異世界で牛乳配達とかして生きる。

アルファポリスにゃんこ

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14.武器調達

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「わぁぁっ、大きいっ!」
 テーブルにでんと置かれた黒紫の巨大な卵を見てミルティさんが歓声をあげた。
「なんですか? なんですかこの卵?」
「ダンジョンで採れた卵だそうです、こんな色ですが食用だそうで」
「まあ、食べれるのですか、でもこんな大きなものどうしましょう……」
 見知らぬ卵を前にミルティさんがうんうんと考え込む。傍目にも瞳がきらりとしているのが分かる。ダンジョン産という事でひかれるかもと心配していたが、むしろ予想以上にウケている。
「ひじたかさんは目玉焼きとオムレツどっちが食べたいですか?」
「この大きさの目玉焼きとなるとかなり豪快そうですが、どっちかと聞かれるとミルティさんのオムレツが食べてみたいです」
「分かりました、腕によりをかけますね!」
 握りこぶしを作ってグッと気合いをアピールするミルティさん。勢いで大きなお乳が少し揺れた。これは今晩の夕食が楽しみだな。
「もう一つお土産があるんですよ」
 カバンから1つのビンを取り出す。
「こっ、これ…!」
 町を歩いて見つけた店で買ったものだ。中には数種類のクッキーが入ってある。
「いいんですか?」
「もちろん。日頃のお礼です」
 クッキーアソートの瓶を手にキラキラ瞳を輝かせているミルティさん。村には菓子屋などはないし甘味は珍しいのかもしれない。
「ありがとうございます、ひじたかさん!」
 瓶を抱きしめる彼女の笑顔を見て、買って本当に良かったと思うのだった。

 昼食の後、僕は村の鍛冶屋を訪れていた。ここでは農作業に使う農具、包丁といった日常で使う刃物などが幅広く取り扱われているらしい。
「よう、お前さんがここに来るとはな。ミルさんとはどうだ? 上手くやれてるのか」
「はい、相変わらずお世話になりっぱなしですが」
 鍛冶屋のオヤジさんは鍬用の鉄を打っている所だった。邪魔にならないようにしばらく見守る。
「よし、済んだぞ。待たせてすまないな、今日は何の用だ」
「実は武器になるような物が欲しくて」
「武器? おいおい、何か物騒な事を考えてるんじゃないだろうな」
「いえ、単に近くの森の魔物への対抗手段が欲しいだけです」
 それを聞いてオヤジさんはうーむと唸る。
「森かー、森ねぇ…最近では狩人の数も減ったし出来れば立ち入らない方がいいんだが」
「キノコや薬草を採るためです。危険だと聞いている奥の方には立ち入りません」
「まあ仕方ないか……。すまんね、本来なら村の若い者が狩人となって森の安全を確保してるんだがな。オオカミが出たんだって? ミルさんは大丈夫だったか?」
「はい、怖がってましたが……。オヤジさん、ミルさんは前に――」
「そこまでにしてくれ。お前さんはあの子のことを心配しているだけかもしれないが、それでも別に知らんでも良い事はある。今のあの子のままでお前さんには何か不満があるのかい」
 ミルティさんが前にオオカミに襲われたらしいことはどうやら村の者は知っているようだ。そしてその事には触れられたくはなさそうだった。
「いえ……すみません、出過ぎた事を」
「いいや、詮索をやめてくれてありがとうよ。……武器だったな、一応こういうのがあるが」
 オヤジさんがカウンターに並べてくれたものは鉄の剣、弓、鉄の斧。
 剣を手に取ってみる。ぐお、重い。今まで振り回していた木の棒とは比べ物にならない。
 軽く素振りをしてみる。
「……何と言うか、かなり様になってないな」
「ですよねー……」
 我ながら振りが遅すぎる。これであの素早い獣を相手に戦えるかというとだいぶ微妙な所だった。
 次に弓を手に取る。
「お前さん、弓を使えるのか?」
 僕は手に取った弓をそっと置いた。さあ次は斧だ。
「ふおおおっ…」
 あっ、これ剣より断然重い。柄が長く、先端に刃の付いたタイプの斧で、薪割り場で使ってるものと比べるとかなり大振りだ。
「ダメそうだな」
「うー…もっと扱いやすそうなのはありませんか?」
「そうさね、すぐに出せるのはもうこれくらいしかないな」
 新しく並べられたのはシンプルな作りの小振りなナイフだった。リーチは心許ないが、当たれば木の棒よりは殺傷能力が高そうだ。
「これにします、お代は」
「それぐらいタダで構わんよ。ただ魔物相手にはちと厳しい、くれぐれも過信はするなよ。あくまでお前さんの身の安全の為に渡すのであって危険に飛び込ませる為ではないからな」
「わかってますよ、ありがとうございますオヤジさん」
 皮製の鞘もセットで渡してくれた。ナイフは革紐で腰のベルトに結び付けておくことにした。
「そういえば余り村に若い方がいませんね」
 さっきの会話を思い出し、話を振ってみる。狩人不足なんだったか。この村で若い男は余り見かけない気がする。
「そうさ、情けない話だがほとんどみんな町に行っちまってな」
「町ですか?」
「ああ、近くの町の傍にダンジョンが出現したのは知ってるか? 昔ながらの農村での暮らしより、冒険者になって一山当ててやろうってのが多くてな。若い奴にはここの暮らしは刺激がなくて退屈だったんだろう」
「冒険者って危険なんじゃ…」
「魔物の巣に飛び込んで行くようなものだからそりゃ危険さ。だがな、普段のここでの暮らしでは数か月かかるような額をたった1日で稼げたりもするらしい。若い奴ほど目先の利益に飛びつきたがるのさ」
「そうだったんですか」
「お前さんも無茶だけはするんじゃないぞ」
 何とも言えず、笑顔で誤魔化した。ここでの牧歌的な暮らしは正直、嫌いではない。あっちで独りでやっていた時の味気なさに比べると、居候ながらもミルティさんとの生活は僕という人間に欠けていたものを満たしてくれるかのようだった。ただ僕自身、ダンジョンに向かいたがる彼らの気持ちも分かるのだ。
 すでに向こうの全てを捨てて、こちらに来た僕なのだから。
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