2 / 20
2.そして牛乳配達へ
しおりを挟む
何とか動けるようになってからまず最初にしたのは村の薪割り場の人に頭を下げる事だった。斧をかついだガタイの良いおやっさんは事情を説明すると2つ返事で快く余った材木を分けてくれた。それを担いでえっさほいさと居候させて頂いている家に戻る。
「ミルさーーん、屋根の修理出来そうな物もらってきました!」
「あら、ひじたかさん、おかえりなさい。お昼ご飯出来ていますよ」
笑顔で出迎えてくれた彼女はミルティシェラートさん。住居を破壊したどこの馬の骨とも知れぬ僕みたいなやさ男を怪我が治るまで介抱してくれた上に、無一文で宿無しなのを知ると何の疑いもなく居候させてくれるという、控えめに言っても天使な女性だ。ちなみに全治一か月以上はかかるかと思われた怪我は、彼女が刻んだ薬草の汁を全身に塗ってくれたおかげか10日ほどでそれなりに動けるくらいに回復した。
「あの、その、材料が少なくて今日もいつものシチューなのですが・・・」
どことなく恥ずかしそうに自分の豊満過ぎる胸を抱えてミルティさんが言葉を濁す。
「ああ、いえいえ、とんでもない。前にも言いましたがこんなご馳走は今まで食べた事がありません」
偽りなく本心からの言葉だ。シチューにパン、それに家庭菜園で取れた葉物の野菜とトマトらしきもののサラダが食卓に並ぶ。正直いうとパンは自分のいた世界の物よりモソモソしているし、野菜も野性味の強い味わいだが、ミルティさんお手製のキノコのシチューは絶品だった。
最初に食べる時に説明されたのだが、このシチューに使われているのは牛の乳でもヤギの乳でもない100%ミルティさん由来のものである。というのも彼女は見た感じ人だが種族は異なるらしい。獣の特性を持った人種といったところか。一対の角と大きな胸部が特徴の乳牛のケモヒトだと本人が言っていた。
「ご馳走様でした」
「お粗末様でした」
美味しいご飯を頂いたらさっそく屋根に上がる。いつまでも命の恩人の自宅の天井を穴開き状態にしている訳には行かない。
「大丈夫ですかー?」
「はい、大丈夫ですよー」
担いだ材木を開いた穴にあてがう、ミルティさんに借りた金槌と釘でそれを固定、しかしもらった材木では穴を完全に塞ぐには足りなかった。どうしよう、困ったな。そのまま居ても仕方ないのでひとまず屋根から降りる。
「どうですか?」
「材木が足りないようです、村を周って使えそうな物がないかちょっと見てきますね」
とは言ったものの、さっきの薪割り場でもらえる材木はあれで全部だった。屋根の修理に使えそうで何か変わりとなるものは何だろう。考えながらトボトボ歩いているとちょうど通りかかった牛小屋が目に留まる。思わずミルティさんの事を連想しかけるが、その前に閃くものが頭にあった。
牛小屋の主人に事情を説明して頭を下げる。彼もまた2つ返事で快く素材を提供してくれた。基本的にこの村の住民はみんな気が優しいのかもしれない。
「ミルさん、ただいま戻りましたー・・・」
「っ、きゃあ!?」
玄関を開けたらすごい光景が目に飛び込んできた。ミルティさんがテーブルに置いた容器に向けて、半分脱いだ衣服から露わにした自らの乳房を絞っている最中だった。
「ごごご、ごめんなさいっ!!」
慌ててドアを閉めた。
これはさすがにやってしまったか、とにかく謝ろう。謝って済めばいいが。最悪怒って追い出された場合はいよいよ野宿か。その場合であっても何とか屋根だけは直して去ろうと固く心に誓ったところで
「も、もう少しで終わりますので、しばらく待っていて下さい…」
中から消え入りそうな声が聴こえてきた。
「すみません……、こんなに早く帰ってくるとは思わなくて」
「いえそんなっ、こちらこそ配慮が足らずに申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げた。女性の自宅にノックもなしに入るのはさすがに無遠慮過ぎたなと猛省する。
「そ、そんな。気にしてないので頭を上げて下さい」
赤くなった顔から気にしてないのは嘘だと分かるが怒っている様子はない。やはり天使か。
「それより何か見つかったんですか」
「はい、これを」
牛小屋で頂いた藁を見せてから再び屋根に上がる。先ほど板を打ったところに藁を敷き、糸で巻き付けて留めた。超大雑把だけれどとりあえず応急処置としてはこれくらいだろう。ある程度は雨風を凌いでくれる・・・はず。
「終わりました。本当にすみませんがしばらくはこれで我慢して下さい」
「いいんですよ、お疲れ様でした」
室内に戻ると淹れてくれたお茶を飲んで一息つく。下から天井を見上げると一応、穴は塞がっていた、一応は。
「その、いつかちゃんと直しますので、今は手持ちが……」
「はい、分かっていますよ、ふふ」
微笑ましく笑われてしまった。甲斐性がなくて申し訳ない限りです。改めて女性の一宅に居候している身を情けなく思う。
「あのっ、どこか働ける所はないんでしょうか!」
「そうですね…、作物の収穫もまだな時期ですし、この村では余りお仕事は…」
「そ、そうですかー…」
返せる当てがないのがどうにもやるせない。
「あっ、あの、それじゃあ…」
露骨に元気がなくなった僕を心配してかミルティさんが何かを言おうと言葉を区切った。ただ飯食らいほど居心地の悪い物はない。彼女の役に立てるならとりあえずは何でもやる気でいた。
