龍神の巫女。

月城 瑠衣

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1話。

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いつからだろう。
この納屋に閉じ込められてからもうずっと前の事のように思う。
自分の名前さえ忘れてしまった。

納屋と言ってもベットも勉強机もある。
食べるテーブルもソファーもあって居心地が悪い訳では無い。
高い位置に窓があるが届かないようになってる。
そこから毎日朝光が入ってくる。

あたしは今6才。
年齢しか分からない。
怖いおばさんが居てそのおばさんがあたしを名前で呼ばないからなのか何かの衝動でなのかよく分からない。

名前以外にもあたしの質問には絶対に答えてくれない。
暴力はないけどあんまり喋らないし口が悪い。

あたしはいつか助けが来ると信じてる。

「ほら食事だよ。」

朝はだいたいお粥と味噌汁だけ。
「さっさと食べるんだよ。」
いつも急かしてくる。
「はい。」とあたしは返事をし「いただきます。」と言う。

するとおばさんは踵を返して出ていく。
もう何年こんな状態なんだろうか?
トイレとお風呂は許されてるけど外に出ようとすると怒られた。
だからあたしは納屋から出るのをやめた。

昼も夜もない納屋の中それがあたしの世界。

昼食も「ほら。昼食だ。」とおばさんは言いながら持ってくる。
昼食はご飯と野菜炒め。
あたしが「いただきます。」と言い食べ始めるとおばさんは納屋から出ていく。

夕食もメニューは違えど同じ。
これがあたしの毎日のルーティン。

あたしがしている事と言えば絵を描いたり本を読んだりして過ごしている。

この納屋に来てからおばさんが1から字を教えてくれた。

だから本も読む事が出来る。

それでも外に出たくなったら頭の中で(あたしは鳥かごの中の鳥だ。この鳥籠の中でしか生きていけない。)と自分に言い聞かせる。
じゃないとまるで廃人になった気になっておかしくなりそうだから。

たまに死ぬまでずっとここに閉じ込められたままかもしれないと思い始めてるあたしがいる。

それに事情があってあたしはここに居るんじゃないかと最近は思うようになっている。

小さい時の記憶は赤いだけのどこかからここに来た。
それが何だったのかまでは分からない。
それに最近よく周りが赤くて誰かに抱っこされて逃げる怖い夢を見る。
起きたら決まって汗をかいている。
なぜだか分からない。

幼い時の記憶がほとんどないのだ。

だとしたらあたしがここに来たのは2才か3才の頃だと思う。

あたしは一体いつまで納屋に閉じ込められたままなのだろう。
段々と希望が薄れてきて絶望に変わっていった。

この納屋の中の生活がいつまで続くか今は不安でしかない。


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