19 / 160
第六章その2 ~あきらめないわ!~ 不屈の本州脱出編
きりきり舞いの悪党ども
しおりを挟む
「…………!?」
餓霊達はようやく足を止めていた。
逃げる車を追いかけていたら、いきなり光に襲われた。光が薄れたら車が消えて、獲物を見失ってしまったのだ。
何が何だか分からない……が、次の瞬間。
「そこまでよ!」
ふいに頭上から、勇ましい声がかけられた。
見上げると、建物の上に数人の人影が見える。
「さあさあ、人の世にあだなす悪党ども、今日が年貢の納め時よ! 黒鷹、みんな、こらしめてやりなさい!」
そんな勇ましいセリフとは裏腹に、奴らは次々物陰へ飛び降りていく。
(逃げるのか……!?)
(追わなければ……!)
急ぎ後を追いかけるのだが、迷路のような居住区のせいで、たちまち姿を見失ってしまう。
「……?」
周囲を見回し、懸命に相手を探した。
いかなる音も聞き逃さぬよう、ただの1人も逃がさぬよう……そして相手を発見したのだ。
(!!!???)
一瞬、餓霊達は面食らった。
見つけたのはいいが、今度は数が多すぎるのだ。
さっきより大きくなった神使にまたがり、突進してくる人間達は、数十、いや数百に及ぶ大軍だった。
彼らはあっちの路地に消えたかと思えば、こっちの角から飛び出してくる。
人間同士がすれ違い、気さくに声をかけあったり、世間話までする始末だ。
追いかける餓霊や黄泉醜女は大混乱に陥った。
つんのめり、餓霊同士が激突し、黄泉醜女に跳ね飛ばされる。
そうこうするうちに、町の彼方に巨大な物が現れた。
さっきまでそこには何も無かったはずだが、ともかくあれは、人間どもが使っていた人型の鎧だった。
一同はそこに殺到するが、もうすぐ辿り着けるという寸前で、鎧は縮んで消えてしまった。
(……っ!?)
慌てて周囲を見回すと、今度は別の所に鎧が現れた。
めげずにそこに走っていくが、やはり到着寸前で消える。
走っては空振り、追いかけては無駄骨。
そんな事を繰り返すうちに、市街地にけたたましい音が響き渡った。
『バッカモーン!』
そんな怒声と共に、火柱が立ち昇っていく。
どうやら爆弾のようだが、その威力はとんでもない。
『ババババ、バッカモーン!』
次々起こる大爆発に、さしもの巨体の餓霊達も吹っ飛び、転び、散々な目にあっている。
更には爆発の合間を縫って、カラフルな生き物?がちょろちょろと走り出てくる。
さっきまでの神使や人間達とも違う、かなり珍妙な生物だ。
あの派手な赤い顔のヤツは、確か獅子舞……?
(??????????)
餓霊も黄泉醜女も、もはやパニックに陥っている。
「いいわ、めちゃんこ慌ててるわね!」
鶴はコマの背にまたがり、キャメラを掲げてドヤ顔した。
手はずは簡単、まず敵を引き付けて居住区に誘い込む。
それから町に隠れつつ、霊気で作った分身で引っ掻き回す。
次に打ち出の小槌で人型重機を出し入れして、敵の目をあちこちに引き付けた。
相手が混乱してきたところで、神器の爆弾で慌てさせる。
さらに混乱に拍車をかけるべく、神使達が被り物を着て走り回るのだ。
色とりどりの被り物は、各地のお祭りの祭具を模したもの。
獅子舞や神楽装束が走ると、カラフルで愛嬌のある五つ鹿が続く。
更には神使が大勢で操る牛鬼が、赤い巨体に長い首で暴れ回り、餓霊どもの度肝を抜いた。
鶴はキャメラを自分に向けて、時折ナレーションを吹き込んでいる。
「まさに天才と言うほかはありません。ひたすら真面目で、素晴らしい聖女である鶴ちゃんによって、悪党どもはキリキリ舞いさせられていたのよ」
キリッとした顔で語りを入れる鶴に、コマがたまらずツッコミを入れる。
「また勝手な事言ってるなあ。話を盛ってないで、そろそろ音羽さんと連絡とりなよ」
「いいところなのに、しょうがない狛犬ねえ」
鶴は渋々神器のタブレットを取り出す。
画面に映った音羽氏は、すぐにこちらに気付いて答えた。
「いけますよお姫さん、もう終わります! こっちはいつでもOKです!」
周囲はかなり薄暗く、彼らはライトを付けながら素早く作業を行っていた。
属性添加式ドリルで穴を開け、コード付きの何かを差し込んでは埋め戻していく。
鶴の素人目から見ても、かなり慣れた様子であり、彼らが歴戦の工作班である事を如実に示していた。
「いい部隊だわ。鶴ちゃんが天下統一したら、配下に召し抱えたいところね」
鶴は満足して頷くと、タブレットから一同に呼びかける。
「黒鷹、みんな、そろそろ仕上げよ!」
餓霊達はようやく足を止めていた。
逃げる車を追いかけていたら、いきなり光に襲われた。光が薄れたら車が消えて、獲物を見失ってしまったのだ。
何が何だか分からない……が、次の瞬間。
「そこまでよ!」
ふいに頭上から、勇ましい声がかけられた。
見上げると、建物の上に数人の人影が見える。
「さあさあ、人の世にあだなす悪党ども、今日が年貢の納め時よ! 黒鷹、みんな、こらしめてやりなさい!」
そんな勇ましいセリフとは裏腹に、奴らは次々物陰へ飛び降りていく。
(逃げるのか……!?)
