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第五章その6 ~やっと平和になったのに!~ 不穏分子・自由の翼編
いちばん大事な事は何だ?
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「ハッタリですか……?」
驚く鳳に誠は頷く。
「はい。そもそもあの夜祖なら、不是みたく口の軽い奴にほんとの狙いを言うわけない。不是が知ってるなら、口を滑らす事も計算に入れてる。つまり情報操作なんだ。次々出す情報でこっちの思考を誘導して、真の狙いをくらませてるんじゃないでしょうか」
そこで鳳がおずおずと尋ねる。
「で、では黒鷹様。敵の狙いは一体何なのでしょう……?」
「それは……まだ分からないですけど」
誠は言いかけ、どっかと腰を落ち着けた。それから一同を見渡して問う。
「延長線の思考じゃなくて、1回ゼロから考えてみよう。今一番大事な事は何だと思う?」
「せやから、ディアヌスの細胞やないん? うちには十分ヤバく思えるんやけど」
誠は一応その意見に頷く。
「確かに脅威だけど……いかにディアヌスと言えど、いきなりあの力を取り戻せるわけじゃないよな。前も生贄を使って、少しずつ回復してたし」
そこでカノンが誠を見つめる。
目が合うと、少しどぎまぎして顔を赤らめながら彼女は言った。
「じゃ、じゃあやっぱり不是達? 国家転覆を企むテロリストだし……当たり前過ぎるとは思うけど」
「確かに脅威だけど、何か違う気がするんだよな」
誠が答えるのと、鳳が短く叫ぶのとが同時だった。
「あっ……!!!」
一同は彼女を見るが、当の鳳は叫んだ事に今更気付き、震える手で自分の口を押さえている。
「なんや、なんか気になる事あるんか?」
「い、いえっ、それは……」
詰め寄る難波に、鳳は口を押さえたままプルプル首を振る。
明らかに何か隠している様子であり、難波は途端に調子に乗った。
「あかんな隠し事は。何なら体に聞いてもええんやで?」
「い、いけませんっ……これだけは、いくら皆さんでも……」
「ちょっとこのみ、やめなさいよ。きっと言えない事情があるのよ」
カノンの助け舟に、鳳は口を押さえたまま頭を下げる。
誠は鳳に尋ねてみる。
「鳳さん、それって全神連の機密ですか。だから言えないとか?」
「く、黒鷹様は一部知っておられます。ただ皆様には、その……」
鳳はそこで恐る恐る佐久夜姫を見る。
女神は優しく頷いた。
「いいわ、みんなに言ってあげて」
「あ、ありがとうございますっ……!」
鳳は安堵のため息をつき、それから一気に語り始めた。
「そ、それではここだけのお話ですが。今一番大事なのは封印の……柱の架け替えではないでしょうか。大地の封印が乱れれば、地の底に封じられた邪神軍団が、この世に這い出してしまいます」
「じゃ、邪神軍団? なんやそれ。あのディアヌスみたいな連中が、バカスカ出て来るいう事なん?」
引きつった顔で問う難波に、鳳は頷く。
「は、はい。ディアヌスは……八岐大蛇は万全であれば、邪神の中でも最強クラスの強さですが、同等の力を持つ敵は他にもおります。また大蛇ほどでなくても、下位の邪神が受肉しただけで十分過ぎる脅威ですし」
「受肉って……九州で、熊襲御前がやってたみたいな方法ですか」
誠の問いに、鳳は首を振った。
「あれは不完全な方法でした。子孫が信仰心を捧げ、魂の一部を現世で保っていただけ。その小さな魂を使い、阿蘇のエネルギーで作った巨体を動かそうとしたのです。ぶかぶかの体を動かすようなもので、力も十分発揮できないでしょう。でも本来の邪神は、そんなレベルではありません。地の底に封じられた魂の本体が……巨大な霊魂が開放され、それに見合った肉体を再構成すれば、人の力で抗するのは不可能でしょう」
「……こ、こりゃ一大事やな」
隊員達は青ざめている。
誠はそこで鳳ににじり寄った。
「鳳さん、封印の柱は、架け替えはどういう仕組みなんですか。守りはどうなってるんですか。そもそも柱はどこにあって、誰が管理してるんですか!?」
「そ、それはっ……そのっ……」
鳳は再び手で口を押さえながら、横目で佐久夜姫をうかがう。
「いいわ、全部許可します。全神連へ連れて行ってあげて」
「あっ、ありがとうございますっ……!」
頭を下げる鳳に微笑むと、佐久夜姫は誠にも言葉をかける。
「黒鷹くんも、後の事は心配しないで。1人で何もかも背負わなくていいし……そろそろ無理やりにでも、お姉ちゃんを連れてくるから」
