104 / 110
第四章その10 ~最終決戦!?~ 富士の裾野の大勝負編
運命の再起動
しおりを挟む
こちらの機体が起き上がったのを見て、ディアヌスは地に刺した刀を抜いた。
魔王の周囲には激しく邪気が立ち昇り、思考を示す電磁場の揺らぎが見える。
そう、複雑過ぎて最初はパターンが読めなかったが、徐々に相手の思考が見え始めて来たのだ。
誠は機体を前に突進させ、脇構えに太刀を構える。
ディアヌスは嘲笑うように言った。
「突っ込むだけの猪武者が……!」
誠が太刀を横薙ぎに振るい、魔王の首を狙おうとすると、相手がそれを受ける動作が脳裏に浮かんだ。敵の周囲の電磁場を読み取り、誠の脳内でイメージに変えたのだ。
誠は咄嗟に太刀の軌道を下げ、胴の辺りを薙ぎ払う。
「ぬうっ!?」
魔王は何とか防いだものの、体勢を崩し、何歩か後ずさる。
(惜しかった! でも……!)
誠はなおも機体を前進させ、今度は突きの構えを取る。
狙いを腹に定め、こちらの太刀が動き始めると、やはり魔王の動きが見えた。横から刀をふるい、払いのけるように防ぐ気だろう。
誠は突きかかると見せかけ、機体の前に斥力場を発生。その場で緊急停止する。
払おうとしたディアヌスの刃は空を切り、そこで誠は機体を再加速させた。
「ぐうううっ!!?」
魔王は下がりながらこちらの太刀を弾くが、内心かなり動揺しているようだ。
「貴様っ……!!!」
再びよろめきながらディアヌスは言った。
先ほどまでの余裕は消え失せ、動きを読まれた事に怒りを覚えているのだ。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!
魔王は凄まじい声で咆えたが、誠はまるで気圧されなかった。
『ええで鳴っちっ!!! そこや、行っけえ!!』
そう、応援してくれる皆の声が聞こえるからだ。
この声が聞こえる限り、彼らの気持ちが全身を包んで、魔王の殺意が届かない気がした。
誠は何度もディアヌスに打ち込み、徐々に相手を押し込んでいく。
「いくら邪神だからって、何千回見たと思ってんだ……!!」
現時点では、ディアヌスのほうがパワーは上。それは最初の打ち合いで分かった。
こちらが全力で打ち込んでも、相手は余裕をもって防げる。だったらどうする?
相手の動きを先読みし、その裏をかくのだ。常に咄嗟の動きを強要し、体勢を崩させ、力を100%発揮させないようにするのだ。
誠はあらゆる選択肢を用い、熾烈な攻撃を幾度も加えた。
だがそこはさすがの魔王である。いかに不意を突かれようと、ギリギリの所で攻撃を防いでいた。
(押し込めてる……けど、このままじゃ決め手に欠ける!)
誠はそこで決断した。
震天だって未完成の機体だ。このまま長引けば、予期せぬ不具合が出るだろう。
だったらここで勝負を付けねば……誠はそう考えたが、それは機体をよく知る技術者達も同じだったらしい。画面上で筑波が叫んだ。
『長引けば不利になる。ここが勝負だ、出力を上げるぞ!』
「はいっ!!!」
機体の出力が上がると同時に、発生したパワーノイズが振動となって全身を揺らした。
祭神の細胞同士のエネルギーを共鳴させ、掛け合わせる事で単なる足し算ではない力を引き出すのだが、エネルギーの調整が難しいため、出力を上げるにつれてノイズが増えるのである。
誠は一気に魔王に斬りかかる。
魔王は弾いたが、明らかにこちらの太刀のパワーが上がっていた。防御した魔王は、先ほどまでより大きく体勢を崩している。
2度、3度と攻撃を繰り返す度、魔王の隙は増えていった。
やがて魔王の刀を大きくはね上げ、腹をがら空きにする事に成功する。
(ここで、ここで決めるっ!!!)
