新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART4 ~双角のシンデレラ~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

文字の大きさ
64 / 110
第四章その6 ~いざ勝負!~ VS闇の神人編

やっと隙を見せたわね!

しおりを挟む
 闇の神人・鳳天音おおとりあまねは苛立っていた。

 雲下の探索は進み、既に多数の車両は破壊したが、本命の航空戦艦とやらが見つからないのだ。

 陸上兵器ごとき脅威でも何でもないが、戦艦の大口径砲なら勝手が違う。

 自らも痛手をこうむるかもしれないし、砲撃で視界が悪くなったディアヌス様が、闘神・永津彦の不意打ちを食らうかもしれない。

 そうなる前に探り出し、必ず打ち壊さなければ……!

「さあ、どこに隠れている? 例え打ち出の小槌を使ったとしても、我が探知をすり抜けるのは不可能だぞ……?」

 だが天音がそう呟いた時である。

 一瞬、眼下の雲が揺らいだかと思うと、青い光条がこちらに迫った。

「くだらんっ……!」

 天音は問題なく対処し、余裕をもって邪気で弾いた。

(弾丸に気をまとわせている。あの女、誰かの機体に乗っているのか?)

 天音は口元に笑みを浮かべた。

「ならそれが貴様の棺桶だ!」

 頭上の邪気球から、黒い流星のような攻撃が、唸りを上げて駆け下る。

(仕留めたか……?)

 天音はしばし様子をうかがうが、今度は全く別の方向から同様の光が襲ってきた。

「くっ!?」

 予想外の角度であったため、天音は少し下がりながら防いだ。

 そうしながらも頭上の手は下ろさず、邪気の矢で反撃を行う。

(一瞬であそこまで移動した? 転移しながら術を編み上げ、弾に込めて放っただと?)

 天音は続けざまに邪気の矢を放つが、またも別方向から弾丸が襲ってきた。それも今までとは全く異なる巨大な弾頭……いや、大砲に近いか。

「ええい、何だこのでかい弾は!?」

 天音は身をよじってかわすが、内心は穏やかではなかった。

(この術の威力と作成速度はやさは何だ? 短期間でこうも上達する事があるのか……!?)

 天音は少々いぶかしんだが、首を振って迷いを断ち切る。

 掲げた腕に力を込め、頭上の黒い邪気の玉を、何倍にも巨大化させた。

「どれだけ動こうと同じ事。避けられない程大量の矢を浴びせてやれば……!」

 だが次の光景は、天音の予想を超えたものだった。眼下の雲間のあちこちが輝くと、青い光弾が複数箇所かしょから襲ってきたのだ。

「なっ、何だとっ!!?」

 もし大地の気が溢れていなければ、遠間から攻撃を察知して避けただろう。

 もし大量の邪気を練り込んで航空戦艦を探しておらねば、簡単に攻撃を防げただろう。

 そしてもし、残った力を攻撃に使おうとしたタイミングで無ければ、防ぐエネルギーも足りただろう。

 しかしあらゆるが重なって、防御がうまくいかなかった。

 多数の弾丸を弾いた瞬間、不覚にもよろめいてしまったのだ。体勢も気のコントールも乱れ、一瞬、攻めも守りもままならなくなる。

 それを狙いすましていたのだろうか。

 彼方の雲間を突き破り、巨大な艦影が姿を現した。敵方の切り札、2隻の航空戦艦である。砲は既にエネルギーを溜めており、青い光を帯びて輝いていた。

 次の瞬間、無数の砲弾が殺到……!!!

「ぐううっ!!!???」

 天音はたまらず頭上の手を下ろした。

 攻撃を一時あきらめ、両手を使ってガードするも、大威力の艦砲射撃に押されてしまう。

 このままではまずいと思い、雲下を探っていた邪気も解除し、防御に回した。これでエネルギーは十分である。

 身の内に激しい力が溢れると、艦砲射撃を立て続けに弾いたのだ。

「悪あがきは終わりだ、人間ども!!!」

 天音が叫ぶと、先ほどとはケタ違いに太い、巨大な龍のような邪気が複数放たれ、人間どもの船に殺到する。鋼鉄の装甲を容易く射抜き、一撃のもとに破壊したのだ。

 爆発、そして空中にて散華さんげ

 ばらばらと舞い落ちていく残骸を見据え、天音は思わず高笑いした。

「あはははは、これが新兵器だと? 笑わせるな! これで私の……」

 だがそこで天音は気付いた。

 落ちていく戦艦の周囲には、人の死体が見当たらないのだ。

(何だ、一つもかばねが無い!? しかもこれは……旧型艦だと?)

 艦の破片……その艦底部は、普通の護衛艦のように尖った形状だった。

 新型の航空戦艦であれば、陸での使用が前提のため、艦底はやや平らになっていたはず。

 つまりこれは旧式の船。旧型艦に属性添加機をごてごて付けて、無理やり浮かせていたのだろうし、速度が遅く、実戦には使えぬ代物だった。

(旧型艦を無理やり浮かせて……しかも中身はもぬけの殻だと……!? 砲を霊気で操っていたのか……!?)

 さすがの天音も余裕を失っていた。

 次はどこから攻撃が来る? 何が狙いだ、本命は何だ!?

 天音は必死に眼下の青い気の海に目を凝らした。

(くそっ、どこに潜っている? どこに、一体どこに……)

 だがその刹那、天音は不意に異変を感じた。

 足元に広がる雲海が、不自然にざわめいている。

 何か大きな力が来るのだ。

 そしてそれは……後ろからか……!!!

「……やっと隙を見せたわね!」

「!!!???」

 天音は全身総毛立つのを感じた。

 振り返ると、背後からあの姫君が突っ込んでくる。

 巨大化した狛犬に乗り、太刀を抜き放って、真っ直ぐこちらに迫ってくるのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...