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第六章その2 ~あきらめないわ!~ 不屈の本州脱出編

戦隊ヒーローの歌は燃える。映像付きだとなおの事

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 鶴は木の骨組みに和紙を貼り付け、敵の目を引く小道具を作りながら語った。

「ひたすら真面目に日の本を守り続けた鶴ちゃんは、こうして懸命に戦いの準備をしているけれど黒鷹、そろそろそっちを手伝うわね」

 鶴はらんらんと目を光らせ、何が何でもカメラから目を逸らそうとしない。

 たまらずコマが撮影を止めた。

「カット、カットだよ鶴! 説明ゼリフが凄すぎるし、カメラ目線酷すぎ!」

「何を言うのコマ、主演の鶴ちゃんを撮らずして、一体誰の目線を撮るの!」

「ドキュメンタリーだよ、もっと自然な態度でいてよっ」



 そうこうする間にも、他の神使が隊員達を撮って回った。

「あとちょっとやな、頑張るで。うーちのなーまえはなーんばちゃん~♪」

「いやいやこのみ、名前じゃなくて苗字でしょ? そこ、配線間違ってるし」

 難波が金太郎のメロディで歌い、カノンがツッコミを入れる整備シーンは、女性隊員の日常を映した貴重な記録となった。



「よく聞けよ。そこでこの宮島様が駆けつけて、餓霊どもをバッタバッタとなぎ倒してだな」

「宮島、あんまりフラグは立てるなよ……ってお婆ちゃん、後ろから拝まないで。俺はお地蔵さんじゃないって!」

 群がる子供達に武勇伝を語る宮島と、お年寄りに祈られる香川の姿は、人々との交流を象徴するナイスシーンだ。



「ひっ、キャメラ!? 私もですか!?」

 注目される事に慣れてない鳳は、カメラを向けられると真っ赤になって固まっている。

「わっ、私など撮っても、面白くないと思うのですが……」

 皆に温かい差し入れを運びつつ、鳳はぎこちなくカクカク歩いた。

 エプロンが異常に似合っているので、このシーンのブロマイドでも出したら人気になりそうだ。



 音羽氏や配下の輸送班も、気恥ずかしそうに作業を続けている。

 時折小さくピースしたり、いかにも素人の若者らしい感じが良かった。

 鶴は途中から映画監督と化し、演出にまでり始めた。

「カーット! もっとこう、熱意が欲しいわ!」

「アクション! みんなもっと必死に走って!」

「盛り上げる曲も必要だわ!」

 鶴は撮った映像に曲を合成し始めたが、それは懐かしの戦隊ヒーローの主題歌のように勇ましかった。

 誠がCDのラベルを見ると、『真面目戦隊ツルレンジャー』と書かれている。

「いつのまにこんなん作ったんだよ」

「なんや聞いた事ある感じやな。超新星フラッ●ュマンみたいやん」

 こうしてすったもんだの撮影は続き、一同はようやく戦支度を終えたのだった。
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