽フェスが始まり、前座の様々なバンドが登場する。
イケメン?のカニ達が集まったグループ、イケガニ☆クラブが登場すると、ファンのカニが泡を吹いてひっくり返り、次々担架で運ばれていく。
「地獄絵図だな……」
誠が引き気味で呟いていると、突然ステージに眩いライトが灯った。
無数の花火が打ち上げられ、お城のような舞台装置から、2人の女神が降りてくる。
先ほど竜宮門で会った豊玉姫と玉依姫であり、巨大なモニターが2人を大映しにした。
「みんな~っ、今日は来てくれてありがとうです~♪」
玉依姫が手を振って、魚介達が盛り上がると、豊玉姫が声を張り上げる。
「それじゃ、一曲目いくわね。厳島のお三方からいただいた曲で、『恋の玉手箱』! 今あっちとも繋がってるから生演奏よ!」
巨大スクリーンには、別地点にいるであろう女神3人が映って手を振ってくれる。楽器が得意だと聞いた事があるが、まさか他の神にも曲を提供しているとは……
やがてライトが点滅すると、派手にドラムが打ち鳴らされ、夏っぽいポップな曲が始まった。ギターっぽい琵琶も軽快で、聞いているだけでウキウキしてくる。
乙姫達は上機嫌で歌い踊り、誠の隣のイセエビは、しきりにこちらに何かを訴えかけてきた。
「そ、そうですよね、最高ですよね」
誠は適当に答え、エビに渡された棒型発光器を振るった。
「2人で~っ、開けるわ~っ、恋のた・ま・て・ば・こ!」
サビの歌詞とともに女神2人がウインクすると、ステージから白い煙が吹き上がった。
最初はドライアイスかと思ったのだが、最前列の魚介達が力なく浮き上がっていくので、どうやら老化ガスのようだ。
「玉手箱の煙か。危険なライブだ……」
誠はドン引きだったが、他のみんなは十分楽しんでいるようだ。
そのまま10曲近くが続き、多数の魚が力無く漂っているが、女神2人は汗を光らせ、キラキラした笑顔で手を振った。
「それじゃあみんな、このあと竜宮杯野球があるから、絶対観戦してね!」
ファンの魚介が雄たけびを上げ、怒涛の勢いで移動するので、誠達も流されていく。
着いてみると、球場は既に超満員だ。
乙姫様の計らいか、誠達はバックネット裏に案内され、試合を間近で見る事が出来る。
「うわあ、楽しみだぜ、オヤジの試合以来だな! 海の野球って、どんな選手がいるんだろ?」
野球好きの宮島は俄然元気になって、渡されたパンフレットに見入っている。
鶴や難波は球場グルメをつまんでいたし、香川は照明を反射して真珠のように目立っていた。
やがて両チームの選手が入場してくると、なぜか聞いた事のある曲が流れる。
「何で甲子園の曲なんだよ」
誠がツッコミを入れると、鳳は興奮したように拳を握る。
「いいですよね、私は好きですよ」
そこで鳳は誠を見て、顔中真っ赤になった。
「あっいえっ、好きというのは曲の事でして! はしたない女だと思わないで下さいっ!」
「お、思ってません! 思わないから落ち着いて!」
鳳が手をぶんぶん振り回すので、誠は反対側に身を寄せたが、そこでカノンに寄りかかってしまう。
「あっ、ごめんカノン」
誠は振り返るが、カノンはちょっと潤んだ目で、そっと首を振った。
「…………ううん、幸せ。今日の事、一生忘れない……」
「ええっ……!?」
カノンも寄りかかってきて、球場デートみたいな雰囲気になるが、そこで試合が開始された。
試合内容は凄惨を極めた。
素行の悪いサメ原のラフプレー。
足でかき回すマグロ川は、スパイクに包丁を仕込んでいる。
ピッチャーのタコハチが8個のボールを投げるので、バッターのシャチ山は怒ってタコを追いかける。
そこから乱闘が始まり、タコが墨を吐いて逃げるので、球場は最早カオスになった。
見かねた審判が玉手箱を投げ込み、白いガスが充満すると、選手達は老化して力なく浮き上がった。
「いいぞっ、やれやれーっ!」
「これぞ諸行無常だな!」
宮島や香川は喜んでいるが、これでは貴重な選手が寿命を迎えてしまう。
審判は尚も催涙弾のように玉手箱を投げ込み、老化を恐れた選手が打ち返した玉手箱が観客席を襲った。
『ファール玉手にご注意下さい』と放送が入るが、そこで難波の手に玉手箱が落ちてきた。
「あかん鳴っち、パス!」
「うわっ、紐がほどけかけてる!」
一同はラグビーのように玉手箱をパスしまくった。
その後も会場を変えてイベントは続いた。
竜宮プロレスは危険なデスマッチであり、鯛がマグロに玉手箱をたたきつけたところで箱が開き、両者ぶっ倒れてゴングが鳴った。
結局王座ベルトは空位になってしまう。
「気になるわ、第2戦はいつなのかしら」
鶴は夢中でパンフレットを見ているが、誠が横からパンフレットを覗くと、歴代ベルト保有者の顔は、全員遺影の写真だった。
「王座が全員故人なのかよ……」
夢の国なのにハードすぎるのだ。
会場に詰め掛けた魚介達は、手に手に団扇やプラカードを持っていたが、そのどれもに乙姫2人が写っている。
