63 / 87
第三章その6 ~みんな仲良く!~ ドタバタの調印式編
サドンデスと料理勝負
しおりを挟む
スケジュールは猛烈な勢いで進み、やがて総合得点が発表された。
「結果発表! 白組・源氏&第2船団、689点! 赤組・平家&第4船団、702点! 以上を持ちまして、赤組の勝利よ!」
ワッと紙吹雪が舞い踊り、歓声が沸き上がった。
「MVPの発表よ。ハチマキ合戦・のりちゃん! 弓術・那須与一くん! ボウリング、高山さん!」
それぞれのMVPが手を上げて祝福されているが、高山は「なんであんたが参加してんだい!」と勝子にゲンコツを食らっていた。
教経はトロフィーを片手に源氏方を挑発する。
「ウワーハッハッハ! そらみろ、あの時はまぐれだったんだ! 本気を出せば源氏なんぞに負けるかあ!」
「ぬぐっ! くくく、くっそう……!」
源氏武者はいきり立ち、そこで弁慶がすっと手を伸ばした。
「はいそこ、弁慶くん!」
鶴が指名すると、弁慶はこほんと咳払いする。
「……も、もう1回……お願いできませぬかな?」
「な、何っ!? お前弁慶、見苦しいぞっ!」
教経が叫ぶが、源氏方と第2船団から、猛烈なコールが湧き起こった。
もう1回、もう1回、もう1回!
鶴はしばらく目を閉じて腕組みしていたが、そこで長机をバンと叩いた。
「許可します!」
やったああ、と歓声が上がり、横断幕は第2回わんぱくカップへと交換された。
再び猛烈に頑張る一同をよそに、誠達は配膳作業を急ぐ。
「ほら誠君、こっちもお願いね!」
嵐山は旅館の娘だけあって、さすがの手際の良さである。
「夢だか何だか知らないけど、ここなら私も体が動くし! こんなの久しぶりねっ」
その後ろでは、船渡が大釜でそばを茹でている。
「俺も良く分からないけど、なんだかちょっと楽しいかな」
船渡が言うと、なぜか料理を手伝っていた源氏武者が頷いている。
「そうそう、誰も死なぬなら、源氏も平家も関係ない。思う存分楽しめばよい」
上機嫌な武者に対し、船渡は鍋をかき混ぜながら尋ねた。
「……は、はあ……ところであなたは?」
「まあまあ、細かい事は抜きにしよう」
若武者は適当に流すのだが、向こうで弁慶が「御大将ーっ!? 御大将はいずこ!?」と叫んで探し回っていた。
「結果発表っ!」
再び鶴が叫び、今度は白組・源氏&第2船団の勝利が告げられる。
とたんに調子に乗って挑発する源氏、悔しがる平家。
もう1回、もう1回!
どこからともなく湧き上がるコールに、鶴は叫んだ!
「許可します!」
夢の空間とはいえ気力は消耗するらしく、段々ヘロヘロになってきた両陣営は、再び競技を始めていく。
「結果発表よ!」
とうとうへたり込む一同をよそに、鶴は採点用紙を眺めて首を傾げた。
「……あら、今回は同点だわ」
「な、何だとっ……!?」
武者達は青ざめるが、そこで鶴は立ち上がる。
「同点だからやり直し! 全員・起立!」
「い、いや娘よ、さすがにそれは……」
教経は冷や汗を流しながら口を挟むが、そこで会場脇の社が輝く。
赤い回廊が見事な厳島神社であり、平家方の守り神である。
社はギラギラと強烈な光を放っており、要するに「やれ」という事であった。
源氏方の守り神たる八幡社も同様であり、もう源氏方も無言だった。
双方は杖をつき、ふらふらしながら戦いを始める。
鶴は1人元気に声援を送った。
「こらそこー、サボらないで! さっきまであんなに喧嘩したがってたじゃないの。今日という今日は満足いくまで続けるわよ!」
いきり立つ鶴だったが、そこでコマが鶴に駆け寄る。
「鶴、さすがにそろそろいいよ。次終わったら休憩させて」
「えー、せめてあと1万回ぐらい」
「駄目駄目、魂が消えちゃうよ」
やがてわんぱくカップは閉会式を迎え、各種メダルが贈呈された。
表彰台からナメクジのように這って降りる人々だったが、そこでふと、いい匂いが漂ってくる。
全神連の勝子がメガホンを持ち、戦い疲れた人々に呼びかけた。