誠は更に機体を加速させた。
……………………だが、次の瞬間だった。
機体に一際大きな振動が走った。急激に出力が衰え、画面があちこち点滅し始める。
細胞同士の共鳴とエネルギーの調律に失敗し、パワーが極端に落ちたのである。
当然ながら刀の光も消え失せて、これでは魔王を傷つける事が出来ない。
『まずいっ、こんな時に!』
画面上で筑波が叫んだ。
誠は何とかディアヌスに機体を寄せると、肩を押し当てて体当たりしていた。
「ぬううううっ!?」
ディアヌスは吹っ飛び、凄まじい地響きを立てて倒れ込んだ。
そのまま土煙を巻き上げながら滑り、山肌に背を打ち付けて停止した。
誠は最後の力で身を起こすと、太刀を大地に突き立てた。それから機体を腕組みさせて動きを止める。
丁度さっきと逆の形勢であり、相手が起きるまで、待っているように見せかけたのだ。
「今です筑波さんっ、再起動をっ!!!」
『分かった、全速力でなっ!!』
筑波は答えると、配下に素早く指示を出す。
誠の乗る操縦席は、唐突に闇に包まれた。
あの魔王ディアヌスを前にして、機体の一切の電力が落ちる。
身の毛もよだつような事態であったが、誠は荒い呼吸を整えた。
(危険なのは分かってる……でも一か八かやるしかないっ……!)
やがて操縦席に光が灯り、モニターが少しずつ反応していく。
ディアヌスはゆっくりと身を起こし、こちらを睨み付けていた。
「舐めるな小僧、剣を持て!!!」
誠は目玉だけを動かし、起動プログラムの進行を見る。システムはまだ再起動中だった。
進行度合いを示す緑色のバーがじれったく伸び、各種プログラムの名称が高速で表示されては消えていく。
まだ動けないし、外部拡声器も使えないから、口八丁も選択肢に無かった。
(もう少し……もう少しだ……!)
祈るように念じる誠に、魔王は再び咆えた。
「剣を持て、小僧っっっ!!!!!」
声だけで大地が震えるようだったし、今にも怒りで斬りかかってきそうだ。
その瞬間、機体の全ての画面が輝く。
属性添加機の駆動音が、四方八方から多重に誠を包み込み、強力な人工筋肉が収縮する音が鳴り響いた。
『再起動完了っ、いけるぞ!』
「了解っ!」
誠は機体を操作すると、地に突き刺した太刀を引き抜いた。
こちらが太刀を構えると、ディアヌスは一歩踏み出した。
「思ったよりはやる……だが遊びは仕舞いだ……!!!」
その身を覆う邪気は激しさを増し、燃え上がる火柱のようだった。
先程までの余裕を捨て、本気になろうとしているのだ。
魔王の周囲には激しく邪気が立ち昇り、思考を示す電磁場の揺らぎが見える。
そう、複雑過ぎて最初はパターンが読めなかったが、徐々に相手の思考が見え始めて来たのだ。
誠は機体を前に突進させ、脇構えに太刀を構える。
ディアヌスは嘲笑うように言った。
「突っ込むだけの猪武者が……!」
誠が太刀を横薙ぎに振るい、魔王の首を狙おうとすると、相手がそれを受ける動作が脳裏に浮かんだ。敵の周囲の電磁場を読み取り、誠の脳内でイメージに変えたのだ。
誠は咄嗟に太刀の軌道を下げ、胴の辺りを薙ぎ払う。
「ぬうっ!?」
魔王は何とか防いだものの、体勢を崩し、何歩か後ずさる。
(惜しかった! でも……!)
誠はなおも機体を前進させ、今度は突きの構えを取る。
狙いを腹に定め、こちらの太刀が動き始めると、やはり魔王の動きが見えた。横から刀をふるい、払いのけるように防ぐ気だろう。
誠は突きかかると見せかけ、機体の前に斥力場を発生。その場で緊急停止する。
払おうとしたディアヌスの刃は空を切り、そこで誠は機体を再加速させた。
「ぐうううっ!!?」
魔王は下がりながらこちらの太刀を弾くが、内心かなり動揺しているようだ。
「貴様っ……!!!」
再びよろめきながらディアヌスは言った。
先ほどまでの余裕は消え失せ、動きを読まれた事に怒りを覚えているのだ。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!
魔王は凄まじい声で咆えたが、誠はまるで気圧されなかった。
『ええで鳴っちっ!!! そこや、行っけえ!!』
そう、応援してくれる皆の声が聞こえるからだ。
この声が聞こえる限り、彼らの気持ちが全身を包んで、魔王の殺意が届かない気がした。
誠は何度もディアヌスに打ち込み、徐々に相手を押し込んでいく。
「いくら邪神だからって、何千回見たと思ってんだ……!!」
現時点では、ディアヌスのほうがパワーは上。それは最初の打ち合いで分かった。
こちらが全力で打ち込んでも、相手は余裕をもって防げる。だったらどうする?
