新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART6 ~もう一度、何度でも!~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

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第六章その14 ~私しかおらんのだ!~ 最強女神の覚醒編

神はいつも祈りの中に…!

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 立ち並ぶ4体の邪神を、鳳は呆然と見上げていた。

 双角天は周囲の気を探り、六道王子の末路を悟ったようだ。

せがれがやられたか。魂は……完全に砕けてはおらんな。復活に数千年はかかるだろうが、まずは落とし前をつけてもらおう……!」

 次の瞬間、双角天が振り下ろした金棒が地を打ち付ける。

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 剛力で名を馳せた神の一撃に、大地は割れ、周囲の山が姿を変えた。

 倒れた人々も、残った車両や人型重機も、滅茶苦茶に振り回されたのだ。

 それでも人々は抵抗を試みた。

 まだ戦闘可能な航空戦艦から、そして車両や人型重機から、最後の攻撃が繰り出される。

 しかし邪神は微動だにせず、バカにしたように見下ろすだけだ。

「……うるさいはえども。少し大人しくしておれ」

 熊襲御前くまそごぜんが扇であおぐと、強烈な熱風が巻き起こり、人間達に襲いかかった。

 800度を越える灼熱の風に、人々は肌を焼かれ、喉を押さえて転げ回った。

「あ……ああっ……あっ……」

 鳳はその様を呆然と見つめていた。

 これは本当にこの世の光景なのだろうか。

 ひっくり返った車両が、地割れに飲み込まれた人型重機が……そして声にならない悲鳴を上げる人々が。全てが現実感の無い幻のようだった。

 だが熱波はすぐにこちらに殺到、鳳は神使と共に吹き飛ばされたのだ。

 残された霊気で防御し、即死は免れたものの、露出した肌のあちこちが焼けただれた。

「…………っ!」

 薄れ行く意識で、鳳は最後に祈った。

(都合の良い願いである事は百も承知です。けれどどうか……どうか天よ。人々をお守り下さい……!)

 最早ろくに動かない手を握り、すがるように祈り続ける。

(勇敢なる人々を……姫様を。そして黒鷹様を、どうかお守り下さい……!)



 太古の昔、人が飢えや病に圧倒されていた頃。人々は神に手を合わせた。

 目に見えぬ神の存在にすがり、祈る事で心の平穏を得てきた。

 けれど時代は進むのだ。

 文明が発達するにつれ、その存在を信じる者はまれになった。

 …………だがこれだけは言えるだろう。

 どんなに時が流れようと、どんなに世の中が変わろうと。

 己の力ではどうしようもない事態に襲われた時……そして這い上がる事すら叶わぬどん底に落とされた時。

 神を信じぬ者ですら、手を合わせて祈るのだ。

 もし神が再び現れるとするなら、その祈りの中にこそあるのだ……!



 鳳の必死の祈りとほぼ同じ頃。

 倒れた鶴のかたわらに、輝く2つの光があった。

 1つは小さな守り鈴。鶴が現世に来る際に、女神が渡した物である。

 もう1つは肌守り。やはり女神が夏木に与えた物だ。

 愛する教え子むすめと、愛してくれた人……その両者に渡した加護の品は、普通のお守りとしては、いささか強い霊力を宿していた。

 ……もちろんそれだけでは、あの奇跡は起こらなかっただろう。

 だが今は特別だった。

 あの反魂の術の余波が溢れ、周囲の岩場はまだ虹色に輝いていたからだ。

 何度も何度も……まるで脈動するかのように輝く岩場。

 そして鈴とお守りは、どんどんその光を強めていった。

 最後の引き金は、倒れた鶴のうわ言だった。

「ナギっぺ……ごめんなさい……!」

 鶴の言葉が言霊ことだまとなり、彼女が夢現ゆめうつつで描いた女神の姿を映し出したのだ。

 そしてお守り達が宙に浮かんだ。

 映し出された岩凪姫は、2つのお守りを受け止めた。

 復活というにはあまりにか弱い、陽炎かげろうのような女神の姿。

 けれど岩凪姫は地を踏みしめる。

 世にいかな嵐がふきすさむとも、決して倒れぬいわおの神が、絶望の大地に降り立ったのだ。
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