ギチギチと声を上げるイセエビが、熱心に何かを訴えかけてきたが、誠は適当に「そ、そうですよね……」と同意しておいた。
やがて音楽フェスが始まり、前座の様々なバンドが登場する。
イケメン?のカニ達が集まったグループ、イケガニ☆クラブが登場すると、ファンのカニが泡を吹いてひっくり返り、次々担架で運ばれていく。
「地獄絵図だな……」
誠が引き気味で呟いていると、突然ステージに眩いライトが灯った。
無数の花火が打ち上げられ、お城のような舞台装置から、2人の女神が降りてくる。
先ほど竜宮門で会った豊玉姫と玉依姫であり、巨大なモニターが2人を大映しにした。
「みんな~っ、今日は来てくれてありがとうです~♪」
玉依姫が手を振って、魚介達が盛り上がると、豊玉姫が声を張り上げる。
「それじゃ、一曲目いくわね。厳島のお三方からいただいた曲で、『恋の玉手箱』! 今あっちとも繋がってるから生演奏よ!」
巨大スクリーンには、別地点にいるであろう女神3人が映って手を振ってくれる。楽器が得意だと聞いた事があるが、まさか他の神にも曲を提供しているとは……
やがてライトが点滅すると、派手にドラムが打ち鳴らされ、夏っぽいポップな曲が始まった。ギターっぽい琵琶も軽快で、聞いているだけでウキウキしてくる。
乙姫達は上機嫌で歌い踊り、誠の隣のイセエビは、しきりにこちらに何かを訴えかけてきた。
「そ、そうですよね、最高ですよね」
誠は適当に答え、エビに渡された棒型発光器を振るった。
「2人で~っ、開けるわ~っ、恋のた・ま・て・ば・こ!」
サビの歌詞とともに女神2人がウインクすると、ステージから白い煙が吹き上がった。
最初はドライアイスかと思ったのだが、最前列の魚介達が力なく浮き上がっていくので、どうやら老化ガスのようだ。
「玉手箱の煙か。危険なライブだ……」
誠はドン引きだったが、他のみんなは十分楽しんでいるようだ。
そのまま10曲近くが続き、多数の魚が力無く漂っているが、女神2人は汗を光らせ、キラキラした笑顔で手を振った。
「それじゃあみんな、このあと竜宮杯野球があるから、絶対観戦してね!」
ファンの魚介が雄たけびを上げ、怒涛の勢いで移動するので、誠達も流されていく。
着いてみると、球場は既に超満員だ。
乙姫様の計らいか、誠達はバックネット裏に案内され、試合を間近で見る事が出来る。
「うわあ、楽しみだぜ、オヤジの試合以来だな! 海の野球って、どんな選手がいるんだろ?」
野球好きの宮島は俄然元気になって、渡されたパンフレットに見入っている。
鶴や難波は球場グルメをつまんでいたし、香川は照明を反射して真珠のように目立っていた。
やがて両チームの選手が入場してくると、なぜか聞いた事のある曲が流れる。
「何で甲子園の曲なんだよ」
誠がツッコミを入れると、鳳は興奮したように拳を握る。
「いいですよね、私は好きですよ」
そこで鳳は誠を見て、顔中真っ赤になった。
「あっいえっ、好きというのは曲の事でして! はしたない女だと思わないで下さいっ!」
「お、思ってません! 思わないから落ち着いて!」
鳳が手をぶんぶん振り回すので、誠は反対側に身を寄せたが、そこでカノンに寄りかかってしまう。
「あっ、ごめんカノン」
誠は振り返るが、カノンはちょっと潤んだ目で、そっと首を振った。
「…………ううん、幸せ。今日の事、一生忘れない……」
「ええっ……!?」
カノンも寄りかかってきて、球場デートみたいな雰囲気になるが、そこで試合が開始された。
試合内容は凄惨を極めた。
素行の悪いサメ原のラフプレー。
足でかき回すマグロ川は、スパイクに包丁を仕込んでいる。
ピッチャーのタコハチが8個のボールを投げるので、バッターのシャチ山は怒ってタコを追いかける。
そこから乱闘が始まり、タコが墨を吐いて逃げるので、球場は最早カオスになった。
見かねた審判が玉手箱を投げ込み、白いガスが充満すると、選手達は老化して力なく浮き上がった。
「いいぞっ、やれやれーっ!」
「これぞ諸行無常だな!」
宮島や香川は喜んでいるが、これでは貴重な選手が寿命を迎えてしまう。
審判は尚も催涙弾のように玉手箱を投げ込み、老化を恐れた選手が打ち返した玉手箱が観客席を襲った。
『ファール玉手にご注意下さい』と放送が入るが、そこで難波の手に玉手箱が落ちてきた。
「あかん鳴っち、パス!」
「うわっ、紐がほどけかけてる!」
一同はラグビーのように玉手箱をパスしまくった。
その後も会場を変えてイベントは続いた。
竜宮プロレスは危険なデスマッチであり、鯛がマグロに玉手箱をたたきつけたところで箱が開き、両者ぶっ倒れてゴングが鳴った。
結局王座ベルトは空位になってしまう。
「気になるわ、第2戦はいつなのかしら」
鶴は夢中でパンフレットを見ているが、誠が横からパンフレットを覗くと、歴代ベルト保有者の顔は、全員遺影の写真だった。
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