7 / 110
第四章その1 ~大ピンチ!?~ 無敵の魔王と堕ちた聖者編
化けの皮をはがしてやろう
しおりを挟む
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
激しい炎が、そして衝撃が、機体と荷台を揺らしていく。
車両はコントロールを失い、大きく蛇行しながら横転した。
大地は大きくめくれ上がり、辺りの木々は黒焦げになって、炎を上げてくすぶっている。
あちこちに人型重機の装甲が散らばり、辛うじて原型を留めた搭乗用区画が、岩にたたき付けられる形で転がっていた。中の様子はうかがい知れないが、恐らく2人の少年はもう…………
「………………っ」
カノンは呆然としていたが、そこで画面上に難波が映った。
「カノっち、しっかりしいや! あいつら助けて、はよ逃げるで!」
鬼気迫る声に我に返り、カノンは機体を動かした。
横転した車両を起こし、荷台に固定されていた白い人型重機の損傷を確認する。
無理やり通信回路を繋ぐと、操縦席で気絶した少年は、特に酷い外傷は無いようだった。
「…………」
少年の無事による安堵、そして安否も知れぬ宮島、香川への思い。この状況への責任感。
色んなものがごちゃまぜになるカノンだったが、そこで再び頭上から声がかけられた。
「…………昼間に花火とは、ほんに悪趣味だこと」
「~~~~~っっっ!!!!????」
カノンも難波も、弾けるように機体を振り返らせた。
そこにあの女は浮かんでいた。
両少年の決死の自己犠牲にも関わらず、何一つ負傷していない闇の神人が、こちらを見下ろしていたのである。
全身を包む邪気は、前より強く、前より激しく渦巻いている。
呆然とするカノンをよそに、難波が素早く機体を動かす。だが女の太刀が閃くと、難波の人型重機は胴を両断されていた。
そのままゆっくりと倒れ込む難波の機体だったが、続いて女から発せられた不可視の波動に吹き飛ばされ、硬い岩に叩き付けられた。
「あ…………」
カノンは呆然と相手を見つめた。
強い、強すぎる。何もかも、力のケタが根本的に違う。
これが闇の神人……鶴に対抗するため、魔界が選んだ切り札なのか。
「……さあ、その女神の直弟子を渡せ。永遠の呪いに苦しむ様を、あの神に見せ付けてやる……!」
女は宙に浮かんだまま、ゆっくりとこちらに迫る。
カノンは2歩、3歩と機体を下がらせたが、後ろにはもう誠の機体があるのだ。
「くっ……!」
カノンは覚悟を決め、機体の銃を掲げるが、女は瞬時に間を詰めていた。
こちらの銃に手を置くと、銃はマグマに触れたかのように、蒸気を上げて溶け崩れた。
必死に振り払おうと操作レバーを動かすも、機体は巨人に鷲掴みされたかのように微動だにしない。
女は片手を前に突き出し、そこに黒い光を宿す。
あれが放たれればもう終わりだ。人型重機の装甲も、操縦席のカノンをも跡形も無く溶かすだろう。
だがカノンが身を硬くしたその時。闇の神人は、ふと怪訝そうに言葉を発した。
「……お前……何だその体は……?」
はっとして前を見ると、女は訝しげにこちらを見下ろしている。
次の瞬間、モニターにノイズが走ったかと思うと、重機の装甲が音を立てて剥がされていた。
あらわになり、冷たい外気に晒される操縦席。
女はカノンに近づくと、興味深げに顔を寄せる。
「っ……!!!」
カノンは必死に身をよじるが、まるで磔にあったように動けない。
女は手を伸ばし、白い指でカノンの頬に触れる。
それからゆっくりと手を下ろし、パイロットスーツの胸元に当てた。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
瞬間、どくん、と心臓が脈打った。恐怖で縮こまっていた全身の血管が無理やり開かれ、体が熱くなっていく。
視界が揺れる……! 呼吸が乱れる……!
体は火がついたように熱を帯び、薄皮の下で獣が暴れているかのようだ。
苦悶するカノンを嗜虐の笑みで見据え、女は言った。
「……あの女神の術か。面白い、その化けの皮をはがしてやろう……!」
やがて女の手に赤い光が宿った。
同時にカノンの指先から足のつま先……いや、髪の毛の1本1本にまで、激しい電気が走ったように感じた。
体の中に、強い何かが駆け巡っている。それは長い間封じ込めてきた、自分本来のエネルギーだ。
思考すらままならぬ中、カノンは必死で祈っていた。
いやだ、やめて! まだこの姿をやめたくない!
