ハンカチーフから始まる恋

月城 雫

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10話

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寒かった冬が過ぎ温かい春になっていた。
あたしは海君と手を繋いで、春になった事を楽しんでいた。
上を見上げれば桜が咲いているし、他の木々も青々として、生き物みんなが暖かくなった事を喜んでいるようだった。
あたしはその光景を海君と見れた事も嬉しかった。

ジムに着くとあたしは制服であるジャージに着替えて、受付に座って仕事を始めた。
今日は予約も多くて、時間の割り振りに追われた。
海君のオーナー兼トレーナーを務めるジムは今は面積も大きくなってトレーナーも10人になっていた。
そして、来るお客さんも増えて、時間管理も前より大変になった。
その分、お給料も増えたけどあたしはお給料よりお客さんを大事にしてるこのジムが好きで働いている。
海君とも一緒と言うのもあるけど。
このジムのお客さんはとにかく明るい方が多い。
ただの受付のあたしにもみんな優しくて、とっていい職場環境で働けているのあたしはとても恵まれてると思う。
時間管理の仕事が1弾楽したのはお昼過ぎだった。

そこへ海君が来て、「今日仕事が終わったら話があるから。」
と意味深に言ってきた。
あたしはもしかしてクビなのかもと思い、「はい。」と言った。
言われた時からあたしは沈んでしまって、みんなに心配掛けてしまっていつもならすぐ出来る事も思うように進まなかった。

そして、仕事も終わってもお昼に海君に言われた事が気になって気持ちは重たかった。
海君も仕事を終え、あたしのとこに来て、「さっ帰ろう。」といいあたし達は家に帰った。
朝とは打って変わって、帰り道は重苦しかった。
いつもなら笑顔で話してくる海君も1言も喋らなかった。

家に帰り着いた海君はあたしがあげたスエットを来て、「春ちゃんここに来て。」と真面目な顔で言うからあたしは緊張しつつ「はい。」といい海君に言われた椅子に座った。
すると海君はおもむろにスエットのポケットから箱を出して、「春ちゃん、いや、永峰春さんもし良かったらこの僕と結婚してもらえませんか?」と言われ、あたしはびっくりした。
だからあたしは海君に「これは夢?現実?」と聞き返してしまった。
海君は「現実だよ。」とあたしのほっぺをつまんで「ね‼」と笑顔で言った。
あたしは泣きながら「はい、これからも宜しくお願いします。」と言うのが精一杯だった。
そして、海君はあたしの左手をそっと取り、薬指に指輪をはめてくれた。

その時、あたしは何があってもこの人に付いて行こうと心に決めた。

後で聞いた話なんだけど海君はこの日1日プロポーズの事で頭がいっぱいだったとか。
だから表情が硬かったんだと分かってちょっと笑っちゃった。

この先もずっと海君と一緒に居れる幸せを噛み締めて行こう。
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