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第三章その6 ~みんな仲良く!~ ドタバタの調印式編
花火とキス。またの名をチッス
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「鶴、そろそろいいよ」
「ちょっと待ってコマ、あと百杯ぐらい食べたいわ」
鶴はアワビとウニが入った豪華料理・いちご煮を完食し、更におかわりしようと抵抗していたが、コマに促されて壇上に上る。鶴はそこから一同に呼びかけた。
「えー、オッホン。源平ならびに両船団の皆さん。ここで鶴ちゃんから大事な話があるの」
人々は何事かと鶴の方を見上げる。
「今日はとっても楽しかったけど、残念ながら日の本は大ピンチよ。巨大な魔王も強いけど、人間同士が争って、同盟だってうまくいかない。だから争いの手を止めて欲しいの」
人々は黙って鶴の話を聞いている。
「確かに今は、卑劣なテロが続いてるわ。でもそれは、私達を引き裂こうとする悪い奴らの仕業なの。だから騙されないで、どうかみんなで団結しましょう」
鶴はそこで、源平の武者達を見た。
「もちろん源平の先輩方も、出来れば協力して欲しいわ」
そこで平家方の猛者・教経が口を開いた。
「…………娘よ。千年もの長きに渡り争う我らを、今更説き伏せられると思うのか?」
だが鶴は首を振った。
「説き伏せるなんてとんでもない。でもあなた達なら、きっと協力してくれると思うわ」
「何故だ?」
「だってあなた達は、1人も餓霊になってないんだもの」
「………………っ!」
教経は不意を突かれたようで、反論の言葉が出てこない。
「あなた達は敵と戦い、敵を憎んでいたでしょう。邪悪な神の手先になって、罪のない子供達を襲う卑怯者なんかと、あなた達は違うわ」
教経は押し黙った。それは他の武者も同じである。
「今日はすごく面白かったし、またやればいいと思うの。魔王に勝って復興したら、何度でもやりましょう。おいしいお弁当をこさえて、ご先祖様も、現代の人達も一緒にね」
鶴がそこまで言うと、コマが鶴の肩に飛び乗った。コマは両の前足を挙げて、しゃもじと箸を掲げている。
「ちなみに今日のご馳走は、厳島の女神様のしゃもじでよそったんだよ。お箸は奈良の下市八幡様のご紹介で、境内にある杉箸神社様からなんだ。神様のご厚意だから、これを食べたら断れないよね?」
源平が「やられた」という顔で黙っていると、厳島神社、そして八幡宮が光り輝く。
そして少し遅れて、中央にある出雲大社から何かの波動が発せられた。言葉でも音でもない霊的な響き。力強い、それでいて優しい波動が、その場の人々の魂を揺さぶる。
「来たわコマ、大国主様のゴーサインよ」
鶴は悪戯っぽくそう言うと、再び一同に呼びかけた。
「ここは出雲様のご厚意で設けられた、これ以上無い縁結びの機会よ。だからこの場をお借りして、心清き両船団長、そして船団同士の縁結びをしましょう」
「………ええっ!!?」
事を見守っていた船渡・嵐山の両船団長は、いきなり話を振られて面食らった。
「えっ、縁結びですって!?」
「そんな、聞いてないよ!」
「そりゃそうよ、言ってないもの」
船団長達は慌てるが、鶴は全く取り合わない。
やがて神使達にぐいぐい引っ張られ、壇上に上る両船団長。
「こ、こんな事、いきなり言われても……」
周囲は勝手に盛り上がって、口々に声援を送り始める。
「いよっ、ご両人! お似合いだよ!」
「めでたいねえ!」
全神連がはやし立てると、神使達が跳ね回って喜ぶ。
「ええぞ、はやく結婚するんじゃい!」
「そうや、結婚しろ! ふえろー!」
『ふ、増えろ!?』
ストレートすぎる声援に2人は戸惑うが、鶴は弱った彼らに容赦なく迫った。
「さ、誓いのチッスよ。熱く激しく、いざここでファイッ!」
「そ、そんな事、そんな事っ……」
船団長2人は震える。震えながら、おそるおそる互いを見つめた。呼吸とともに口を開きかけ、何度も何かを言おうとしている。
そしてほぼ同時に、辺りは都合よく暗くなった。
神々が気遣って明かりを落としてくれたようだが、そこで沢山の花火が立て続けに輝いた。いつの間にか草原の彼方が海に変わっており、かつて瀬戸内の夏を飾った厳島の水中花火が、夢の世界を彩ったのだ。
『神様にここまでされちゃ、断れないわよね?』と言わんばかりの、厳島の女神様がたの追い込みだった。
船団長達は戸惑っていたが、やがて一歩近づいた。
「いいわ、大スプークよ……!」
鶴はカメラを抱え、真っ赤な顔で2人を見つめる。
人々も武者も拳を握り締め、固唾を呑んで見守るが、その時。
「………………?」
鶴はそこでふと虚空を見上げた。彼女の手の逆鱗は、激しい光で輝いている。
「大変だわ、あれが来るのね……!」
「あれって何が……」