まだあの人の力になりたいから……!
激しい炎が、そして衝撃が、機体と荷台を揺らしていく。
車両はコントロールを失い、大きく蛇行しながら横転した。
大地は大きくめくれ上がり、辺りの木々は黒焦げになって、炎を上げてくすぶっている。
あちこちに人型重機の装甲が散らばり、辛うじて原型を留めた搭乗用区画が、岩にたたき付けられる形で転がっていた。中の様子はうかがい知れないが、恐らく2人の少年はもう…………
「………………っ」
カノンは呆然としていたが、そこで画面上に難波が映った。
「カノっち、しっかりしいや! あいつら助けて、はよ逃げるで!」
鬼気迫る声に我に返り、カノンは機体を動かした。
横転した車両を起こし、荷台に固定されていた白い人型重機の損傷を確認する。
無理やり通信回路を繋ぐと、操縦席で気絶した少年は、特に酷い外傷は無いようだった。
「…………」
少年の無事による安堵、そして安否も知れぬ宮島、香川への思い。この状況への責任感。
色んなものがごちゃまぜになるカノンだったが、そこで再び頭上から声がかけられた。
「…………昼間に花火とは、ほんに悪趣味だこと」
「~~~~~っっっ!!!!????」
カノンも難波も、弾けるように機体を振り返らせた。
そこにあの女は浮かんでいた。
両少年の決死の自己犠牲にも関わらず、何一つ負傷していない闇の神人が、こちらを見下ろしていたのである。
全身を包む邪気は、前より強く、前より激しく渦巻いている。
呆然とするカノンをよそに、難波が素早く機体を動かす。だが女の太刀が閃くと、難波の人型重機は胴を両断されていた。
そのままゆっくりと倒れ込む難波の機体だったが、続いて女から発せられた不可視の波動に吹き飛ばされ、硬い岩に叩き付けられた。
「あ…………」
カノンは呆然と相手を見つめた。
強い、強すぎる。何もかも、力のケタが根本的に違う。
これが闇の神人……鶴に対抗するため、魔界が選んだ切り札なのか。
「……さあ、その女神の直弟子を渡せ。永遠の呪いに苦しむ様を、あの神に見せ付けてやる……!」
女は宙に浮かんだまま、ゆっくりとこちらに迫る。
カノンは2歩、3歩と機体を下がらせたが、後ろにはもう誠の機体があるのだ。
「くっ……!」
カノンは覚悟を決め、機体の銃を掲げるが、女は瞬時に間を詰めていた。
こちらの銃に手を置くと、銃はマグマに触れたかのように、蒸気を上げて溶け崩れた。
必死に振り払おうと操作レバーを動かすも、機体は巨人に鷲掴みされたかのように微動だにしない。
女は片手を前に突き出し、そこに黒い光を宿す。
あれが放たれればもう終わりだ。人型重機の装甲も、操縦席のカノンをも跡形も無く溶かすだろう。
だがカノンが身を硬くしたその時。闇の神人は、ふと怪訝そうに言葉を発した。
「……お前……何だその体は……?」
はっとして前を見ると、女は訝しげにこちらを見下ろしている。
次の瞬間、モニターにノイズが走ったかと思うと、重機の装甲が音を立てて剥がされていた。
あらわになり、冷たい外気に晒される操縦席。
女はカノンに近づくと、興味深げに顔を寄せる。
「っ……!!!」
カノンは必死に身をよじるが、まるで磔にあったように動けない。
女は手を伸ばし、白い指でカノンの頬に触れる。
それからゆっくりと手を下ろし、パイロットスーツの胸元に当てた。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
瞬間、どくん、と心臓が脈打った。恐怖で縮こまっていた全身の血管が無理やり開かれ、体が熱くなっていく。
視界が揺れる……! 呼吸が乱れる……!
体は火がついたように熱を帯び、薄皮の下で獣が暴れているかのようだ。
苦悶するカノンを嗜虐の笑みで見据え、女は言った。
「……あの女神の術か。面白い、その化けの皮をはがしてやろう……!」
やがて女の手に赤い光が宿った。
同時にカノンの指先から足のつま先……いや、髪の毛の1本1本にまで、激しい電気が走ったように感じた。
体の中に、強い何かが駆け巡っている。それは長い間封じ込めてきた、自分本来のエネルギーだ。
思考すらままならぬ中、カノンは必死で祈っていた。
いやだ、やめて! まだこの姿をやめたくない!
まだあの人の力になりたいから……!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる