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第六章その2 ~あきらめないわ!~ 不屈の本州脱出編
目指すは函館、ラストリゾート!
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「今度こそざまあみろやで!」
神使達は飛んだり跳ねたり大騒ぎであり、被災者やその子供達も大喜びだ。
隊員達や鶴も同じで、お祭り騒ぎの様相だった。
やがてひよりが説明してくれた。
「その、上陸して待ってたんですけど、敵が押し寄せてきまして。だから目印を残しながら逃げたんです。みなさんなら、きっと戻ってくると思って」
ひよりはそこで耐え切れずに泣き始めた。冷静なのは上辺だけだったようだ。
「また異常にボロボロですよね? スタントマンにでもなったんですか」
尚一が少し悪戯っぽく、懐かしい台詞を言う。
誠は苦笑し、鶴に目線を送りながら言った。
「そりゃあ、うちの映画監督は厳しいからさ」
「まあ、失礼しちゃうわ。この名監督の鶴ちゃんに向かって」
そこで耐え切れず皆が笑った。
「また壊しおって……と言いたいところじゃが。安心せい、何度でもわしが直してやるわい」
そう言って髭を撫でる美濃木の後を、お下げ髪のなぎさが続けた。
「そうですよ、私達が直しますから。諦めたら、きついチョップをお見舞いしますよ?」
「ありがたい事だな。なあ尚一」
香川が手を弟の頭に乗せると、尚一はこらえ切れず涙を浮かべている。
「岩凪姫さんと佐久夜姫さんのお2人から、あらかじめ船団長に報せが来てたんです。報せっていうか、白昼夢っていうか」
ひよりは涙をぬぐいながら、再び説明してくれた。
「もしもの時は、港で待ってて欲しいって、そんな幻を見たそうです。丁度私達も直談判してたから、スムーズに来れたんですけどね」
「…………っ!!!」
誠も鶴も、隊員達も押し黙った。
駆け付けた皆の優しさと、最後の最後まで助けてくれた女神達の気遣いが波状攻撃となって、目頭が熱くなったのだ。
やがて沖に出た艦は、少しずつその巨体を沈めていく。
浅瀬を抜け、属性添加機の浮力補助を弱めた事で、本来の喫水位置に戻したのだ。
「これからどこに行くんだろう?」
誠が問うと、ひよりはもう笑顔で言う。
「今の季節に残念ですが、すんごく寒いところですよ?」
彼女の言葉通りだった。
船は列島東岸を北上し続け、風は北国のそれに変わりつつある。
どんよりと曇った空、鉛色に染まった海。
強い風が潮を巻き上げ、雪のように吹き付ける中、今にも演歌が聞こえてきそうな津軽海峡を進むと、幾多の艦が姿を現した。
前を見ても後ろを見ても、右も左も船また船。
あらゆる艦がこの海域に集まっていたし、多くのヘリや航空機が、信号灯を光らせながら行き交う船を護衛している。
その光景に驚く誠達だったが、陸に近づくと、それは更なる驚きに上書きされた。
1つ1つが豪華客船ほどもある船が、海岸を埋め尽くすように居並ぶ様は、勇壮としか言いようが無い。
「す、凄いわね、黒鷹……」
鶴も流石に圧倒されていたし、誠もそれは同じだった。
「確かに……日本中、全部の船が集まってるみたいだ」
誠が呆然と呟くと、ひよりは胸を張って答えた。
「ようこそ鳴瀬少尉、我がふるさと第1船団へ。ここがこの日本で最後の砦、北海道・渡島半島避難区です。ラストリゾートって呼び名もあるんですよ?」
「最後の楽園……」
誠はただ呆然と繰り返したのだ。
神使達は飛んだり跳ねたり大騒ぎであり、被災者やその子供達も大喜びだ。
隊員達や鶴も同じで、お祭り騒ぎの様相だった。
やがてひよりが説明してくれた。
「その、上陸して待ってたんですけど、敵が押し寄せてきまして。だから目印を残しながら逃げたんです。みなさんなら、きっと戻ってくると思って」
ひよりはそこで耐え切れずに泣き始めた。冷静なのは上辺だけだったようだ。
「また異常にボロボロですよね? スタントマンにでもなったんですか」
尚一が少し悪戯っぽく、懐かしい台詞を言う。
誠は苦笑し、鶴に目線を送りながら言った。
「そりゃあ、うちの映画監督は厳しいからさ」
「まあ、失礼しちゃうわ。この名監督の鶴ちゃんに向かって」
そこで耐え切れず皆が笑った。
「また壊しおって……と言いたいところじゃが。安心せい、何度でもわしが直してやるわい」
そう言って髭を撫でる美濃木の後を、お下げ髪のなぎさが続けた。
「そうですよ、私達が直しますから。諦めたら、きついチョップをお見舞いしますよ?」
「ありがたい事だな。なあ尚一」
香川が手を弟の頭に乗せると、尚一はこらえ切れず涙を浮かべている。
「岩凪姫さんと佐久夜姫さんのお2人から、あらかじめ船団長に報せが来てたんです。報せっていうか、白昼夢っていうか」
ひよりは涙をぬぐいながら、再び説明してくれた。
「もしもの時は、港で待ってて欲しいって、そんな幻を見たそうです。丁度私達も直談判してたから、スムーズに来れたんですけどね」
「…………っ!!!」
誠も鶴も、隊員達も押し黙った。
駆け付けた皆の優しさと、最後の最後まで助けてくれた女神達の気遣いが波状攻撃となって、目頭が熱くなったのだ。
やがて沖に出た艦は、少しずつその巨体を沈めていく。
浅瀬を抜け、属性添加機の浮力補助を弱めた事で、本来の喫水位置に戻したのだ。
「これからどこに行くんだろう?」
誠が問うと、ひよりはもう笑顔で言う。
「今の季節に残念ですが、すんごく寒いところですよ?」
彼女の言葉通りだった。
船は列島東岸を北上し続け、風は北国のそれに変わりつつある。
どんよりと曇った空、鉛色に染まった海。
強い風が潮を巻き上げ、雪のように吹き付ける中、今にも演歌が聞こえてきそうな津軽海峡を進むと、幾多の艦が姿を現した。
前を見ても後ろを見ても、右も左も船また船。
あらゆる艦がこの海域に集まっていたし、多くのヘリや航空機が、信号灯を光らせながら行き交う船を護衛している。
その光景に驚く誠達だったが、陸に近づくと、それは更なる驚きに上書きされた。
1つ1つが豪華客船ほどもある船が、海岸を埋め尽くすように居並ぶ様は、勇壮としか言いようが無い。
「す、凄いわね、黒鷹……」
鶴も流石に圧倒されていたし、誠もそれは同じだった。
「確かに……日本中、全部の船が集まってるみたいだ」
誠が呆然と呟くと、ひよりは胸を張って答えた。
「ようこそ鳴瀬少尉、我がふるさと第1船団へ。ここがこの日本で最後の砦、北海道・渡島半島避難区です。ラストリゾートって呼び名もあるんですよ?」
「最後の楽園……」
誠はただ呆然と繰り返したのだ。
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