「町に行って、私のミルクを売って頂けませんか?」
「ミルさーーん、屋根の修理出来そうな物もらってきました!」
「あら、ひじたかさん、おかえりなさい。お昼ご飯出来ていますよ」
笑顔で出迎えてくれた彼女はミルティシェラートさん。住居を破壊したどこの馬の骨とも知れぬ僕みたいなやさ男を怪我が治るまで介抱してくれた上に、無一文で宿無しなのを知ると何の疑いもなく居候させてくれるという、控えめに言っても天使な女性だ。ちなみに全治一か月以上はかかるかと思われた怪我は、彼女が刻んだ薬草の汁を全身に塗ってくれたおかげか10日ほどでそれなりに動けるくらいに回復した。
「あの、その、材料が少なくて今日もいつものシチューなのですが・・・」
どことなく恥ずかしそうに自分の豊満過ぎる胸を抱えてミルティさんが言葉を濁す。
「ああ、いえいえ、とんでもない。前にも言いましたがこんなご馳走は今まで食べた事がありません」
偽りなく本心からの言葉だ。シチューにパン、それに家庭菜園で取れた葉物の野菜とトマトらしきもののサラダが食卓に並ぶ。正直いうとパンは自分のいた世界の物よりモソモソしているし、野菜も野性味の強い味わいだが、ミルティさんお手製のキノコのシチューは絶品だった。
最初に食べる時に説明されたのだが、このシチューに使われているのは牛の乳でもヤギの乳でもない100%ミルティさん由来のものである。というのも彼女は見た感じ人だが種族は異なるらしい。獣の特性を持った人種といったところか。一対の角と大きな胸部が特徴の乳牛のケモヒトだと本人が言っていた。
「ご馳走様でした」
「お粗末様でした」
美味しいご飯を頂いたらさっそく屋根に上がる。いつまでも命の恩人の自宅の天井を穴開き状態にしている訳には行かない。
「大丈夫ですかー?」
「はい、大丈夫ですよー」
担いだ材木を開いた穴にあてがう、ミルティさんに借りた金槌と釘でそれを固定、しかしもらった材木では穴を完全に塞ぐには足りなかった。どうしよう、困ったな。そのまま居ても仕方ないのでひとまず屋根から降りる。
「どうですか?」
「材木が足りないようです、村を周って使えそうな物がないかちょっと見てきますね」
とは言ったものの、さっきの薪割り場でもらえる材木はあれで全部だった。屋根の修理に使えそうで何か変わりとなるものは何だろう。考えながらトボトボ歩いているとちょうど通りかかった牛小屋が目に留まる。思わずミルティさんの事を連想しかけるが、その前に閃くものが頭にあった。
牛小屋の主人に事情を説明して頭を下げる。彼もまた2つ返事で快く素材を提供してくれた。基本的にこの村の住民はみんな気が優しいのかもしれない。
「ミルさん、ただいま戻りましたー・・・」
「っ、きゃあ!?」
玄関を開けたらすごい光景が目に飛び込んできた。ミルティさんがテーブルに置いた容器に向けて、半分脱いだ衣服から露わにした自らの乳房を絞っている最中だった。
「ごごご、ごめんなさいっ!!」
慌ててドアを閉めた。
これはさすがにやってしまったか、とにかく謝ろう。謝って済めばいいが。最悪怒って追い出された場合はいよいよ野宿か。その場合であっても何とか屋根だけは直して去ろうと固く心に誓ったところで
「も、もう少しで終わりますので、しばらく待っていて下さい…」
中から消え入りそうな声が聴こえてきた。
「すみません……、こんなに早く帰ってくるとは思わなくて」
「いえそんなっ、こちらこそ配慮が足らずに申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げた。女性の自宅にノックもなしに入るのはさすがに無遠慮過ぎたなと猛省する。
「そ、そんな。気にしてないので頭を上げて下さい」
赤くなった顔から気にしてないのは嘘だと分かるが怒っている様子はない。やはり天使か。
「それより何か見つかったんですか」
「はい、これを」
牛小屋で頂いた藁を見せてから再び屋根に上がる。先ほど板を打ったところに藁を敷き、糸で巻き付けて留めた。超大雑把だけれどとりあえず応急処置としてはこれくらいだろう。ある程度は雨風を凌いでくれる・・・はず。
「終わりました。本当にすみませんがしばらくはこれで我慢して下さい」
「いいんですよ、お疲れ様でした」
室内に戻ると淹れてくれたお茶を飲んで一息つく。下から天井を見上げると一応、穴は塞がっていた、一応は。
「その、いつかちゃんと直しますので、今は手持ちが……」
「はい、分かっていますよ、ふふ」
微笑ましく笑われてしまった。甲斐性がなくて申し訳ない限りです。改めて女性の一宅に居候している身を情けなく思う。
「あのっ、どこか働ける所はないんでしょうか!」
「そうですね…、作物の収穫もまだな時期ですし、この村では余りお仕事は…」
「そ、そうですかー…」
返せる当てがないのがどうにもやるせない。
「あっ、あの、それじゃあ…」
露骨に元気がなくなった僕を心配してかミルティさんが何かを言おうと言葉を区切った。ただ飯食らいほど居心地の悪い物はない。彼女の役に立てるならとりあえずは何でもやる気でいた。
「町に行って、私のミルクを売って頂けませんか?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる