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第五章その5 ~黙っててごめんね~ とうとうあなたとお別れ編
迷子を助けてあげましょう
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「……あら、迷子かしら?」
唐突に鶴が歩みを止めた。
誠が目をこらすと、100メートル程先の道端……農作業用物置のそばに、幼い男の子が蹲っていた。
まだ6、7歳ぐらいだろうか。明るい青のダウンジャケットを着ており、膝を抱えて顔を伏せている。
羽毛や中綿が希少なため、ダウンジャケットは政府の衣類支給品目録には記されていない。
かといって形見や年代ものにも見えないので、恐らく高価な特注品なのだろう。
「どうした、1人か?」
誠は言葉を選びながら声をかけた。
見た目の年齢から、日本がこうなった後に生まれた子だろう。
結婚や出産は、ある程度立場の高い……島嶼部や安全な避難区の住民にのみ許されるものだったが、それでも家族を亡くした可能性はゼロじゃない。
だから声をかける時、『お父さんお母さんは?』と言ってはならないのだ。
「………………」
子供は恐る恐る顔を上げる。
しばらく誠や鶴を見つめていたが、やがて堰を切ったように泣き出した。
「可愛そうに。平気よ、この鶴ちゃんに話してみて」
鶴が辛抱強く話を聞きだす。
この子は家族と共に、小笠原諸島の避難区に住んでいたらしい。
餓霊が跋扈する本土から著しく遠く、かなり裕福な者しか住めない高級居住地だ。
そこで惨劇とは遠い生活を送っていたのだが、突然彼と両親の元に、黒い衣服の大人達が訪れたのだ。
大人達は両親を捕らえ、不思議な光に包まれた。
両親が連れて行かれる、と思った彼は、咄嗟にその光に駆け寄った。
そしたらいつの間にかこの辺りに居て、1人ぼっちだったのだ。
しばらくあても無く両親を探し回ったのだが、力尽きて道端に座っていた……というわけだ。
鶴は子供の背を撫でながら言った。
「なるほど、良く分かったわ。悪い奴等に攫われたのね」
「空間を渡ったって事は、魔族の残党か何かだろうな。距離も長いし、どこかに転移の魔法陣を組んでたんだ。かなり大掛かりな人攫いだぞ」
誠も考えながら答える。
「要人を捕まえて、何か企んでるのかも知れないな」
「きっとそうね。ねえ黒鷹、私達で探してあげましょうよ」
「え、俺達だけで?」
予想外の返事に、誠は正直面食らった。
「小笠原からここまで飛ぶくらい、大規模な術を使うんだろ。けっこう面倒な相手だと思うけど……今の俺達で対処できるか?」
「時間が経ったら、危なくなるかも知れないわ。見つけたらナギっぺ達に任せるし、探すぐらい出来るわよ」
鶴は自信満々で言うと、虚空から虫眼鏡を取り出す。
それから周囲の道を観察し、幼子と似た霊気を探し始めた。
「こっちの方に、似た感じの気がありそうよ」
鶴はどんどん先に歩いていく。
思い出すわ、こうやっていっぱい冒険したわね……などと言いながら進む鶴に、誠は戸惑いながら付いて行くのだ。
唐突に鶴が歩みを止めた。
誠が目をこらすと、100メートル程先の道端……農作業用物置のそばに、幼い男の子が蹲っていた。
まだ6、7歳ぐらいだろうか。明るい青のダウンジャケットを着ており、膝を抱えて顔を伏せている。
羽毛や中綿が希少なため、ダウンジャケットは政府の衣類支給品目録には記されていない。
かといって形見や年代ものにも見えないので、恐らく高価な特注品なのだろう。
「どうした、1人か?」
誠は言葉を選びながら声をかけた。
見た目の年齢から、日本がこうなった後に生まれた子だろう。
結婚や出産は、ある程度立場の高い……島嶼部や安全な避難区の住民にのみ許されるものだったが、それでも家族を亡くした可能性はゼロじゃない。
だから声をかける時、『お父さんお母さんは?』と言ってはならないのだ。
「………………」
子供は恐る恐る顔を上げる。
しばらく誠や鶴を見つめていたが、やがて堰を切ったように泣き出した。
「可愛そうに。平気よ、この鶴ちゃんに話してみて」
鶴が辛抱強く話を聞きだす。
この子は家族と共に、小笠原諸島の避難区に住んでいたらしい。
餓霊が跋扈する本土から著しく遠く、かなり裕福な者しか住めない高級居住地だ。
そこで惨劇とは遠い生活を送っていたのだが、突然彼と両親の元に、黒い衣服の大人達が訪れたのだ。
大人達は両親を捕らえ、不思議な光に包まれた。
両親が連れて行かれる、と思った彼は、咄嗟にその光に駆け寄った。
そしたらいつの間にかこの辺りに居て、1人ぼっちだったのだ。
しばらくあても無く両親を探し回ったのだが、力尽きて道端に座っていた……というわけだ。
鶴は子供の背を撫でながら言った。
「なるほど、良く分かったわ。悪い奴等に攫われたのね」
「空間を渡ったって事は、魔族の残党か何かだろうな。距離も長いし、どこかに転移の魔法陣を組んでたんだ。かなり大掛かりな人攫いだぞ」
誠も考えながら答える。
「要人を捕まえて、何か企んでるのかも知れないな」
「きっとそうね。ねえ黒鷹、私達で探してあげましょうよ」
「え、俺達だけで?」
予想外の返事に、誠は正直面食らった。
「小笠原からここまで飛ぶくらい、大規模な術を使うんだろ。けっこう面倒な相手だと思うけど……今の俺達で対処できるか?」
「時間が経ったら、危なくなるかも知れないわ。見つけたらナギっぺ達に任せるし、探すぐらい出来るわよ」
鶴は自信満々で言うと、虚空から虫眼鏡を取り出す。
それから周囲の道を観察し、幼子と似た霊気を探し始めた。
「こっちの方に、似た感じの気がありそうよ」
鶴はどんどん先に歩いていく。
思い出すわ、こうやっていっぱい冒険したわね……などと言いながら進む鶴に、誠は戸惑いながら付いて行くのだ。
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