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24・神官長は幸せになりたい
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「ダリオ君は割といいセン行ってたけど、幼馴染みの距離から一歩も抜けて来ないのを見て、アタシもヘレナも諦めたんだよねー。
彼が距離詰めて来ないのを見て、こりゃ貴族以上でなきゃ嫁ぎ先ないわと判断したし。」
…この場合ダリオは関係ないんじゃなかろうか。
なんか私の流れ弾に当たってる気がする。
うむ、かわいそうなので弁護しておこう。
「ダリオは神殿ではモテてる筈よ?
わざわざ幼馴染みの嫁き遅れなんて貰わなきゃいけないほど困ってないでしょう。」
…だが、私がそう言うと何故か父は、頭痛を堪えるように眉間に指を当てた。
「あー…ヴァーナの中ではその認識なんだ…。」
「ね?不憫でしょう、ダリオ君…。
けど、彼が動かなかった結果がこれなわけだから、同情の余地は既にないってわけよー。
多分、メルクールも同じ結論だと思うわ。」
「…他の男よりは近い距離に驕って、それが兄弟の距離だってことに気がつくのが遅れたか、変に距離を詰めることで今の立場を失うことを恐れたのか…どっちなんだろうね?」
…両親が何を言っているのかわからない。
「そんなわけだからもう王子で妥協して、女なら諦めて頂点取りに行きなさい!」
「妥協という言葉の使いどころ間違ってましてよお母様!不敬すぎるわ!!」
ついに我慢できずにつっこむと、母はケタケタ笑い出した。
何に対してかさっぱり判らないが、どうやらツボ入ったぽい。滅べ。
つか妥協して諦めた結果頂点とかどういう状況なんだ。
『おれが引き受ける。必ず正妃にする。
ゆくゆくは王妃だ。そのつもりでいてくれ。』
…思い出すと急に心臓がばくばく言いはじめた。
口付けられた指が熱をもってる気がする。
「あ、今になってちょっと意識し始めた!?
王妃になるならないは別にしても、アローン君いいオトコだもんねー♪」
「違うから!」
母が4本目のショートブレッドを摘みながら茶化してくるのに、脳が揺れるくらい首を振る。
…まあよく考えれば、動揺して反射的に『いやです』とか言ってしまったが、あれは前世含めて記憶にある限り初めての、プロポーズと言える申し出だったのではなかろうか。
うむ、断るにしても、もうちょっと堪能しておくんだった。
というか、年齢を考えるとひょっとしたら、これが最後にして最大の結婚のチャンスだったかもしれないのになんで断ったんだ、私は!
……いや、理由はわかってる。
彼が攻略対象者だからだ。
今、何故かファルコの保護者には私がなってしまっており、それは明らかにヒロインの立ち位置であるが、当然私はヒロインではない。
何かの手違いで登場が遅れているのだろうが、そのヒロインが現れたなら、今は私に興味を示していたとしても、彼らはみんなヒロインに惹かれてしまうだろう。
下手にその気になって、後からやっぱりあっちがいいと捨てられるのは御免被る。
深入りしないうちに、逃げ道は確保しておくべきだ。
…まあ、メルクールだけは家族だし、ヒロインに惹かれたところで私を見捨てたりはしないと思うけど。
私が居ないと外に探しに出てしまうくらい懐いているファルコだって、ヒロインに会ってしまえば、あっという間にそちらに夢中になるのだろうし。
今、ファルコを育てているのは私なのに、という気持ちが正直なくもないわけだが、そこは思ったところで仕方ない。
そもそもファルコの私に対する気持ちは、幼児が『大きくなったらママと結婚する』と言ってるのと変わらない。
だとしたら、いずれは必ず子離れを経験しなくてはいけないのだ。
自分で産んだこともないのに親の立場とか複雑だけど。
…神官見習いで没落貴族の娘だったマリエルが、王妃になるエンディングが実はひとつだけある。
他でもない、勇者ファルコとのトゥルーエンドだ。
帝国との戦いを経て、託宣の通り救国の勇者となったファルコは、かねてから迎え入れられていた王宮にて、正式に王の養子となる。
その披露と、戦勝の宴の夜、本来なら既に手の届かない存在となったファルコへの想いに気がついたマリエルは、神殿の生活に戻る前にせめて気持ちだけでも伝えようと彼に会いに行き(この時、他にエンディング条件を満たした対象者がいる場合は選択肢が出る)、マリエルの想いを聞いたファルコから改めて愛を告白されて、『必ず迎えに行くから、待っていて欲しい』という言葉に頷いて、2人は誓いの口づけを交わす。
──数年後、即位した勇者王ファルコの隣には、白いティアラとウェディングドレスに身を包んだマリエルが立っており、ようやく結ばれた2人が民衆の祝福を受ける場面でエンドとなる。
まあ、結局はゲームだから、ストーリーはそこで終わるけども、現実には国を治めていくなかで、この先この2人、相当苦労するんだろうなと、今の私ならば普通に思う。
それでもマリエルは、没落したとはいえ貴族の娘。
根っから平民の私とは違う。うん絶対無理だ。
王子的には命を助けてくれた恩人の娘だが、だからって一介の商人の娘が王妃とか荷が重すぎる。
ゲーム通りに進むのなら、アローンが王になる未来は、それこそ例の勇者ヤンデレエンド以外にはないわけだが、むしろそのヤンデレエンドに進んだ場合が問題過ぎる。
意中の女を勇者に奪われ、望まなかった王位を押し付けられた失意の王を、支える形で公務や政務一切を取り仕切る形だけの王妃とか、もう過労死か陰謀の果ての毒殺という未来しか見えない。
うん、私の幸せはここじゃない筈だ。
それだったらいっそ結婚は諦めて大神官になる方が、まだ平穏な人生を送れそうな気がする。
彼が距離詰めて来ないのを見て、こりゃ貴族以上でなきゃ嫁ぎ先ないわと判断したし。」
…この場合ダリオは関係ないんじゃなかろうか。
なんか私の流れ弾に当たってる気がする。
うむ、かわいそうなので弁護しておこう。
「ダリオは神殿ではモテてる筈よ?