(追わなければ……!)
急ぎ後を追いかけるのだが、迷路のような居住区のせいで、たちまち姿を見失ってしまう。
「……?」
周囲を見回し、懸命に相手を探した。
いかなる音も聞き逃さぬよう、ただの1人も逃がさぬよう……そして相手を発見したのだ。
(!!!???)
一瞬、餓霊達は面食らった。
見つけたのはいいが、今度は数が多すぎるのだ。
さっきより大きくなった神使にまたがり、突進してくる人間達は、数十、いや数百に及ぶ大軍だった。
彼らはあっちの路地に消えたかと思えば、こっちの角から飛び出してくる。
人間同士がすれ違い、気さくに声をかけあったり、世間話までする始末だ。
追いかける餓霊や黄泉醜女は大混乱に陥った。
つんのめり、餓霊同士が激突し、黄泉醜女に跳ね飛ばされる。
そうこうするうちに、町の彼方に巨大な物が現れた。
さっきまでそこには何も無かったはずだが、ともかくあれは、人間どもが使っていた人型の鎧だった。
一同はそこに殺到するが、もうすぐ辿り着けるという寸前で、鎧は縮んで消えてしまった。
(……っ!?)
慌てて周囲を見回すと、今度は別の所に鎧が現れた。
めげずにそこに走っていくが、やはり到着寸前で消える。
走っては空振り、追いかけては無駄骨。
そんな事を繰り返すうちに、市街地にけたたましい音が響き渡った。
『バッカモーン!』
そんな怒声と共に、火柱が立ち昇っていく。
どうやら爆弾のようだが、その威力はとんでもない。
『ババババ、バッカモーン!』
次々起こる大爆発に、さしもの巨体の餓霊達も吹っ飛び、転び、散々な目にあっている。
更には爆発の合間を縫って、カラフルな生き物?がちょろちょろと走り出てくる。
さっきまでの神使や人間達とも違う、かなり珍妙な生物だ。
あの派手な赤い顔のヤツは、確か獅子舞……?
(??????????)
餓霊も黄泉醜女も、もはやパニックに陥っている。
「いいわ、めちゃんこ慌ててるわね!」
鶴はコマの背にまたがり、キャメラを掲げてドヤ顔した。
手はずは簡単、まず敵を引き付けて居住区に誘い込む。
それから町に隠れつつ、霊気で作った分身で引っ掻き回す。
次に打ち出の小槌で人型重機を出し入れして、敵の目をあちこちに引き付けた。
相手が混乱してきたところで、神器の爆弾で慌てさせる。
さらに混乱に拍車をかけるべく、神使達が被り物を着て走り回るのだ。
色とりどりの被り物は、各地のお祭りの祭具を模したもの。
獅子舞や神楽装束が走ると、カラフルで愛嬌のある五つ鹿が続く。
更には神使が大勢で操る牛鬼が、赤い巨体に長い首で暴れ回り、餓霊どもの度肝を抜いた。
鶴はキャメラを自分に向けて、時折ナレーションを吹き込んでいる。
「まさに天才と言うほかはありません。ひたすら真面目で、素晴らしい聖女である鶴ちゃんによって、悪党どもはキリキリ舞いさせられていたのよ」
キリッとした顔で語りを入れる鶴に、コマがたまらずツッコミを入れる。
「また勝手な事言ってるなあ。話を盛ってないで、そろそろ音羽さんと連絡とりなよ」
「いいところなのに、しょうがない狛犬ねえ」
鶴は渋々神器のタブレットを取り出す。
画面に映った音羽氏は、すぐにこちらに気付いて答えた。
「いけますよお姫さん、もう終わります! こっちはいつでもOKです!」
周囲はかなり薄暗く、彼らはライトを付けながら素早く作業を行っていた。
属性添加式ドリルで穴を開け、コード付きの何かを差し込んでは埋め戻していく。
鶴の素人目から見ても、かなり慣れた様子であり、彼らが歴戦の工作班である事を如実に示していた。
「いい部隊だわ。鶴ちゃんが天下統一したら、配下に召し抱えたいところね」
鶴は満足して頷くと、タブレットから一同に呼びかける。
「黒鷹、みんな、そろそろ仕上げよ!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる