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第五章その7 ~その柱待った!~ 魔族のスパイ撃退編
その儀式、待った!
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儀式は滞りなく進んでいく。
『お二方』から賜った幣帛を収める奉幣の儀。
建築の神たる屋船豊受気姫命の加護を祈る立柱祭。
烏帽子を被った小工達が、木槌で柱を数度ずつ叩き清めると、柱はそれに応えるように、清い光を周囲に放った。
そして最終的には、国家の鎮守を願う厄除け祭事、国護御柱始式へと移るのだ。
これは作業に関わった全神連・御柱方全員で祝詞を奏上する儀式であり、『山に杭打つ』という意味合いから、大山咋神を始めとする日吉大社の祭神に……そして柱を立てる旧長野県の総鎮守・諏訪大社にも向けたものであった。
先頭に座す祭主・有待百代を眺め、台はふと考えた。
(有待……珍しく顔に出ているな……)
万感の思いを込めて柱を見上げる有待の心情は、台にも理解できた。
(当然でしょうね。この柱を作るため、全ての時を御柱殿で過ごしてきたのです。千年の長きに渡り、この国を守るためだけに生きた一族。私などはまだまだですね……)
この有待一族の晴れ舞台、本来であればもっと大勢が立ち会い、儀式にも参加する予定だった。
しかし今は未曾有の非常時。
10年に渡る災厄で全神連の人員も減り、さらには魔王の細胞の出現、テロ勢力の対応などで、殆どの者は走り回っているのだ。
よって柱の傍で儀式に参加するのは御柱方の面々だけ。法式殿から見守る一同も、通例よりずっと少ない数であった。
(本当に、未曾有の惨事でありました。この拙い身で、何とかお役目を果たせた事を、神々に感謝せねば……)
まだ気を緩めてはいけないものの、台は湧き出る安堵を抑え切れなかった。
数百年封じていた、女としての柔らかな感情がふつふつと溢れ、このまま倒れて眠ってしまいたいとすら思えた。
やがて永津彦様が、片手を前に掲げられた。手には青く輝く巨大な鍵が握られている。
次の瞬間、鍵が強く光を放つと、有待の頭上に転移していた。
鍵はゆっくりと降下し、有待は両手を伸ばしてうやうやしく受け止めた。
神による起動の許可……これをもって柱が動き始めるように作っているのだ。
(本当に長かった。犠牲になった配下の者達……そして外道に殺された無垢なる人々も……全ての者が報われる世になればいい)
だがそこで安堵の時は終わりを迎える。
その場に踏み込んだ不躾な輩、つまりあの黒鷹と呼ばれる少年によってだ。
転移のための魔法陣が輝き、着地と同時に少年は叫んだ。
「待った! その柱、動かすのはお待ちいただきたい!」
『お二方』から賜った幣帛を収める奉幣の儀。
建築の神たる屋船豊受気姫命の加護を祈る立柱祭。
烏帽子を被った小工達が、木槌で柱を数度ずつ叩き清めると、柱はそれに応えるように、清い光を周囲に放った。
そして最終的には、国家の鎮守を願う厄除け祭事、国護御柱始式へと移るのだ。
これは作業に関わった全神連・御柱方全員で祝詞を奏上する儀式であり、『山に杭打つ』という意味合いから、大山咋神を始めとする日吉大社の祭神に……そして柱を立てる旧長野県の総鎮守・諏訪大社にも向けたものであった。
先頭に座す祭主・有待百代を眺め、台はふと考えた。
(有待……珍しく顔に出ているな……)
万感の思いを込めて柱を見上げる有待の心情は、台にも理解できた。
(当然でしょうね。この柱を作るため、全ての時を御柱殿で過ごしてきたのです。千年の長きに渡り、この国を守るためだけに生きた一族。私などはまだまだですね……)
この有待一族の晴れ舞台、本来であればもっと大勢が立ち会い、儀式にも参加する予定だった。
しかし今は未曾有の非常時。
10年に渡る災厄で全神連の人員も減り、さらには魔王の細胞の出現、テロ勢力の対応などで、殆どの者は走り回っているのだ。
よって柱の傍で儀式に参加するのは御柱方の面々だけ。法式殿から見守る一同も、通例よりずっと少ない数であった。
(本当に、未曾有の惨事でありました。この拙い身で、何とかお役目を果たせた事を、神々に感謝せねば……)
まだ気を緩めてはいけないものの、台は湧き出る安堵を抑え切れなかった。
数百年封じていた、女としての柔らかな感情がふつふつと溢れ、このまま倒れて眠ってしまいたいとすら思えた。
やがて永津彦様が、片手を前に掲げられた。手には青く輝く巨大な鍵が握られている。
次の瞬間、鍵が強く光を放つと、有待の頭上に転移していた。
鍵はゆっくりと降下し、有待は両手を伸ばしてうやうやしく受け止めた。
神による起動の許可……これをもって柱が動き始めるように作っているのだ。
(本当に長かった。犠牲になった配下の者達……そして外道に殺された無垢なる人々も……全ての者が報われる世になればいい)
だがそこで安堵の時は終わりを迎える。
その場に踏み込んだ不躾な輩、つまりあの黒鷹と呼ばれる少年によってだ。
転移のための魔法陣が輝き、着地と同時に少年は叫んだ。
「待った! その柱、動かすのはお待ちいただきたい!」
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