新説・鶴姫伝！ 日いづる国の守り神 PART６ ～もう一度、何度でも！～

第六章その１３ ～もしも立場が違ったら～ それぞれの決着編

互いの涙を知っているから

　虹色に光り輝く柱の中、２人は激しく打ち合った。

　互いの太刀を受ける度、攻撃に込めた思念が伝わる。

　天音の言った通り、この柱に宿る反魂の術の影響で、２人の魂から思いが染み出しているのだ。

　命を懸けて切り結びながら、鶴達は互いの人生を追体験していた。

　合戦で次々親しい人を亡くし、最後には黒鷹を失った鶴。

　世のため人のために死に物狂いで戦っても、その人間達に裏切られ、最愛の夫と我が子を殺された天音。

　戦いながら、鶴は涙を流していた。天音も血の涙を流した。

　お互い聖者として生まれ、どちらも人の世の醜さを知っていたのだ。

　やがて２人の距離が離れる。

「分からぬ……我は貴様が分からぬのだっ……！！！」

　とめどなく血涙けつるいを流しながら、天音は唸るように言った。

「何ゆえ貴様は、同じ目に遭いながら人の側に立つのだ！？　２度も醜き世に生まれながら、貴様は何を見てきたのだっ……！！！」

「知らないわっ、私だってギリギリよっ！！　辛い事もいっぱいあったし、もう何が何だか分からないわっ！！！」

　だが鶴は、そこで天音の目を見つめる。

「でも私には、ナギっぺもコマもいてくれた。黒鷹が見つかるまで、ずっとそばにいてくれた……！」

「だ、黙れっ！！！」

「あなたには、いなかったのよね……？　私より、ずっと立派で真面目だったのに……あなたにはいなかった……！」

「黙れと言っている、それ以上言うなっ！！！」

　天音は髪を振り乱して叫ぶが、鶴は止めない。

「本当は分かってるんでしょう？　ナギっぺに八つ当たりしてるって。あの時の怒りを、誰にぶつけていいか分からなくて……だから全部ナギっぺに被せて。ナギっぺへの怒りを、拠より所にしてたんでしょう？」

「黙れと言っているだろうがっっっ！！！」

　天音は叫び、その波動で周囲の壁が大きく揺らいだ。

　憤怒の顔は夜叉のようだったが、鶴は気圧されずに言った。

「可愛そうな人。だけど私は負けられないの……！」

　ぎゅっと太刀を握り締め、真っ直ぐに天音を睨みつける。

「あなたは過去を嘆いているだけ。でも私には、今守りたい人がいるから……！」

「ええい、黙れええええええっっっ！！！！！」

　牙を剥き出し、天音はこちらに突っ込んでくる。

　本当は、戦う意味など無いのかも知れない。

　同じ聖者の立場に生まれ、互いの痛みを知っている。

　でも鶴は止まれなかった。自分には、どうしても守りたい人がいるのだ。