新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART6 ~もう一度、何度でも!~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

文字の大きさ
47 / 160
第六章その6 ~最後の仕上げ!~ 決戦前のドタバタ編

邪神達は意外と単純

しおりを挟む
 高嶺は行動を開始した。

『同じ山神や自然神に報せ、味方に引き入れるのだ。ただし群山むらやまに近しい者は避けろ』

 そんな肥河の言葉どおり、自然神達に話をした。先の映像も全て見せた。

 当然彼らは衝撃を受け、また怒りをあらわにした。

「夜祖に感づかれる、今は動くな。だが不満を持つ同志は多い。時が来れば、我と共にあれ」

 高嶺の言葉に、彼らは頷くのだった。



 肥河の欠片は、更に次の手を示してきた。

『自然神以外にも不満を持つ者はごまんといる。手柄を餌に掻き乱してやれ』

 高嶺は宴会場に舞い戻った。

 部屋の奥に陣取る華々しい面々が狙いではない。隅で面白くなさそうにしていた、はぐれ者達が目当てなのだ。

 彼らは邪神の序列で言えば末端・末席、つまり権力争いに負けた連中である。

 この日の本を奪還しても、閑職かんしょくに追いやられるのは明白だったし、その事を不満に思っているのだ。

 高嶺は彼らを室外に誘い、言葉巧みに語りかけた。

「実は、探らせていた配下から情報が入った。人間どもが攻め上ってくるのだ」

「……何だと?」

 邪神達は途端に目をぎらつかせる。

「放置すれば、いずれここまで来るだろうが……ここには千里眼と桐壺がいる。他の名だたる武神もいる。だから秘密裏にうって出るのだ」

「我らから出向くだと?」

「そうとも、我らの手で人の軍勢を討ち果たすのだ。さすれば手柄は我々だけのもの。常夜命が戻られれば、必ず取り立てて下さるだろう」

「おおお……これは絶好の好期よ!」

 高嶺の提案に、邪神達は喜んだ。

「この件くれぐれも内密に。秘密が漏れれば、手柄が消えると思え」

「分かっているぞ、ここだけの話にしよう」

 邪神達は嬉しげに何度も頷いた。

 力や魔力は強くとも、彼らは極めて単純なのだ。



 高嶺は更に、六道王子りくどうおうじにも声をかけた。

「ここに居れば狩りは出来ぬ。だが行けば狩り放題だ。抜け駆けして我々だけで楽しみ、ついでに手柄を上げようではないか」

「おおおっ、待ってたぜ! ずっとこんな所で待つなんぞ、俺の性に合わないんでな!」

 六道王子は、手にした杯を放り投げながら立ち上がった。

 彼は他の邪神に輪をかけて単純で、二つ返事で引っかかったのだ。

「親父殿に言えば止められるだろう。誰にも言うな、特に夜祖には」

「任せとけや!」

 六道王子は金棒を取り出し、肩に担ぎながら答えた。

 目はらんらんと輝き、全身に激しい邪気が渦巻いている。

 高嶺はその様を静かに見つめた。

(……こいつは口が軽い、演技も下手だ。だが強さはケタ外れで、こいつがいると目的を果たせないだろう)

 多少の危険を負ってでも、彼を館から引き離さねばならないのだ。



 高嶺は更にトドメの手を打った。

 この館の最高権力者たる仄宮ほのみやにである。

「……というわけで、この館はあまりに無粋で不細工であります。これで常夜命様をお迎えするのは非礼にあたりましょう」

 高嶺は胸に手を当て、わざとらしく演技しながら言った。

「あの不細工な壁とやぐらが邪魔です。そもそも神々が集うこの場所に、あのような備えが必要でしょうか?」

「確かにそうであるな」

 仄宮は館の外を眺めた。

「あれらが眺めを邪魔しております。そこでどうでしょう。あれを取り払えば、我々山神達が総出で、美しい花を咲かせましょう。さすれば更に眺めが良くなります」

「おお、それは良い、実に良いぞ! 早速取り払わせるのじゃ!」

 仄宮は子供のように喜ぶと、傍らの女神に言った。

「すぐに夜祖に伝え、不細工な備えを取り払わせよ。美しいわらわの一存じゃ、反論は許さぬとな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...