新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART4 ~双角のシンデレラ~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

文字の大きさ
28 / 110
第四章その3 ~ようこそ関東へ!~ くせ者だらけの最強船団編

ちょい悪オヤジな船団長

しおりを挟む
 難波は頭の後ろで手を組みつつ、楽しそうに感想を述べる。

「なんや、よお分からんけどオモロいおっさんやなあ」

「面白いじゃ済まないのよっ!」

 海老名が、そして他のパイロットも、恐ろしい顔で難波を取り囲んだ。

「冗談半分でとんでもない武装を追加して、毎回こっちは実験台なの! 何度死ぬような目に遭ったことか……!」

「せやけど関西やとクラスの半分はこんなもんやで」

「ここは関東っ! 何よその魔境まきょうは!」

「そうだ、大阪じゃ私がスタンダードだ」

 筑波氏は極めて適当な理解で頷くと、海老名の頭に手を置いた。

「まあ冗談はこのぐらいにして、新しい装備はどうだ龍恋君」

「そ、それは……」

 遠慮なく頭をわしわしする筑波に戸惑いながら、海老名は答える。

「納豆のCMはやめていただくとして、性能は……いつも通り申し分ないです。ただちょっと、ゴテゴテして恥ずかしいんですが……」

「なーにを言うか、こういうのは見た目が大事なんだ。仮にも日本を背負う第3船団のエース達が、そんな引っ込み思案でどうする! 若者はもっとド派手に! 少しは伊能いのうを見習ったらどうだ?」

 筑波は上機嫌で海老名の頭をポムポム叩くが、難波は不思議そうに首をかしげた。

「てか、伊能って誰や?」

 難波は順番にその場の皆を見渡していく。

 学ラン姿の翔馬、愛想のいいひかる、赤い顔で頭を叩かれている海老名。無意味に上機嫌な筑波を経て、最後に弥太郎に目を留めた。

「分かったで、あんたが伊能や」

「いや、弥太郎だっ! 春日部弥太郎かすかべやたろうっ! そんなキャラ薄いかなあ!?」

 必死にツッコミを入れる弥太郎に満足し、難波は筑波に向き直った。

「で、筑波のおっちゃん、誰が伊能なん?」

「ちょっとこのみ、地元の親戚じゃないんだから……」

 たしなめるカノンだったが、そこで再びスポットライトが灯った。ライトはやはりカノン達が乗ってきた航空輸送機を照らしている。

 やがて輸送機の屋根が開き、中から何かが競り上がってきた。

「うわっ、いつの間にあんな機能つけてんだよ」

 翔馬がドン引きで呟くが、そこで競りあがった物が静止した。どうやら立て看板のようだが、そこにはこう記されていた。

『しばらく旅に出るぜ! BY伊能』

「あーすまんすまん、そうだったな」

 筑波は何でもない事のように笑うが、そこで海老名が血相を変えた。

「いや、船団長でしょ伊能さんはっ! 何適当に納得してるんですか! ディアヌスが来るんですよ!? 留守してどうすんの!」

 白衣の胸倉を掴み、ぐわんぐわん揺さぶる海老名だったが、そこで筑波がベルトのスイッチを押した。

「そうじゃない、あれは出張用のやつだ。すまんってのはボタンを間違えたって意味だ」

「間違えたあ!? 間違えたってどういう事よ!」

 最早ヤンキーのような剣幕の海老名だが、そこで航空機の天井が開き、1人の人物が競りあがってくる。

「な、なんであんなとこに人が収納されてんだよ……」

 翔馬が頭を抱えている。

 現れたのはスーツにトレンチコートを羽織り、ボルサリーノ帽を被った中年男性だった。

 顔にはやたら渋みがあり、黙っていれば映画俳優のようにも見えるのだったが、彼は気さくに手を上げた。

「よっ、しばらく!」

『せっ、せせせ、船団長っ!!!???』

 パイロット連中、いや格納庫にいた全員が絶叫した。

「なななっ、何でそんなとこにいるんですかっ! 天井でしょ、さっき戦闘してたんですよ!?」

 海老名が叫ぶと、船団長の伊能はゆっくりと輸送機の上を歩いてくる。

 天井は次々開き、噴水や電飾のライトが飛び出してきた。

 なぜか太鼓や笛を持った人、演歌歌手?まで現れ、鳩が飛ぶわ桜が舞うわの混沌カオスになった。

「ぬわーっはっは、うまくいった! さすがは私、天才の中の天才だな!」

 仕掛けを作った張本人の筑波は胸を張っていたが、海老名が足を掴んで引き倒し、ジャイアントスイングで振り回し始めた。

「もう許さないわ、こんのマッドサイエンティストっ! あれだけ余計な改造しないでって言ってるでしょうがっ!」

「海老名っち、もうキャラ壊れとるやん……」

「最初の上品さが見る影もないわね……」

 難波とカノンがドン引きしていると、翔馬・ひかる・弥太郎の3人がプラカードを掲げた。

『海老名じゃ』

『なくても』

『つっこまざるをえないナマズ』

という事らしい。

「でもええわあ、こういうコテコテ。実家に帰ったような気がするわ」

 難波は楽しそうだったが、そこで船団長の伊能は、ひらりと輸送機から飛び降りた。

 続いて飛び降りる演歌歌手や鳩をよそに、伊能氏は皆に声をかけた。

「いや、若ぇ衆は元気そうだな。海老名の娘も、段々親に似てきたぜ。あいつら2人とも、湘南でブイブイ言わせてたもんだ」

「そ、それは生前お世話になりましたけど……じゃなくて船団長っ、勝手に天井に潜まないで下さい。あれで敵地に降りたんですよ!」

「いやそれは戻ってから隠れたんだって。こっちもそんなに暇じゃないぜ?」

 どう考えても暇やん、とツッコミを入れる難波をよそに、伊能氏はボルサリーノ帽の角度を手で直した。

「日本全国津々浦々つつうらうら、足で回って交渉しまくり。おかげで希望の光も見えてきたぜぇ?」

『希望の光?』

 不思議そうに尋ねる一同に、伊能は両手を広げて言った。

「そうだ、希望だ。ちょっと見てみな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南
ファンタジー
十二才の少年コウヤは、前世では病弱な少年だった。 それは、その更に前の生で邪神として倒されたからだ。 今世、その世界に再転生した彼は、元家族である神々に可愛がられ高い能力を持って人として生活している。 コウヤの現職は冒険者ギルドの職員。 日々仕事を押し付けられ、それらをこなしていくが……? ◆◆◆ 「だって武器がペーパーナイフってなに!? あれは普通切れないよ!? 何切るものかわかってるよね!?」 「紙でしょ? ペーパーって言うし」 「そうだね。正解!」 ◆◆◆ 神としての力は健在。 ちょっと天然でお人好し。 自重知らずの少年が今日も元気にお仕事中! ◆気まぐれ投稿になります。 お暇潰しにどうぞ♪

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

処理中です...