「さあお待ちどお、両陣営とも、よく頑張られました。ここらで腹ごしらえといたしましょう。伊勢神宮が外宮・豊受大神様より賜った霊気で作りましたので、食べればスタミナもりもりですよ!」
キツネや狛犬、サル、牛、龍。全国の神社から集まった神使がお膳を持って駆け回り、人々に料理を振る舞っていく。
「赤いお皿は西国のお料理、白いお皿は東国のお料理なんです。今度はめでたいお料理勝負、どうぞ食べ比べて御覧下さい」
勝子の説明に、避難区の人々は料理を見つめた。
海の幸、山の幸。豪華絢爛たる珍味の数々。この10年もの間、誰も見た事がないご馳走である。
人々は恐る恐る箸を動かすが、一口食べると、気力がどんどん漲ってくる。
まして現代の料理や味付けなど知らぬ源平の武者達にとっては、目ん玉が飛び出るほどの味わいであった。
彼らは子供のように喜び、酒を片手に上機嫌になる。
「いやあ、未来の料理とやらは、本当にうまい! よくぞここまで工夫したものだ!」
「そちらの子孫の料理も大したものだ!」
「いや、そっちの物も大変うまいよ!」
大人も子供も、先祖も子孫も。敵味方すら入り乱れた大宴会が、夢の空間で繰り広げられていく。
大鍋からバックホー(※ショベルカー)で芋煮がつぎわけられ、マグロの解体ショーが始まると、人々は拍手喝采して喜んだ。
わんこそば勝負では、教経と弁慶が一騎打ちをし、両者同時にぶっ倒れている。
「…………」
嵐山と船渡の両船団長は、ただ黙ってその様子を見つめていた。
遠い昔、まだこの国が人々の笑顔で溢れていた頃を……自分達が守ろうとした懐かしき世界の姿を、目に焼き付けようとしていたのかもしれない。
「結果発表! 白組・源氏&第2船団、689点! 赤組・平家&第4船団、702点! 以上を持ちまして、赤組の勝利よ!」
ワッと紙吹雪が舞い踊り、歓声が沸き上がった。
「MVPの発表よ。ハチマキ合戦・のりちゃん! 弓術・那須与一くん! ボウリング、高山さん!」
それぞれのMVPが手を上げて祝福されているが、高山は「なんであんたが参加してんだい!」と勝子にゲンコツを食らっていた。
教経はトロフィーを片手に源氏方を挑発する。
「ウワーハッハッハ! そらみろ、あの時はまぐれだったんだ! 本気を出せば源氏なんぞに負けるかあ!」
「ぬぐっ! くくく、くっそう……!」
源氏武者はいきり立ち、そこで弁慶がすっと手を伸ばした。
「はいそこ、弁慶くん!」
鶴が指名すると、弁慶はこほんと咳払いする。
「……も、もう1回……お願いできませぬかな?」
「な、何っ!? お前弁慶、見苦しいぞっ!」
教経が叫ぶが、源氏方と第2船団から、猛烈なコールが湧き起こった。
もう1回、もう1回、もう1回!
鶴はしばらく目を閉じて腕組みしていたが、そこで長机をバンと叩いた。
「許可します!」
やったああ、と歓声が上がり、横断幕は第2回わんぱくカップへと交換された。
再び猛烈に頑張る一同をよそに、誠達は配膳作業を急ぐ。
「ほら誠君、こっちもお願いね!」
嵐山は旅館の娘だけあって、さすがの手際の良さである。
「夢だか何だか知らないけど、ここなら私も体が動くし! こんなの久しぶりねっ」
その後ろでは、船渡が大釜でそばを茹でている。
「俺も良く分からないけど、なんだかちょっと楽しいかな」
船渡が言うと、なぜか料理を手伝っていた源氏武者が頷いている。
「そうそう、誰も死なぬなら、源氏も平家も関係ない。思う存分楽しめばよい」
上機嫌な武者に対し、船渡は鍋をかき混ぜながら尋ねた。
「……は、はあ……ところであなたは?」
「まあまあ、細かい事は抜きにしよう」
若武者は適当に流すのだが、向こうで弁慶が「御大将ーっ!? 御大将はいずこ!?」と叫んで探し回っていた。
「結果発表っ!」
再び鶴が叫び、今度は白組・源氏&第2船団の勝利が告げられる。
とたんに調子に乗って挑発する源氏、悔しがる平家。
もう1回、もう1回!