女神はそう言ってウインクしてくれた。
「お願いしますっ……!」
誠は頭を下げると、鳳と車外へ駆け出したのだ。
驚く鳳に誠は頷く。
「はい。そもそもあの夜祖なら、不是みたく口の軽い奴にほんとの狙いを言うわけない。不是が知ってるなら、口を滑らす事も計算に入れてる。つまり情報操作なんだ。次々出す情報でこっちの思考を誘導して、真の狙いをくらませてるんじゃないでしょうか」
そこで鳳がおずおずと尋ねる。
「で、では黒鷹様。敵の狙いは一体何なのでしょう……?」
「それは……まだ分からないですけど」
誠は言いかけ、どっかと腰を落ち着けた。それから一同を見渡して問う。
「延長線の思考じゃなくて、1回ゼロから考えてみよう。今一番大事な事は何だと思う?」
「せやから、ディアヌスの細胞やないん? うちには十分ヤバく思えるんやけど」
誠は一応その意見に頷く。
「確かに脅威だけど……いかにディアヌスと言えど、いきなりあの力を取り戻せるわけじゃないよな。前も生贄を使って、少しずつ回復してたし」
そこでカノンが誠を見つめる。
目が合うと、少しどぎまぎして顔を赤らめながら彼女は言った。
「じゃ、じゃあやっぱり不是達? 国家転覆を企むテロリストだし……当たり前過ぎるとは思うけど」
「確かに脅威だけど、何か違う気がするんだよな」
誠が答えるのと、鳳が短く叫ぶのとが同時だった。
「あっ……!!!」
一同は彼女を見るが、当の鳳は叫んだ事に今更気付き、震える手で自分の口を押さえている。
「なんや、なんか気になる事あるんか?」
「い、いえっ、それは……」
詰め寄る難波に、鳳は口を押さえたままプルプル首を振る。
明らかに何か隠している様子であり、難波は途端に調子に乗った。
「あかんな隠し事は。何なら体に聞いてもええんやで?」
「い、いけませんっ……これだけは、いくら皆さんでも……」
「ちょっとこのみ、やめなさいよ。きっと言えない事情があるのよ」
カノンの助け舟に、鳳は口を押さえたまま頭を下げる。
誠は鳳に尋ねてみる。
「鳳さん、それって全神連の機密ですか。だから言えないとか?」
「く、黒鷹様は一部知っておられます。ただ皆様には、その……」
鳳はそこで恐る恐る佐久夜姫を見る。
女神は優しく頷いた。
「いいわ、みんなに言ってあげて」
「あ、ありがとうございますっ……!」
鳳は安堵のため息をつき、それから一気に語り始めた。
「そ、それではここだけのお話ですが。今一番大事なのは封印の……柱の架け替えではないでしょうか。大地の封印が乱れれば、地の底に封じられた邪神軍団が、この世に這い出してしまいます」
「じゃ、邪神軍団? なんやそれ。あのディアヌスみたいな連中が、バカスカ出て来るいう事なん?」
引きつった顔で問う難波に、鳳は頷く。
「は、はい。ディアヌスは……八岐大蛇は万全であれば、邪神の中でも最強クラスの強さですが、同等の力を持つ敵は他にもおります。また大蛇ほどでなくても、下位の邪神が受肉しただけで十分過ぎる脅威ですし」
「受肉って……九州で、熊襲御前がやってたみたいな方法ですか」
誠の問いに、鳳は首を振った。
「あれは不完全な方法でした。子孫が信仰心を捧げ、魂の一部を現世で保っていただけ。その小さな魂を使い、阿蘇のエネルギーで作った巨体を動かそうとしたのです。ぶかぶかの体を動かすようなもので、力も十分発揮できないでしょう。でも本来の邪神は、そんなレベルではありません。地の底に封じられた魂の本体が……巨大な霊魂が開放され、それに見合った肉体を再構成すれば、人の力で抗するのは不可能でしょう」
「……こ、こりゃ一大事やな」
隊員達は青ざめている。
誠はそこで鳳ににじり寄った。
「鳳さん、封印の柱は、架け替えはどういう仕組みなんですか。守りはどうなってるんですか。そもそも柱はどこにあって、誰が管理してるんですか!?」
「そ、それはっ……そのっ……」
鳳は再び手で口を押さえながら、横目で佐久夜姫をうかがう。
「いいわ、全部許可します。全神連へ連れて行ってあげて」
「あっ、ありがとうございますっ……!」
頭を下げる鳳に微笑むと、佐久夜姫は誠にも言葉をかける。
「黒鷹くんも、後の事は心配しないで。1人で何もかも背負わなくていいし……そろそろ無理やりにでも、お姉ちゃんを連れてくるから」
女神はそう言ってウインクしてくれた。
「お願いしますっ……!」
誠は頭を下げると、鳳と車外へ駆け出したのだ。
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