24 / 30
地獄の毒々ゾンビ勇者
第2話 よみがえったらぶっとんだ
しおりを挟む遠くで誰かの声が聞こえる。
聞き覚えのない言語だ。
魔族の言葉を盗み聞きするために覚えた翻訳魔法が自動で起動する。
「ええと、これが呪文?だっさ」
おとなしい口調で喋ればきれいな声なのだろうが、その他人を常に見下したような冷酷さを感じさせる抑揚に俺はどこか反発を覚えた。
「孤立、腐食、不正な規律。永劫に理解されぬ者。ここに目覚めよ」
呪文なぞ別にどうでもいいのだ、正しい術式と術者の魔力さえあれば。だがこの術式は何かがおかしい。改変されている。
「ちょっと、さっさと目を覚ましなさいよ」
薄く眼を開ける。
ぼんやりとした視界に妙につるつるとした床(後にリノリウムと言うらしいことを知った)が目に映った。
グラム王国の建築様式とは明らかに違う、どこだここは?
「うわ、きっも。さっきまで骨と皮だったのに、まるで腐った死体じゃないの」
俺はその心底嫌そうな声を出す人物を見た。
まだ年若い、少女と言っていい年齢の女だった。
女性にしては長身、だろうか?あくまでグラム王国の基準でだが。
整った顔をしているように感じるが、グラム王国の人間にしては彫りが浅い。
肌は小麦色をしている。南方の部族の血が混じっているのか?
髪は金色だがどぎつい色でどこか不自然だ。染めている?
「さあ、私の願いをかなえなさい」
おかしい。
俺は騎士団長を振り切れないと悟って、近くの村娘の脳に使い魔の蟲を寄生させて復活の儀式を行うようにしていたはずだ。そのための魔力も分け与えていた。
もちろん目の前の女とは別人だ。
「女ぁ!?ここはどこだ。あれからどれくらいたった」
「あなた、なんでも願いをかなえてくれる精霊じゃないの?」
「?、なんの話だ」
話がかみ合わない。
「早く、真山誠二君と私が結ばれるようにしなさいよ」
(真山?誰のことだ。グラム王国の一般的な名前ではないな?本当にココはどこだ?)
「それよりココはどこだと聞いている!!」
状況に混乱した俺はその女に掴みかかった。
「キモイッ!!触らないで!!」
「がっ!!」
突然、俺の体は重力が数倍になったかのように地面に押さえつけられた。
(使い魔に対する制約かっ!?俺の体はどうなっている)
「もう一度言うわ。私の願いをかなえなさい。真山君を私の恋人にするの」
「何のことか分からん」
「チッ!!使えないわね。ご先祖様の古文書、嘘が書いてあったの?」
俺が言われて一番むかつく言葉は「使えない」だ。侮辱されたから嫌いなわけではない。他人に向かって上から目線でこんなことを言うやつはろくなやつがいないからだ。
たいがい言った本人の方が使えなくて面倒ごとだけを残して消えていく。少なくとも魔王討伐軍の中ではそうだった。
「ふんっ」
少女は俺に興味を失ったようで、踵を返して去ってゆく。
「ここは?」
俺はそこでようやく周りを見渡す余裕ができた。
そこそこの広さを持った部屋で、いろいろな物が置いてある。
どうやら倉庫のようだ。
そのどれもが俺から見たら進んだ文明で作られた道具のように見えた。
「一体どうなっているんだ?」
おれはその部屋の中央におかれた棺のようなものの中にいたようだ。棺の下の床には魔法陣が書かれていた。
「この術式は師匠か。あいつなにかしやがったのか」
師匠とは言っても親愛の情はない。自分に死霊魔術しかできないと分かった時に無理やり師事したのだ。その際、かなりえげつない条件を飲まされたので特に恩を感じてはいない。
復活の儀式を邪魔したのは十中八九師匠で間違いがないだろう。
俺は自分の手を見た。
肉が腐れはてて骨がところどころ見えている。完全な不死者(アンデッド)として蘇るはずが中途半端な生ける死体(リビングデッド)として蘇ってしまった。
おまけに目の前の小娘の使い魔にされてしまっているらしい。
キィーーーー。
そうこうしているうちに少女は倉庫の出入り口の扉を空けて出ていく。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。待ってください」
使い魔契約をさせられているならば下手に出るしかない。
主人が手順さえ知っていれば完全に消去されてしいます。
だから俺、いや、もっと丁寧な物言いをしましょう。私めは彼女の後を追って扉をでたのでございます。
扉の外は階段になっていて上へと続いています。