どこからともなく湧き上がるコールに、鶴は叫んだ!
「許可します!」
夢の空間とはいえ気力は消耗するらしく、段々ヘロヘロになってきた両陣営は、再び競技を始めていく。
「結果発表よ!」
とうとうへたり込む一同をよそに、鶴は採点用紙を眺めて首を傾げた。
「……あら、今回は同点だわ」
「な、何だとっ……!?」
武者達は青ざめるが、そこで鶴は立ち上がる。
「同点だからやり直し! 全員・起立!」
「い、いや娘よ、さすがにそれは……」
教経は冷や汗を流しながら口を挟むが、そこで会場脇の社が輝く。
赤い回廊が見事な厳島神社であり、平家方の守り神である。
社はギラギラと強烈な光を放っており、要するに「やれ」という事であった。
源氏方の守り神たる八幡社も同様であり、もう源氏方も無言だった。
双方は杖をつき、ふらふらしながら戦いを始める。
鶴は1人元気に声援を送った。
「こらそこー、サボらないで! さっきまであんなに喧嘩したがってたじゃないの。今日という今日は満足いくまで続けるわよ!」
いきり立つ鶴だったが、そこでコマが鶴に駆け寄る。
「鶴、さすがにそろそろいいよ。次終わったら休憩させて」
「えー、せめてあと1万回ぐらい」
「駄目駄目、魂が消えちゃうよ」
やがてわんぱくカップは閉会式を迎え、各種メダルが贈呈された。
表彰台からナメクジのように這って降りる人々だったが、そこでふと、いい匂いが漂ってくる。
全神連の勝子がメガホンを持ち、戦い疲れた人々に呼びかけた。
「さあお待ちどお、両陣営とも、よく頑張られました。ここらで腹ごしらえといたしましょう。伊勢神宮が外宮・豊受大神様より賜った霊気で作りましたので、食べればスタミナもりもりですよ!」
キツネや狛犬、サル、牛、龍。全国の神社から集まった神使がお膳を持って駆け回り、人々に料理を振る舞っていく。
「赤いお皿は西国のお料理、白いお皿は東国のお料理なんです。今度はめでたいお料理勝負、どうぞ食べ比べて御覧下さい」
勝子の説明に、避難区の人々は料理を見つめた。
海の幸、山の幸。豪華絢爛たる珍味の数々。この10年もの間、誰も見た事がないご馳走である。
人々は恐る恐る箸を動かすが、一口食べると、気力がどんどん漲ってくる。
まして現代の料理や味付けなど知らぬ源平の武者達にとっては、目ん玉が飛び出るほどの味わいであった。
彼らは子供のように喜び、酒を片手に上機嫌になる。
「いやあ、未来の料理とやらは、本当にうまい! よくぞここまで工夫したものだ!」
「そちらの子孫の料理も大したものだ!」
「いや、そっちの物も大変うまいよ!」
大人も子供も、先祖も子孫も。敵味方すら入り乱れた大宴会が、夢の空間で繰り広げられていく。
大鍋からバックホー(※ショベルカー)で芋煮がつぎわけられ、マグロの解体ショーが始まると、人々は拍手喝采して喜んだ。
わんこそば勝負では、教経と弁慶が一騎打ちをし、両者同時にぶっ倒れている。
「…………」
嵐山と船渡の両船団長は、ただ黙ってその様子を見つめていた。
遠い昔、まだこの国が人々の笑顔で溢れていた頃を……自分達が守ろうとした懐かしき世界の姿を、目に焼き付けようとしていたのかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる