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第五章その7 ~その柱待った!~ 魔族のスパイ撃退編
もう遅いのだ…!
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「………………………………………………」
有待と名乗った男は、静かに誠を見据えている。
一見穏やかに見える表情、しかし目の奥には動揺があった。
小刻みに揺れる眼球と、次第に湿り気を帯びてきた肌。
汗が光り、乾いた口を潤すためか、喉が何度も動いている。
「さあ、時間がもったいないでやんすよ」
そこで猿がずいと進み出る。
「神に向かいて恥じザルは、人の心のまことなりけり。嘘偽りがないのなら、行けるはずでござんすから」
やがて有待は口を開いた。
「…………仕方が……ありませんな」
そのままゆっくりと立ち上がる。
「下層まで……………………ご一緒いたしましょう」
彼の言葉と共に、背後の御柱方も立ち上がる。やけにゆったりした、ぬらりとした動きである。
そこで有待が咆えた。今までの穏やかな顔ではなく、獣のような形相でだ。
「おのれ小僧がっ、余計な真似をっ!!!」
有待は柱に向けて駆け出そうとするが、次の瞬間、彼の眼前で光が閃く。
転移の魔法陣が輝いたのであり、黒衣の女性が現れた。彼女はそのまま太刀をふるい、有待を牽制する。
「何とか間に合いましたね……!」
油断なく太刀を構えたまま、鳳は微笑んだ。
彼女は画面上で誠に目をやり、赤くなって顔を伏せる。
「あっ、くっ黒鷹様っ……お役に立てましたでしょうか……?」
「もちろんです! さすが鳳さんっ!」
親指を立てて叫ぶ誠だったが、そこで別の魔法陣が輝いた。
「おおっと、我輩達も忘れちゃいけやせんぜ?」
「そうそう、あたしらも頑張ってるんだから」
「仲間外れはナシにして欲しいわねえ」
高山、勝子、そして因幡。全神連・西国本部の三筆頭がそろい踏みである。
「ぐっ……忌々しい……!」
三筆頭と鳳に阻まれ、御柱方の有待は、悔しげな顔で呟いた。
高山はそんな彼に言葉をかける。
「残念だったな有待、お前らの負けだ」
「ぎいいいっ!!!」
有待は短く叫んだ。
彼だけでなく、御柱方の全員が身を震わせると、背から黒く長い蜘蛛足が飛び出る。
だが次の瞬間、複数の白鮫の式神が、横手から有待達に襲いかかった。
鮫は有待達をくわえ、そのまま彼方の壁に叩きつける。
「ぐっ……おっ……!」
有待は狂気の表情でもがくが、高山が軽く手を振ると、壁から白い土のようなものが湧き出て、彼等をがんじがらめに縛り付けた。
柱からも遠く、完全に捕縛された状態だった。
…………だがしかし。
「……くく……ふはははははっ……!」
有待は……先程まで有待と呼ばれていた男は、次第に狂気の表情へと変わった。
男は繰り返し笑い、それから映像の中で誠を睨んだ。
「大したものだ小僧、そして神の飼い犬どもよ……! しかしもう遅い。柱が完成した時点で遅かったのだよ……!」
その言葉とほぼ同時に、彼等の体は溶け始めていく。
何かの術を使ったのかも知れないし、そもそも役目が終われば消える命だったのかも知れない。
「待て有待! 遅いとはどういう事だ!」
高山が問うと、彼は最後に不気味に笑った。
「遅いから遅いのだ。正規の起動より時はかかるが、もう止められまい……!」
そして何かの音が辺りに響いた。
複数の……およそ数として認識出来ないほど膨大な何かが蠢いているのだ。
一同はそこで気付いた。
柱だ。
封印をつかさどる巨大な柱が、今目覚めようとしているのだ。
有待と名乗った男は、静かに誠を見据えている。
一見穏やかに見える表情、しかし目の奥には動揺があった。
小刻みに揺れる眼球と、次第に湿り気を帯びてきた肌。
汗が光り、乾いた口を潤すためか、喉が何度も動いている。
「さあ、時間がもったいないでやんすよ」
そこで猿がずいと進み出る。
「神に向かいて恥じザルは、人の心のまことなりけり。嘘偽りがないのなら、行けるはずでござんすから」
やがて有待は口を開いた。
「…………仕方が……ありませんな」
そのままゆっくりと立ち上がる。
「下層まで……………………ご一緒いたしましょう」
彼の言葉と共に、背後の御柱方も立ち上がる。やけにゆったりした、ぬらりとした動きである。
そこで有待が咆えた。今までの穏やかな顔ではなく、獣のような形相でだ。
「おのれ小僧がっ、余計な真似をっ!!!」
有待は柱に向けて駆け出そうとするが、次の瞬間、彼の眼前で光が閃く。
転移の魔法陣が輝いたのであり、黒衣の女性が現れた。彼女はそのまま太刀をふるい、有待を牽制する。
「何とか間に合いましたね……!」
油断なく太刀を構えたまま、鳳は微笑んだ。
彼女は画面上で誠に目をやり、赤くなって顔を伏せる。
「あっ、くっ黒鷹様っ……お役に立てましたでしょうか……?」
「もちろんです! さすが鳳さんっ!」
親指を立てて叫ぶ誠だったが、そこで別の魔法陣が輝いた。
「おおっと、我輩達も忘れちゃいけやせんぜ?」
「そうそう、あたしらも頑張ってるんだから」
「仲間外れはナシにして欲しいわねえ」
高山、勝子、そして因幡。全神連・西国本部の三筆頭がそろい踏みである。
「ぐっ……忌々しい……!」
三筆頭と鳳に阻まれ、御柱方の有待は、悔しげな顔で呟いた。
高山はそんな彼に言葉をかける。
「残念だったな有待、お前らの負けだ」
「ぎいいいっ!!!」
有待は短く叫んだ。
彼だけでなく、御柱方の全員が身を震わせると、背から黒く長い蜘蛛足が飛び出る。
だが次の瞬間、複数の白鮫の式神が、横手から有待達に襲いかかった。
鮫は有待達をくわえ、そのまま彼方の壁に叩きつける。
「ぐっ……おっ……!」
有待は狂気の表情でもがくが、高山が軽く手を振ると、壁から白い土のようなものが湧き出て、彼等をがんじがらめに縛り付けた。
柱からも遠く、完全に捕縛された状態だった。
…………だがしかし。
「……くく……ふはははははっ……!」
有待は……先程まで有待と呼ばれていた男は、次第に狂気の表情へと変わった。
男は繰り返し笑い、それから映像の中で誠を睨んだ。
「大したものだ小僧、そして神の飼い犬どもよ……! しかしもう遅い。柱が完成した時点で遅かったのだよ……!」
その言葉とほぼ同時に、彼等の体は溶け始めていく。
何かの術を使ったのかも知れないし、そもそも役目が終われば消える命だったのかも知れない。
「待て有待! 遅いとはどういう事だ!」
高山が問うと、彼は最後に不気味に笑った。
「遅いから遅いのだ。正規の起動より時はかかるが、もう止められまい……!」
そして何かの音が辺りに響いた。
複数の……およそ数として認識出来ないほど膨大な何かが蠢いているのだ。
一同はそこで気付いた。
柱だ。
封印をつかさどる巨大な柱が、今目覚めようとしているのだ。
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