相手の動きを先読みし、その裏をかくのだ。常に咄嗟の動きを強要し、体勢を崩させ、力を100%発揮させないようにするのだ。
誠はあらゆる選択肢を用い、熾烈な攻撃を幾度も加えた。
だがそこはさすがの魔王である。いかに不意を突かれようと、ギリギリの所で攻撃を防いでいた。
(押し込めてる……けど、このままじゃ決め手に欠ける!)
誠はそこで決断した。
震天だって未完成の機体だ。このまま長引けば、予期せぬ不具合が出るだろう。
だったらここで勝負を付けねば……誠はそう考えたが、それは機体をよく知る技術者達も同じだったらしい。画面上で筑波が叫んだ。
『長引けば不利になる。ここが勝負だ、出力を上げるぞ!』
「はいっ!!!」
機体の出力が上がると同時に、発生したパワーノイズが振動となって全身を揺らした。
祭神の細胞同士のエネルギーを共鳴させ、掛け合わせる事で単なる足し算ではない力を引き出すのだが、エネルギーの調整が難しいため、出力を上げるにつれてノイズが増えるのである。
誠は一気に魔王に斬りかかる。
魔王は弾いたが、明らかにこちらの太刀のパワーが上がっていた。防御した魔王は、先ほどまでより大きく体勢を崩している。
2度、3度と攻撃を繰り返す度、魔王の隙は増えていった。
やがて魔王の刀を大きくはね上げ、腹をがら空きにする事に成功する。
(ここで、ここで決めるっ!!!)
誠は更に機体を加速させた。
……………………だが、次の瞬間だった。
機体に一際大きな振動が走った。急激に出力が衰え、画面があちこち点滅し始める。
細胞同士の共鳴とエネルギーの調律に失敗し、パワーが極端に落ちたのである。
当然ながら刀の光も消え失せて、これでは魔王を傷つける事が出来ない。
『まずいっ、こんな時に!』
画面上で筑波が叫んだ。
誠は何とかディアヌスに機体を寄せると、肩を押し当てて体当たりしていた。
「ぬううううっ!?」
ディアヌスは吹っ飛び、凄まじい地響きを立てて倒れ込んだ。
そのまま土煙を巻き上げながら滑り、山肌に背を打ち付けて停止した。
誠は最後の力で身を起こすと、太刀を大地に突き立てた。それから機体を腕組みさせて動きを止める。
丁度さっきと逆の形勢であり、相手が起きるまで、待っているように見せかけたのだ。
「今です筑波さんっ、再起動をっ!!!」
『分かった、全速力でなっ!!』
筑波は答えると、配下に素早く指示を出す。
誠の乗る操縦席は、唐突に闇に包まれた。
あの魔王ディアヌスを前にして、機体の一切の電力が落ちる。
身の毛もよだつような事態であったが、誠は荒い呼吸を整えた。
(危険なのは分かってる……でも一か八かやるしかないっ……!)
やがて操縦席に光が灯り、モニターが少しずつ反応していく。
ディアヌスはゆっくりと身を起こし、こちらを睨み付けていた。
「舐めるな小僧、剣を持て!!!」
誠は目玉だけを動かし、起動プログラムの進行を見る。システムはまだ再起動中だった。
進行度合いを示す緑色のバーがじれったく伸び、各種プログラムの名称が高速で表示されては消えていく。
まだ動けないし、外部拡声器も使えないから、口八丁も選択肢に無かった。
(もう少し……もう少しだ……!)
祈るように念じる誠に、魔王は再び咆えた。
「剣を持て、小僧っっっ!!!!!」
声だけで大地が震えるようだったし、今にも怒りで斬りかかってきそうだ。
その瞬間、機体の全ての画面が輝く。
属性添加機の駆動音が、四方八方から多重に誠を包み込み、強力な人工筋肉が収縮する音が鳴り響いた。
『再起動完了っ、いけるぞ!』
「了解っ!」
誠は機体を操作すると、地に突き刺した太刀を引き抜いた。
こちらが太刀を構えると、ディアヌスは一歩踏み出した。
「思ったよりはやる……だが遊びは仕舞いだ……!!!」
その身を覆う邪気は激しさを増し、燃え上がる火柱のようだった。
先程までの余裕を捨て、本気になろうとしているのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる