新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART4 ~双角のシンデレラ~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

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第四章その1 ~大ピンチ!?~ 無敵の魔王と堕ちた聖者編

化けの皮をはがしてやろう

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 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 激しい炎が、そして衝撃が、機体と荷台を揺らしていく。

 車両はコントロールを失い、大きく蛇行しながら横転した。

 大地は大きくめくれ上がり、辺りの木々は黒焦げになって、炎を上げてくすぶっている。

 あちこちに人型重機の装甲が散らばり、辛うじて原型を留めた搭乗用区画コクピットブースが、岩にたたき付けられる形で転がっていた。中の様子はうかがい知れないが、恐らく2人の少年はもう…………

「………………っ」

 カノンは呆然としていたが、そこで画面上に難波が映った。

「カノっち、しっかりしいや! あいつら助けて、はよ逃げるで!」

 鬼気迫る声に我に返り、カノンは機体を動かした。

 横転した車両を起こし、荷台に固定されていた白い人型重機の損傷を確認する。

 無理やり通信回路を繋ぐと、操縦席で気絶した少年は、特に酷い外傷は無いようだった。

「…………」

 少年の無事による安堵、そして安否も知れぬ宮島、香川への思い。この状況への責任感。

 色んなものがごちゃまぜになるカノンだったが、そこで再び頭上から声がかけられた。

「…………昼間に花火とは、ほんに悪趣味だこと」

「~~~~~っっっ!!!!????」

 カノンも難波も、弾けるように機体を振り返らせた。

 そこにあの女は浮かんでいた。

 両少年の決死の自己犠牲にも関わらず、何一つ負傷していない闇の神人が、こちらを見下ろしていたのである。

 全身を包む邪気は、前より強く、前より激しく渦巻いている。

 呆然とするカノンをよそに、難波が素早く機体を動かす。だが女の太刀が閃くと、難波の人型重機は胴を両断されていた。

 そのままゆっくりと倒れ込む難波の機体だったが、続いて女から発せられた不可視の波動に吹き飛ばされ、硬い岩に叩き付けられた。

「あ…………」

 カノンは呆然と相手を見つめた。

 強い、強すぎる。何もかも、力のケタが根本的に違う。

 これが闇の神人しんじん……鶴に対抗するため、魔界が選んだ切り札なのか。

「……さあ、その女神の直弟子を渡せ。永遠の呪いに苦しむ様を、あの神に見せ付けてやる……!」

 女は宙に浮かんだまま、ゆっくりとこちらに迫る。

 カノンは2歩、3歩と機体を下がらせたが、後ろにはもう誠の機体があるのだ。

「くっ……!」

 カノンは覚悟を決め、機体の銃を掲げるが、女は瞬時に間を詰めていた。

 こちらの銃に手を置くと、銃はマグマに触れたかのように、蒸気を上げて溶け崩れた。

 必死に振り払おうと操作レバーを動かすも、機体は巨人に鷲掴わしづかみされたかのように微動だにしない。

 女は片手を前に突き出し、そこに黒い光を宿す。

 あれが放たれればもう終わりだ。人型重機の装甲も、操縦席コクピットのカノンをも跡形も無く溶かすだろう。

 だがカノンが身を硬くしたその時。闇の神人は、ふと怪訝けげんそうに言葉を発した。

「……お前……何だその体は……?」

 はっとして前を見ると、女はいぶかしげにこちらを見下ろしている。

 次の瞬間、モニターにノイズが走ったかと思うと、重機の装甲が音を立てて剥がされていた。

 あらわになり、冷たい外気に晒される操縦席。

 女はカノンに近づくと、興味深げに顔を寄せる。

「っ……!!!」

 カノンは必死に身をよじるが、まるではりつけにあったように動けない。

 女は手を伸ばし、白い指でカノンの頬に触れる。

 それからゆっくりと手を下ろし、パイロットスーツの胸元に当てた。

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 瞬間、どくん、と心臓が脈打った。恐怖で縮こまっていた全身の血管が無理やり開かれ、体が熱くなっていく。

 視界が揺れる……! 呼吸が乱れる……!

 体は火がついたように熱を帯び、薄皮の下で獣が暴れているかのようだ。

 苦悶するカノンを嗜虐しぎゃくの笑みで見据え、女は言った。

「……あの女神の術か。面白い、その化けの皮をはがしてやろう……!」

 やがて女の手に赤い光が宿った。

 同時にカノンの指先から足のつま先……いや、髪の毛の1本1本にまで、激しい電気が走ったように感じた。

 体の中に、強い何かが駆け巡っている。それは長い間封じ込めてきた、自分本来のエネルギーだ。

 思考すらままならぬ中、カノンは必死で祈っていた。

 いやだ、やめて! まだこの姿をやめたくない!

 まだあの人の力になりたいから……!
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