新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART6 ~もう一度、何度でも!~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

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第六章その11 ~時代絵巻!?~ 過去の英雄そろい踏み編

本当の大人たち

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「………………」

 伝説のパイロット達の勇姿を、壮太は呆然と見つめていた。

 速くて強くて、そして正確無比な判断力。

 この絶望的な状況を何とも思わぬように軽口を叩き、強力な敵を瞬きの間に片付けていく。

 これなら伝説の部隊と称えられた事も、十分に納得できた。

 ……だが壮太の驚きはまだ続いた。

 戦場に駆けつけたのは、神武勲章レジェンド隊だけではなかったからだ。

 その見慣れぬ人型重機達は、全身をダークグリーンに塗装されていた。

 決して洗練されておらず、追加装甲シュルツェンの上に並んだライトも、剥き出しで無骨なものだ。

 公道を移動する事を想定していたのか、肩には方向指示灯ウインカーやナンバープレートまで備えている。

 お世辞にも華麗とは言えない見た目の機体達は、疲れ果てたこちらに後退するよう指示し、そのまま射撃戦を始めた。

 その後ろ姿に不思議な安心感を覚えていると、湯香里が小さく呟いた。

「い、池谷中佐……だったわよね? 第5船団の……」

 壮太もはっきり覚えていないが、確か湯香里が言う通りだったと思う。

 画面に映る、短髪で男らしい顔立ちの男性は、低く良く響く声で呼びかけてきた。

「待たせたなみんな。君達は本当に辛抱強く頑張った。だから後は、私達大人に任せてくれたまえ……!」

 湯香里は中佐に通信を試みている。

「い、池谷中佐……そ、その、指揮はどうされたんですか?」

「部下にワガママを言ってね。最後ぐらい大人らしい事をしようと思って、古い機体を引っ張ってきたんだ。私達と同じポンコツさ」

「で、でも中佐、逆鱗が無いと操縦が……」

「もちろん私達には逆鱗が無い。でも君達が積み重ねてくれたデータのおかげで……進化してきたOSのおかげで、少しぐらいは戦えるさ。この恐ろしい時代でもがいてきた君達の頑張りは、決して無駄じゃないんだよ?」

 中佐は油断なく射撃を行いながらも、静かに胸の内を語っていく。

「私達も最後ぐらい君達を守りたい。君達ほどは戦えなくても、盾となって、君達が休む時間を稼ぎたい。それが死んで行った仲間への手向たむけだし、私たちが出来る最後の贈り物なんだ」

 中佐の言葉の合間にも、画面には次々別の人物が映っていく。

 それぞれが色あせた迷彩服に身を包み、敬礼している旧自衛隊の人々だった。

 皆言葉は発しなかったが、その目からは伝わってくる。

 長らく戦い続けてきた若者達への感謝と、彼ら自身がそれを引け目に思っていた事がだ。

 …………正直にいえば、壮太もこの世を呪った事がある。

 大人が何もしてくれないと、嘆き悲しんだ事もある。

 でもそれは、一部の悪党だけだったのだ。

 少なくとも今目の前にいる大人達は、そんな悪党とは違っていた。

『大きくなったらこんなふうになりたい……!』

 子供達にそう思わせてくれる背中を、彼らは見せてくれているのだ。

「心配いらないさ、大人はしぶとい。騙し騙しやれるんだよ」

 銃撃を抜け、突進してきた餓霊の攻撃を受け止め、追加装甲シュルツェンを歪めながらも、池谷中佐はなおも語った。

「うまく出来ないなら出来ないなりに、やれる事はあるはずだ。武器も効かない、戦うすべも無かったあの頃に比べたら天国だからね……!」

 その言葉通り、旧自衛隊の人々の駆る機体は、しぶとく奮戦し続けていた。

 華麗に立ち回れないのなら、互いの死角を補って。

 誰かが危機に陥るなら、チームの力で援護しあって。

 古びてほこりをかぶっていたような旧型機達は、彼らの操縦によってその性能を十二分に発揮していた。

 やられてもやられても立ち向かっていく彼らの姿に、壮太は全身が震える程の感動を覚えた。

「まだ行けるぜっ……!」

 壮太は呟き、必死に機体を立ち上がらせる。

 隊員達もほぼ同時に身を起こしていた。

「……うちの温泉再開したらさ。この人達に、1番に入ってもらいたいわ。レジェンド隊も、自衛隊の人たちも。私たちを守ってくれた全部の人に、ありがとうって言いたいの……!」

 湯香里が言うと、他の隊員達も同意した。

「ならばこっちは、いいイカを手配しよう」

「マンゴーも持って行きますね」

 晶と八千穂が言うと、ヘンダーソンとキャシーも親指を立てた。

「沖縄でもアメリカングルメでも、全力でおもてなししようじゃないか。なあキャシー?」

「もちろんデース! 動けなくなるぐらい食べてもらいマスよ!」

「よっしゃあっ、その意気だ! 志布志隊っ、もっかい行くぞっ!」

 炎のような勇気を胸に、壮太達は戦闘を再開した。

 他の部隊も力を振り絞り、人間達の戦力は、再び勢いを取り戻したのだ。
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