新説・鶴姫伝！ 日いづる国の守り神 PART４ ～双角のシンデレラ～

第四章その９ ～攻撃用意！～ 山上からの砲撃編

２つの山の頂（いただき）で

　愛鷹山の山頂も、次第に慌あわただしくなった。

「第１次エネルギー到達、京へのチャージ開始します！　予想１次臨界点まであと３６０Sセカンド！」

　現地の兵が機器の轟音に負けないように叫び、力を満たしたケーブルが、光の大蛇のようにうねりながらエネルギーを京に送り込む。

　属性添加・調律機の『京』は、祭神達の力を蓄積しながら、波長を調律して電磁式を練り込んでいった。

　あのディアヌスの電磁バリアを貫くために、最大威力の貫通属性スパイラル電磁式コードを編み上げ、弾丸に凝縮するのである。

　京の前方には、巨大な砲身が下界を見下ろす形で据えられていた。こちらは属性添加砲の『摩州ましゅう』である。

「特殊属性添加弾装填、エネルギー弁全解放！　初弾への属性添加を開始！」

　ボルトアクションで砲身に巨大な弾丸が装填されると、京で調律された電磁式が送り込まれていく。砲全体が青い光を帯び、薄闇の山頂で神々しく輝いた。

　そして砲身のそばに佇たたずんでいた鶴が、胸の前で手を合わせる。すると砲の直上ちょくじょうに巨大な太刀が浮かび上がった。

　闘神とうしん・永津彦ながつひこが授さずけた霊力の太刀であり、それは光となって銃身に入り込んでいく。

「照準並びに射角調整、安全装置セーフティーロック・第５次まで解除！」

　砲身は旧富士市近郊の平野部に向けて、微妙な角度の補正を行う。ディアヌスが予定地点に入り次第、この山頂より攻撃を撃ち込むのだ。

　鶴は剣の霊気を保持すべく、意識を集中したまま彼方かなたを見やった。北北西に見える富士の頂いただきにおいて、女神達が力を尽くしてくれているからだ。

「ナギっぺ、サクちゃん……お願いね……！！」

　鶴は祈るように呟いた。



　霊峰れいほう富士の山頂では、向かい合う女神２人が力を蓄積していた。

　光に包まれ、山体そのものとエネルギーを同期させている佐久夜姫さくやひめ。その力を補助しながら、更に気を練り上げていく岩凪姫いわなぎひめ。

　霊質が極めて酷似こくじした姉妹神しまいがみだからこそ可能な、強力な合体術を繰り出すためである。

　激しい霊気が彼女達の身を覆い、あたかも山上から白い火柱が立ち昇るようだった。

　岩凪姫は地上を見据えて呟いた。

「踏ん張れよ、みんな。辛いだろうが、ここを絶望の終わりにしよう……！」