新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART4 ~双角のシンデレラ~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

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第四章その5 ~さあ反撃だ!~ やる気満々、決戦準備編

対魔王作戦会議2

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「確かに現時点で攻略のエネルギーは足りません。でもですね」

 誠が画面を切り替えると、そこには青い鎧のような巨体が……つまり、誠達が所属する第5船団の祭神ガレオンが映った。

 祭神とは、元々ディアヌスの体の一部、つまり分身のようなものである。

 それぞれ別の自我を獲得し、ディアヌスに逆らった7体の祭神だったが、戦いによって負傷し、今は各船団の旗艦にかくまわれている。

 ただそのうちの1体、テンペストと呼ばれる存在だけは、人に保護される前にディアヌスに倒されたため、現在残る祭神は6体である。

「実は以前、祭神ガレオンのエネルギーを使って射撃した事があるんです。伝導ケーブルを銃身に接続したんですが」

「なるほど、それか! 考えた事も無かったな!」

 筑波は途端にテンションを上げ、ガタンと椅子から立ち上がった。

 隣の海老名がびくっとなって彼を見ているが、筑波は構わず言葉を続けた。

「つまりあれだ、京の調律機能だけを使って、各祭神の力をまとめあげる! エネルギーは祭神から、それを射撃用の電磁式に編み上げるのが京だと!」

「そ、そうです」

「しかも6体の祭神分だ、エネルギーはケタ違いだぞ! これならあのバケモノのバリアだって消し飛ばせる、ふはは!」

 筑波は異様にテンションが上がっているが、難題が解けた研究者は少なからずこうなる。脳内で快楽物質ドーパミンがドバドバ出ており、多少なりとも変人になるのだ。

「いやあ、さすが『諏訪野みことせんぱい』の息子だっ。面白い、やっぱこうでなくちゃな!」

 浮かれる筑波をよそに、船団長の伊能が手を上げる。

「いいねえ鳴瀬のあんちゃん。それで射程はどんぐらいだい?」

「以前の経験データから、直線で3、40キロは威力を維持出来ると思います。チャージ量や条件によっては、もっといけるかもしれませんが」

「なるほど、艦砲射撃と同程度だな。後はどこでぶちかますかだが……」

 伊能は今度は筑波の方を見た。

「筑波、ディアヌスの進路はどう予想する?」

「おっと俺か? いや、進路って言ってもな。さすがに情報が少なすぎる。止まる直前の状況から、大まかにこっちに来るとしか……」

 筑波は困ったが、そこで鳳が口を挟んだ。

「それについては私から。黒鷹様、地図をお願いできますか?」

 誠が画面に地図を映し出すと、鳳は関が原から東に向かって順番に触れていき、触ったところは赤い光点となった。

「この一番西、関が原の光点が、ディアヌスが大地に剣を付き立てた所。地下のエネルギーが活性化し、付近の活断層が刺激されています。同様に東に向かって、同じようなエネルギーのポイントがあり、魔王は順繰りにそこを攻撃していくでしょう。日本アルプスの南端を通過しながらほぼ直線で東進し、最終的には霊峰富士のたもと……旧富士市に至ります」

「なるほどな。で、最後の富士市まで突っつかれたらどうなる?」

 伊能の問いに、鳳は静かに答えた。

「言いにくいですが……日の本は細切こまぎれになります。大地は砕け、多くの人が犠牲になるでしょう。情報の出所は言えませんが、これは正確な内容です」

「オーケーだ。それが本当だとしたら……いや、姉ちゃんの目からして、本当なんだろうな。だとするなら……」

 伊能は再び地図に視線を戻す。

「……条件からして、攻撃の最適点は富士市だ。そこにディアヌスが来た時にぶちかます。そうだろあんちゃん?」

「ご明察めいさつ通りです。さすが船団長」

 誠は素直に頷いた。

「海からケーブルを引くので、あまり内陸だと現実的じゃありませんし、チャンスは1回きり。さすれば起伏が激しく、魔王が上下する山岳部では射撃しにくいですから」

 誠はそこで画面に触り、地図をぐぐっと拡大させた。

「よってディアヌスが旧富士市付近に辿り着いた時、東にある愛鷹山あしたかやまから狙撃するのが一番かと思われます……!」

 誠が指でなぞると、旧富士市の東に位置する愛鷹山あしたかやまから赤い直線が延びる。これが実際の攻撃と同じラインになるわけだ。

「……な、なんやすごい事になってきたわ。怪獣映画みたいやな……!」

 難波が興奮して感想を述べるが、そこで筑波が手を上げた。

「ちょい待った。いい考えだが、ストレートに駿河湾するがわんに祭神達の船を浮かべると、相手から丸見えになるだろ。魔王に気づかれないように、船は相模湾さがみわんの方がよくないか」

 筑波の発言にあわせて、誠は地図を少し東にずらした。伊豆半島をはさんで西が駿河湾、東が相模湾という位置関係だ。

「愛鷹山から、距離は平面で3~40キロぐらいか? 海や起伏も考えればもちっとかかるが、ケーブルかき集めれば足りるだろう。折角の切り札だ、魔王に気付かれるよりは、最善を尽くした方がいい」

 筑波の提案に、今まで大人しくしていた学ラン姿のパイロット・翔馬が呟いた。

「……す、すげえな。スケールのでかい天城越あまぎごえだぜ……」

 緊張がほぐれたのか、ひかるも話に乗ってくる。

「でも天城越えっていうより、ケーブル通すのはもっと北、熱海の辺りっしょ? 金色夜叉こんじきやしゃの方がいくない? 貫一かんいち・おみや作戦とか……」

「それだとドロドロするだろうがよっ」

 だがそこで、もめる翔馬とひかるの頭に手を置き、満面の笑みで筑波が言った。

「それじゃあいだをとって、ネバーギブアップ作戦ってのはどうだ?」

「す、すぐ納豆に結び付けないでくださいっ! ていうか、どこが間なんですっ」

 さっきまで筑波が真面目だったため、ツッコミ出来ないでいた海老名は生き生きしている。

 そこで船団長の伊能がまとめた。

「そんじゃまあ、全員の意見をちょっとずつ取って、『ネバーギブアップ・スケールのでかい金色こんじきの熱海越え大作戦!』って事でいこうか」

 ええっ……という空気が流れたが、第3船団の面々が遠慮してつっこめないので、誠が代わりに問いかけた。

「い、いいんですかそれで。すごい豪華キャストの年末バラエティ映画みたいですけど……」

「別に違わねぇだろ? こういう時は洒落も大事だぜ、あんちゃん」

 伊能は片手で帽子の位置を直しながらウインクした。

「神話の魔王と人間達が、科学のすいを尽くして戦うんだ。このぐらい脱力する名前じゃないと、肩に力が入ってしゃーねえ」

「そ、そうですかね……」

 誠も最早ツッコミを諦めたが、伊能は更に後を続けた。

「そんでもしディアヌスが砲撃後に生き残ってたら、こっちの全軍をもってディアヌスを攻撃、これを撃破する。これで勝利だ……!」
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