この階には窓が無いことや空気が澱んでいることからわたくしは地下室だと判断いたしました。
「待ってください。有芽 沙紀(ありが さき)様」
階段を登っている沙紀様が感情のこもっていない目でわたくしを見ます。
「何で名前を知っているの?」
まあ、当然の疑問でございますね。わたくしが復活してから一度も名乗っていませんものね。
失礼な方だ。
「どうやらわたくしは貴方の使い魔として契約させられているようです。主人の名前を知らない使い魔がいるでしょうか?当然契約時に脳内に刻み込まれておりますな」
「きっも。そんな契約した覚えはないわ。ご先祖様の術式を実行しただけで」
「ご先祖。なるほどなるほど。ちなみにわたくしの名前は――――――」
わたくしが名乗ろうとしたら既に沙紀様の姿は階段の出口へと消えていました。
もう少し言葉のキャッチボールをしましょうよ。
まあ、分からなくはありません。本当に嫌いな相手とは口も聞きたくはないですね。
できれば無いものとして扱いたい。そこから本当に私に興味が無いことがうかがえますな。
わたくしも沙紀様を追って階段を登りきります。
出口の扉から外に出るとこの階には窓のようなものがありました。外は真っ暗でどうやら夜中のようですな。
さて、沙紀様はどこへ行きましたかと見回すと、廊下の先に誰か男性と話をする彼女が見えました。
おやおやこんな時間に逢引きですかな?
「警備員さんっ!!あそこにキモイ奴がいるっ!!追い出して!!」
「なにっココは女子寮だぞっ!!変態か?」
おっと警備兵の類ですか。確かに制服のようなものを来ていますね。
「有芽さんは部屋に戻って!!」
人を使い魔にしといて官憲に突き出すとはひどくないですか。
とりあえずここは逃げたほうがよさそうです。
わたくしは脱兎のごとく反対側に駆け出します。
しかしすぐに建物の端へとたどり着いてしまいました。
そこには外に出る扉のような物がありましたが取っ手をひねっても開きません。鍵がかかっているようです。
わたくしはとっさに「爆裂」の魔法をつかいます。
攻撃魔法の才能が無いのであまり威力のない、魔族には傷一つ付かないレベルのものですが扉を破壊することはできたようです。
ドゴンという大音量とともにもうもうとほこりが舞います。
「あいつ、爆薬を持ち込んでいたのか!?」
後ろで警備兵の声が聞こえます。ですがその声を悠長に聞いているわけには行きません。
とっとと逃げます。
わたくしは建物のの外に出るとどこに逃げようかと周りを見渡しました。
そして、その光景に息を飲みます。
「なっっっ、ここは」
まるで城のような、そしてその巨大さにかかわらず製図機で引いたような直線で構成された箱のような建物が並んでいます。
そのような物を作ることができるのは神々だけでは無いでしょうか?
後ろを振り返るとわたくしが出てきた建物もその箱のような建物の一つでした。
地面は何か黒い人工的な物で覆われ歩きやすくなっています。一部の菜園を除いてそのほとんど土が見えないのは何かの冗談かと思います。
また道になっている両脇にはなにか高い柱が立てられその先にはカンテラでしょうか?光を放つ丸いものがついていて夜である今でも足元を気にすることなく走れます。
箱型の建物が建つ敷地の外側にはフェンスをはさんで、少し飾り気のある家が並んでいます。そちらは同じ形では無く、全体的には似通った印象を受けながらもそれぞれわずかに個性があり、何者かが住んでいる生活感のようなものが見受けられます。
グラム王国のように平行な部分などなく歪んだ建築の民家しか見たことが無かったわたくしはその地面から垂直に建つ家々を見ただけでもものすごい技術で作られていることが分かり立ち尽くしました。
「まてーーーーーー!!」
おっと、目に映る景色にしばしのあいだ追手がいる事が脳裏から吹き飛んでいたようでございます。
とりあえず眼前の事は後で考えるとしてわたくしはなるべく建物の影になるようなところを通って逃げ出しました。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について
沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。
クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる