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第六章その13 ~もしも立場が違ったら~ それぞれの決着編
気付けなくてごめん…!
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「うるせえ!! うるせえうるせえうるせえうるせえっっっ!!! 今更何でこんなもん見せやがるっっっ!!!」
不是は頭を掻き毟って叫んだ。
「お前なんかに負けてたまるか!!! お前は運が良かっただけじゃねえかよ!!! あの雪菜とか言う女、何で俺の方に来なかったんだよ、何でお前の方に行ったんだよ!!!」
不是は叫びながら、滅茶苦茶に攻撃を加えてくる。
「何でお前だけが持ってるんだ!!! 何でお前だけが恵まれてるんだ!!! 神も仏もいるなら出て来いっ、俺が残らずぶち殺してやる!!! 俺には何1つ寄越さなかったくせに、偉そうに綺麗事だけ並べてんじゃねえっっっ!!!!」
だが彼も、既に体力の限界のようだった。機体の動きはみるみる鈍り、呼吸はどんどん荒くなる。
「…………っ!!!」
誠は一瞬躊躇した。
先ほど追体験した不是の思いが、彼と戦う覚悟を鈍らせたのだ。
数瞬のためらい、そして…………誠は再び応戦した。
不是の斬撃を弾き、返す刀で右腕を切り落とした。更に左腕も、肩の武装も、立て続けに断ち割っていく。
もう誠は理解していた。
再生能力にはかなりの集中が必要で、立て続けにあちこち攻撃されれば、何をどうしていいか分からなくなるのだ。
「くっそがあああああああああああああああっっっっ!!!!!」
全ての武器を失った不是は、叫びながら突っ込んできた。あの旗艦・みしまで戦った時と同じだ。
誠は太刀をふりかぶり、トドメをさすべく間合いを詰める。
……だがその瞬間、再び壁が虹色に光り、脳裏に松ぼっくりが思い浮かんだ。
(……っっっ!!!!!)
刹那、誠は太刀の刃を返していた。
そのまま操縦席区画を避け、不是の機体の腹を薙ぎ払ったのだ。
峰打ちではあるものの、彼の機体は激しく壁に叩き付けられた。
「………っ、………っ!」
誠はしばし、荒い呼吸を繰り返した。
(殺せなかった……)
あの短い時間に、どんな思いが駆け巡ったのかは分からない。分からないが、自分は不是の命を断ち切れなかった。
きっとそれで良かったのだ……と誠は無理やり納得した。
(いいさ……もしヒメ子がここにいたら……たぶん同じ事をしたんだ)
そんなふうに思えたのだ。
不是はこちらを睨み、何とか言葉を搾り出す。
「おっ……お前っ……また斬らなかったな……!」
「………………ごめん……全然気付かなかった」
「何だと……!?」
画面上で目を見開く不是。
誠だって、何故そう言ったのかは分からない。
この男のために、幾多の人が苦しんだ。こいつのせいで岩凪姫は命を落とした。
…………それでも誠には、どうしても不是を責められなかった。
自分と同じ地獄を生き、同じ絶望に喘いだ彼の気持ちが、痛い程分かったからだ。
「ごめんな……俺も同じ目にあったのに、俺だけ助かって、安心して…………お前がいる事、全然気付けなかったっ……!」
今更何を言っても意味が無いし、彼の罪は変わらない。
けれど誠は、最後にこれだけは伝えたかった。
「だからっ……ごめんっ……!!!」
「………………………………っ」
不是はしばらく呆然としていた。
何か夢から覚めたような目でこちらを見ていたが、やがて力尽きて項垂れたのだ。
彼が気を失うと同時に、眼下の結界が輝きを失う。今なら反魂の術の源を砕けるはずだ。
「くっ……!」
誠は震える手で機体を操作した。気を抜けば、すぐに意識が飛んでしまう。
もう限界を越えており、これが最後の一撃だ。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
だがその時、柱全体が強く揺れ動いた。
マグマが激しく逆巻いて、その中から、黒い巨大な腕が現れた。
そして溶岩の海から、漆黒の頭が競り上がってきた。
常夜命の魂が、この世に顔を出したのだったし、最早一刻の猶予も無い。
誠は多宝塔に狙いを定め、一気に機体を降下させる。
魔王がこちらを見上げた瞬間、誠の全身に、黒いまだら模様が広がっていく。
恐らく強い呪いだろう。食らえば必ず死ぬし、魂が朽ち果てる。それも直感で分かっていた。
だからと言って、今更どうこう言っていられないのだ。
今は盤面この一手、ただ前に進むしか無い。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっっ!!!!!」
誠は機体を急降下させ、多宝塔をぶった切った。
中に収められていた壷を断ち切り、黒い煙が猛烈な勢いで噴き出す。
………………その後の事は、正直よく覚えていない。
激しい光とエネルギー……そして噴き上がるマグマと、黒き魔王の咆哮。
それらが滅茶苦茶に入り乱れて、何が何だか分からなかった。
ダメージを受けたコクピットハッチが開き、機体の外へ投げ出される。
霞む視界で見上げると、幾多の物が舞い上がっていくのが見えた。柱の破片も、そして自らの乗っていた人型重機・心神も。
(…………これでもう、帰れない……)
誠は直感で理解した。
魔王を呼ぶ術は破壊したが、自分はもう動けない。