わざわざ幼馴染みの嫁き遅れなんて貰わなきゃいけないほど困ってないでしょう。」
…だが、私がそう言うと何故か父は、頭痛を堪えるように眉間に指を当てた。
「あー…ヴァーナの中ではその認識なんだ…。」
「ね?不憫でしょう、ダリオ君…。
けど、彼が動かなかった結果がこれなわけだから、同情の余地は既にないってわけよー。
多分、メルクールも同じ結論だと思うわ。」
「…他の男よりは近い距離に驕って、それが兄弟の距離だってことに気がつくのが遅れたか、変に距離を詰めることで今の立場を失うことを恐れたのか…どっちなんだろうね?」
…両親が何を言っているのかわからない。
「そんなわけだからもう王子で妥協して、女なら諦めて頂点取りに行きなさい!」
「妥協という言葉の使いどころ間違ってましてよお母様!不敬すぎるわ!!」
ついに我慢できずにつっこむと、母はケタケタ笑い出した。
何に対してかさっぱり判らないが、どうやらツボ入ったぽい。滅べ。
つか妥協して諦めた結果頂点とかどういう状況なんだ。
『おれが引き受ける。必ず正妃にする。
ゆくゆくは王妃だ。そのつもりでいてくれ。』
…思い出すと急に心臓がばくばく言いはじめた。
口付けられた指が熱をもってる気がする。
「あ、今になってちょっと意識し始めた!?
王妃になるならないは別にしても、アローン君いいオトコだもんねー♪」
「違うから!」
母が4本目のショートブレッドを摘みながら茶化してくるのに、脳が揺れるくらい首を振る。
…まあよく考えれば、動揺して反射的に『いやです』とか言ってしまったが、あれは前世含めて記憶にある限り初めての、プロポーズと言える申し出だったのではなかろうか。
うむ、断るにしても、もうちょっと堪能しておくんだった。
というか、年齢を考えるとひょっとしたら、これが最後にして最大の結婚のチャンスだったかもしれないのになんで断ったんだ、私は!
……いや、理由はわかってる。
彼が攻略対象者だからだ。
今、何故かファルコの保護者には私がなってしまっており、それは明らかにヒロインの立ち位置であるが、当然私はヒロインではない。
何かの手違いで登場が遅れているのだろうが、そのヒロインが現れたなら、今は私に興味を示していたとしても、彼らはみんなヒロインに惹かれてしまうだろう。
下手にその気になって、後からやっぱりあっちがいいと捨てられるのは御免被る。
深入りしないうちに、逃げ道は確保しておくべきだ。
…まあ、メルクールだけは家族だし、ヒロインに惹かれたところで私を見捨てたりはしないと思うけど。
私が居ないと外に探しに出てしまうくらい懐いているファルコだって、ヒロインに会ってしまえば、あっという間にそちらに夢中になるのだろうし。
今、ファルコを育てているのは私なのに、という気持ちが正直なくもないわけだが、そこは思ったところで仕方ない。
そもそもファルコの私に対する気持ちは、幼児が『大きくなったらママと結婚する』と言ってるのと変わらない。
だとしたら、いずれは必ず子離れを経験しなくてはいけないのだ。
自分で産んだこともないのに親の立場とか複雑だけど。
…神官見習いで没落貴族の娘だったマリエルが、王妃になるエンディングが実はひとつだけある。
他でもない、勇者ファルコとのトゥルーエンドだ。
帝国との戦いを経て、託宣の通り救国の勇者となったファルコは、かねてから迎え入れられていた王宮にて、正式に王の養子となる。
その披露と、戦勝の宴の夜、本来なら既に手の届かない存在となったファルコへの想いに気がついたマリエルは、神殿の生活に戻る前にせめて気持ちだけでも伝えようと彼に会いに行き(この時、他にエンディング条件を満たした対象者がいる場合は選択肢が出る)、マリエルの想いを聞いたファルコから改めて愛を告白されて、『必ず迎えに行くから、待っていて欲しい』という言葉に頷いて、2人は誓いの口づけを交わす。
──数年後、即位した勇者王ファルコの隣には、白いティアラとウェディングドレスに身を包んだマリエルが立っており、ようやく結ばれた2人が民衆の祝福を受ける場面でエンドとなる。
まあ、結局はゲームだから、ストーリーはそこで終わるけども、現実には国を治めていくなかで、この先この2人、相当苦労するんだろうなと、今の私ならば普通に思う。
それでもマリエルは、没落したとはいえ貴族の娘。
根っから平民の私とは違う。うん絶対無理だ。
王子的には命を助けてくれた恩人の娘だが、だからって一介の商人の娘が王妃とか荷が重すぎる。
ゲーム通りに進むのなら、アローンが王になる未来は、それこそ例の勇者ヤンデレエンド以外にはないわけだが、むしろそのヤンデレエンドに進んだ場合が問題過ぎる。
意中の女を勇者に奪われ、望まなかった王位を押し付けられた失意の王を、支える形で公務や政務一切を取り仕切る形だけの王妃とか、もう過労死か陰謀の果ての毒殺という未来しか見えない。
うん、私の幸せはここじゃない筈だ。
それだったらいっそ結婚は諦めて大神官になる方が、まだ平穏な人生を送れそうな気がする。
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