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9話

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家に帰り着いたあたしは海君に気付かれないように、急いでクローゼットに隠してある物を取りに行った。
そして、海君に「あたしにはあんなに豪華な事は出来ないけどこれ…」と海君のために買ったプレゼントを渡した。
海君は目を丸くして、固まっていた。
あたしは(やっぱり…あたしがあげる物なんていらないのかな?)と思っていると、海君が突然「嬉しい ありがとう。中見ていい?」と聞いてきたので「ど ど どうぞ。」と笑顔で答えた。
中身を見て海君は嬉しそうにあたしのあげたプレゼントを抱きしめている。
あたしのあげたのは疲れが取れると言う枕と着てるだけでリラックス出来るというスエット。

海君はさっそく「このスエット着てもいい?」と聞くので「いいよ。海君に似合うと思ってかったの。着て見せて。」と笑顔で答えた。
海君は即 脱衣所に行き、着替えて来て、あたしに「似合うかな?」と笑顔で聞いてきた。
あたしが「うん。やっぱり似合う。」と答えると嬉しそうに「ありがとう。」とあたしを抱きしめてくれた。
あたしは、その腕が嬉しくてたまらなかった。

海君は思い出した様にあたしを離すと「あっそうだった。僕も渡したいものがあるんだった。春ちゃんこれ。開けてみて。」とあたしの前にさっき持ってたいっぱいの紙袋を持ってきた。
あたしは「うん。」と言って開けて行った。
その紙袋の中身はあたしが昼間老舗の店で着た服が5着分入っていた。
あたしは服と海君を交互に見て「どうして?これ、昼着た服…」
海君は「着ながら欲しいなぁ~って思ってたでしょ?しかも似合ってたから春ちゃんが見てない時に買ったんだ。家の中でも着て欲しいしその服を着た春ちゃんと出掛けたい。」
あたしは嬉しくなって「ありがとう」と言いながら泣いてしまった。
海君は「いいよ。おいで。」とハグしてくれた。
あたしは海君の腕の中で泣けるだけ泣いた。
そして、泣き止むと海君は「さぁ今日はもう寝よう。」
と促され寝る事にした。

本当に今日1日は充実した記念日になった。

次の日の朝、起きたら海君があたしを見てニコリとし、「おはよ 春ちゃん。」と笑いかけて「さて、春ちゃんも起きたことだし、コーヒー入れて一緒に飲もうか。」と海君に促され一緒にキッチンへ。
海君の家に来た時から毎朝この時間が大好きになった。
海君は昨日あたしがあげたスエットを着てくれている。
しかも、気に入ってくれてるみたいであたしは嬉しかった。
朝から「この服は手洗いしようかな?」とか言ってる。
それを聞いたあたしは「普通に洗濯機で洗えるから。」と笑いながら言ったら真面目に「う~ん…」とまだ悩んで居る。
あたしはその光景を見て可愛いと思ってしまって微笑ましくて笑ってしまった。
あたしの笑った顔を見た海君もいつの間にか笑っていた。

こういう日常がずっと続けばいいと思いながらあたしは海君と手を繋いでジムに向かうのだった。
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