地の底に取り残され、機体まで失った。
もうあの懐かしい世界に戻る手段は残されていないのだ。
誠は最後に、鶴達の事を考えた。
(ヒメ子……みんな…………無事でいてくれ)
不是は頭を掻き毟って叫んだ。
「お前なんかに負けてたまるか!!! お前は運が良かっただけじゃねえかよ!!! あの雪菜とか言う女、何で俺の方に来なかったんだよ、何でお前の方に行ったんだよ!!!」
不是は叫びながら、滅茶苦茶に攻撃を加えてくる。
「何でお前だけが持ってるんだ!!! 何でお前だけが恵まれてるんだ!!! 神も仏もいるなら出て来いっ、俺が残らずぶち殺してやる!!! 俺には何1つ寄越さなかったくせに、偉そうに綺麗事だけ並べてんじゃねえっっっ!!!!」
だが彼も、既に体力の限界のようだった。機体の動きはみるみる鈍り、呼吸はどんどん荒くなる。
「…………っ!!!」
誠は一瞬躊躇した。
先ほど追体験した不是の思いが、彼と戦う覚悟を鈍らせたのだ。
数瞬のためらい、そして…………誠は再び応戦した。
不是の斬撃を弾き、返す刀で右腕を切り落とした。更に左腕も、肩の武装も、立て続けに断ち割っていく。
もう誠は理解していた。
再生能力にはかなりの集中が必要で、立て続けにあちこち攻撃されれば、何をどうしていいか分からなくなるのだ。
「くっそがあああああああああああああああっっっっ!!!!!」
全ての武器を失った不是は、叫びながら突っ込んできた。あの旗艦・みしまで戦った時と同じだ。
誠は太刀をふりかぶり、トドメをさすべく間合いを詰める。
……だがその瞬間、再び壁が虹色に光り、脳裏に松ぼっくりが思い浮かんだ。
(……っっっ!!!!!)
刹那、誠は太刀の刃を返していた。
そのまま操縦席区画を避け、不是の機体の腹を薙ぎ払ったのだ。
峰打ちではあるものの、彼の機体は激しく壁に叩き付けられた。
「………っ、………っ!」
誠はしばし、荒い呼吸を繰り返した。
(殺せなかった……)
あの短い時間に、どんな思いが駆け巡ったのかは分からない。分からないが、自分は不是の命を断ち切れなかった。
きっとそれで良かったのだ……と誠は無理やり納得した。
(いいさ……もしヒメ子がここにいたら……たぶん同じ事をしたんだ)
そんなふうに思えたのだ。
不是はこちらを睨み、何とか言葉を搾り出す。
「おっ……お前っ……また斬らなかったな……!」
「………………ごめん……全然気付かなかった」
「何だと……!?」
画面上で目を見開く不是。
誠だって、何故そう言ったのかは分からない。
この男のために、幾多の人が苦しんだ。こいつのせいで岩凪姫は命を落とした。
…………それでも誠には、どうしても不是を責められなかった。
自分と同じ地獄を生き、同じ絶望に喘いだ彼の気持ちが、痛い程分かったからだ。
「ごめんな……俺も同じ目にあったのに、俺だけ助かって、安心して…………お前がいる事、全然気付けなかったっ……!」
今更何を言っても意味が無いし、彼の罪は変わらない。
けれど誠は、最後にこれだけは伝えたかった。
「だからっ……ごめんっ……!!!」
「………………………………っ」
不是はしばらく呆然としていた。
何か夢から覚めたような目でこちらを見ていたが、やがて力尽きて項垂れたのだ。
彼が気を失うと同時に、眼下の結界が輝きを失う。今なら反魂の術の源を砕けるはずだ。
「くっ……!」
誠は震える手で機体を操作した。気を抜けば、すぐに意識が飛んでしまう。
もう限界を越えており、これが最後の一撃だ。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
だがその時、柱全体が強く揺れ動いた。
マグマが激しく逆巻いて、その中から、黒い巨大な腕が現れた。
そして溶岩の海から、漆黒の頭が競り上がってきた。
常夜命の魂が、この世に顔を出したのだったし、最早一刻の猶予も無い。
誠は多宝塔に狙いを定め、一気に機体を降下させる。
魔王がこちらを見上げた瞬間、誠の全身に、黒いまだら模様が広がっていく。
恐らく強い呪いだろう。食らえば必ず死ぬし、魂が朽ち果てる。それも直感で分かっていた。
だからと言って、今更どうこう言っていられないのだ。
今は盤面この一手、ただ前に進むしか無い。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっっ!!!!!」
誠は機体を急降下させ、多宝塔をぶった切った。
中に収められていた壷を断ち切り、黒い煙が猛烈な勢いで噴き出す。
………………その後の事は、正直よく覚えていない。
激しい光とエネルギー……そして噴き上がるマグマと、黒き魔王の咆哮。
それらが滅茶苦茶に入り乱れて、何が何だか分からなかった。
ダメージを受けたコクピットハッチが開き、機体の外へ投げ出される。
霞む視界で見上げると、幾多の物が舞い上がっていくのが見えた。柱の破片も、そして自らの乗っていた人型重機・心神も。
(…………これでもう、帰れない……)
誠は直感で理解した。
魔王を呼ぶ術は破壊したが、自分はもう動けない。
地の底に取り残され、機体まで失った。
もうあの懐かしい世界に戻る手段は残されていないのだ。
誠は最後に、鶴達の事を考えた。
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