誠が問うと、鶴は口元に手を当てて叫んだ。
「敵が来たわ! みんな、ここで失礼するわね!」
「ちょっと待ってコマ、あと百杯ぐらい食べたいわ」
鶴はアワビとウニが入った豪華料理・いちご煮を完食し、更におかわりしようと抵抗していたが、コマに促されて壇上に上る。鶴はそこから一同に呼びかけた。
「えー、オッホン。源平ならびに両船団の皆さん。ここで鶴ちゃんから大事な話があるの」
人々は何事かと鶴の方を見上げる。
「今日はとっても楽しかったけど、残念ながら日の本は大ピンチよ。巨大な魔王も強いけど、人間同士が争って、同盟だってうまくいかない。だから争いの手を止めて欲しいの」
人々は黙って鶴の話を聞いている。
「確かに今は、卑劣なテロが続いてるわ。でもそれは、私達を引き裂こうとする悪い奴らの仕業なの。だから騙されないで、どうかみんなで団結しましょう」
鶴はそこで、源平の武者達を見た。
「もちろん源平の先輩方も、出来れば協力して欲しいわ」
そこで平家方の猛者・教経が口を開いた。
「…………娘よ。千年もの長きに渡り争う我らを、今更説き伏せられると思うのか?」
だが鶴は首を振った。
「説き伏せるなんてとんでもない。でもあなた達なら、きっと協力してくれると思うわ」
「何故だ?」
「だってあなた達は、1人も餓霊になってないんだもの」
「………………っ!」
教経は不意を突かれたようで、反論の言葉が出てこない。
「あなた達は敵と戦い、敵を憎んでいたでしょう。邪悪な神の手先になって、罪のない子供達を襲う卑怯者なんかと、あなた達は違うわ」
教経は押し黙った。それは他の武者も同じである。
「今日はすごく面白かったし、またやればいいと思うの。魔王に勝って復興したら、何度でもやりましょう。おいしいお弁当をこさえて、ご先祖様も、現代の人達も一緒にね」
鶴がそこまで言うと、コマが鶴の肩に飛び乗った。コマは両の前足を挙げて、しゃもじと箸を掲げている。
「ちなみに今日のご馳走は、厳島の女神様のしゃもじでよそったんだよ。お箸は奈良の下市八幡様のご紹介で、境内にある杉箸神社様からなんだ。神様のご厚意だから、これを食べたら断れないよね?」
源平が「やられた」という顔で黙っていると、厳島神社、そして八幡宮が光り輝く。
そして少し遅れて、中央にある出雲大社から何かの波動が発せられた。言葉でも音でもない霊的な響き。力強い、それでいて優しい波動が、その場の人々の魂を揺さぶる。
「来たわコマ、大国主様のゴーサインよ」
鶴は悪戯っぽくそう言うと、再び一同に呼びかけた。
「ここは出雲様のご厚意で設けられた、これ以上無い縁結びの機会よ。だからこの場をお借りして、心清き両船団長、そして船団同士の縁結びをしましょう」
「………ええっ!!?」
事を見守っていた船渡・嵐山の両船団長は、いきなり話を振られて面食らった。
「えっ、縁結びですって!?」
「そんな、聞いてないよ!」
「そりゃそうよ、言ってないもの」
船団長達は慌てるが、鶴は全く取り合わない。
やがて神使達にぐいぐい引っ張られ、壇上に上る両船団長。
「こ、こんな事、いきなり言われても……」
周囲は勝手に盛り上がって、口々に声援を送り始める。
「いよっ、ご両人! お似合いだよ!」
「めでたいねえ!」
全神連がはやし立てると、神使達が跳ね回って喜ぶ。
「ええぞ、はやく結婚するんじゃい!」
「そうや、結婚しろ! ふえろー!」
『ふ、増えろ!?』
ストレートすぎる声援に2人は戸惑うが、鶴は弱った彼らに容赦なく迫った。
「さ、誓いのチッスよ。熱く激しく、いざここでファイッ!」
「そ、そんな事、そんな事っ……」
船団長2人は震える。震えながら、おそるおそる互いを見つめた。呼吸とともに口を開きかけ、何度も何かを言おうとしている。
そしてほぼ同時に、辺りは都合よく暗くなった。
神々が気遣って明かりを落としてくれたようだが、そこで沢山の花火が立て続けに輝いた。いつの間にか草原の彼方が海に変わっており、かつて瀬戸内の夏を飾った厳島の水中花火が、夢の世界を彩ったのだ。
『神様にここまでされちゃ、断れないわよね?』と言わんばかりの、厳島の女神様がたの追い込みだった。
船団長達は戸惑っていたが、やがて一歩近づいた。
「いいわ、大スプークよ……!」
鶴はカメラを抱え、真っ赤な顔で2人を見つめる。
人々も武者も拳を握り締め、固唾を呑んで見守るが、その時。
「………………?」
鶴はそこでふと虚空を見上げた。彼女の手の逆鱗は、激しい光で輝いている。
「大変だわ、あれが来るのね……!」
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誠が問うと、鶴は口元に手を当てて叫んだ。
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