新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART3 ~始まりの勇者~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

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第三章その6 ~みんな仲良く!~ ドタバタの調印式編

サドンデスと料理勝負

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 スケジュールは猛烈な勢いで進み、やがて総合得点が発表された。

「結果発表! 白組・源氏&第2船団、689点! 赤組・平家&第4船団、702点! 以上を持ちまして、赤組の勝利よ!」

 ワッと紙吹雪が舞い踊り、歓声が沸き上がった。

「MVPの発表よ。ハチマキ合戦・のりちゃん! 弓術・那須与一なすのよいちくん! ボウリング、高山さん!」

 それぞれのMVPが手を上げて祝福されているが、高山は「なんであんたが参加してんだい!」と勝子にゲンコツを食らっていた。

 教経のりつねはトロフィーを片手に源氏方を挑発する。

「ウワーハッハッハ! そらみろ、あの時はまぐれだったんだ! 本気を出せば源氏なんぞに負けるかあ!」

「ぬぐっ! くくく、くっそう……!」

 源氏武者はいきり立ち、そこで弁慶がすっと手を伸ばした。

「はいそこ、弁慶くん!」

 鶴が指名すると、弁慶はこほんと咳払せきばらいする。

「……も、もう1回……お願いできませぬかな?」

「な、何っ!? お前弁慶、見苦しいぞっ!」

 教経のりつねが叫ぶが、源氏方と第2船団から、猛烈なコールが湧き起こった。

 もう1回、もう1回、もう1回!

 鶴はしばらく目を閉じて腕組みしていたが、そこで長机をバンと叩いた。

「許可します!」

 やったああ、と歓声が上がり、横断幕は第2回わんぱくカップへと交換された。

 再び猛烈に頑張る一同をよそに、誠達は配膳作業を急ぐ。

「ほら誠君、こっちもお願いね!」

 嵐山は旅館の娘だけあって、さすがの手際の良さである。

「夢だか何だか知らないけど、ここなら私も体が動くし! こんなの久しぶりねっ」

 その後ろでは、船渡が大釜でそばを茹でている。

「俺も良く分からないけど、なんだかちょっと楽しいかな」

 船渡が言うと、なぜか料理を手伝っていた源氏武者が頷いている。

「そうそう、誰も死なぬなら、源氏も平家も関係ない。思う存分楽しめばよい」

 上機嫌な武者に対し、船渡は鍋をかき混ぜながら尋ねた。

「……は、はあ……ところであなたは?」

「まあまあ、細かい事は抜きにしよう」

 若武者は適当に流すのだが、向こうで弁慶が「御大将おんたいしょうーっ!? 御大将はいずこ!?」と叫んで探し回っていた。



「結果発表っ!」

 再び鶴が叫び、今度は白組・源氏&第2船団の勝利が告げられる。

 とたんに調子に乗って挑発する源氏、悔しがる平家。

 もう1回、もう1回!

 どこからともなく湧き上がるコールに、鶴は叫んだ!

「許可します!」

 夢の空間とはいえ気力は消耗するらしく、段々ヘロヘロになってきた両陣営は、再び競技を始めていく。

「結果発表よ!」

 とうとうへたり込む一同をよそに、鶴は採点用紙を眺めて首を傾げた。

「……あら、今回は同点だわ」

「な、何だとっ……!?」

 武者達は青ざめるが、そこで鶴は立ち上がる。

「同点だからやり直し! 全員・起立!」

「い、いや娘よ、さすがにそれは……」

 教経のりつねは冷や汗を流しながら口を挟むが、そこで会場脇の社が輝く。

 赤い回廊が見事な厳島神社であり、平家方の守り神である。

 社はギラギラと強烈な光を放っており、要するに「やれ」という事であった。

 源氏方の守り神たる八幡社も同様であり、もう源氏方も無言だった。

 双方は杖をつき、ふらふらしながら戦いを始める。

 鶴は1人元気に声援を送った。

「こらそこー、サボらないで! さっきまであんなに喧嘩したがってたじゃないの。今日という今日は満足いくまで続けるわよ!」

 いきり立つ鶴だったが、そこでコマが鶴に駆け寄る。

「鶴、さすがにそろそろいいよ。次終わったら休憩させて」

「えー、せめてあと1万回ぐらい」

「駄目駄目、魂が消えちゃうよ」

 やがてわんぱくカップは閉会式を迎え、各種メダルが贈呈された。

 表彰台からナメクジのように這って降りる人々だったが、そこでふと、いい匂いが漂ってくる。

 全神連の勝子がメガホンを持ち、戦い疲れた人々に呼びかけた。

「さあお待ちどお、両陣営とも、よく頑張られました。ここらで腹ごしらえといたしましょう。伊勢神宮が外宮・豊受大神とようけのおおかみ様よりたまわった霊気で作りましたので、食べればスタミナもりもりですよ!」

 キツネや狛犬、サル、牛、龍。全国の神社から集まった神使がお膳を持って駆け回り、人々に料理を振る舞っていく。

「赤いお皿は西国のお料理、白いお皿は東国のお料理なんです。今度はめでたいお料理勝負、どうぞ食べ比べて御覧下さい」

 勝子の説明に、避難区の人々は料理を見つめた。

 海の幸、山の幸。豪華絢爛ごうかけんらんたる珍味の数々。この10年もの間、誰も見た事がないご馳走である。

 人々は恐る恐る箸を動かすが、一口食べると、気力がどんどんみなぎってくる。

 まして現代の料理や味付けなど知らぬ源平の武者達にとっては、目ん玉が飛び出るほどの味わいであった。

 彼らは子供のように喜び、酒を片手に上機嫌になる。

「いやあ、未来の料理とやらは、本当にうまい! よくぞここまで工夫したものだ!」

「そちらの子孫の料理も大したものだ!」

「いや、そっちの物も大変うまいよ!」

 大人も子供も、先祖も子孫も。敵味方すら入り乱れた大宴会が、夢の空間で繰り広げられていく。

 大鍋からバックホー(※ショベルカー)で芋煮がつぎわけられ、マグロの解体ショーが始まると、人々は拍手喝采して喜んだ。

 わんこそば勝負では、教経のりつねと弁慶が一騎打ちをし、両者同時にぶっ倒れている。

「…………」

 嵐山と船渡の両船団長は、ただ黙ってその様子を見つめていた。

 遠い昔、まだこの国が人々の笑顔で溢れていた頃を……自分達が守ろうとした懐かしき世界の姿を、目に焼き付けようとしていたのかもしれない。
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