私は今生きている。

紫蘭

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私は今生きている。

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何のやる気も起きない日がある。
それも結構頻繁に。
特別、何か嫌なことがある訳では無い。
雨が降っているとか、身体の調子が悪いとかでも無い。
ただ、何もしたくない。それだけ。
そんな時でもいつもと同じように世界は回る。
夕季は動きたくないと主張を続ける身体にムチを打ってベッドから起き上がった。
今日はもうメイクも髪もサボってしまおう。
どうせこんな日にしっかりメイクをしようとしてもアイラインが上手く引けないとか、そんなことでよりテンションが下がるのだ。
粗だけ隠して、ゴムで適当に髪を束ねると、夕季は家を出た。

中々身体が動いてくれなかったせいでいつもよりギリギリだ。朝ごはんは途中でゼリー飲料でも買おうと決めて、夕季は駅までの道のりを駆けた。

勤務開始5分前に滑り込んだオフィスは閑散としていた。どうやら今日は皆それぞれ忙しく、オフィスで作業する人は少数のようだ。
私も外に出ればこの沈みきったテンションも少しはマシになるのかもしれないが、生憎と今日は事務作業のみだ。
少しでも気分を上げるために夕季はイヤホンとスマホを取り出した。
音楽のサブスクサイトを開き、あなたへのおすすめの欄から適当に良さげな曲を物色する。
目に泊まったのは名前だけは聞いたことのあるミュージシャン。
どうやら表示されている曲は彼の最新曲のようだ。
イヤホンをつけて、再生ボタンを押す。
流れてきたのはピアノから始まるどこか悲しげな曲。そこにドラムが加わり次第にアップテンポになっていく。
それは人生について、生きることについて、叫ぶようにして歌った曲だった。
衝撃だった。
ガンっと心が揺さぶられた。
それはモノクロの世界を突如として切り裂いた雷だった。

あぁ、私は今まで生きていなかったんだ。
代わり映えしない日々の中で、ただ息をしているだけ。特に楽しみなことも無く、日々をこなしているだけ。
この人の音楽が生で聴きたいと思った。
検索をかけると丁度昨日、ワンマンライブの申し込みが始まったところだった。
ライブなんて行ったこともない。
彼のことだって、他の曲だって、ほとんど知らない。
ても、この衝撃を生で味わいたい。

夕季は申し込みボタンを押した。
ライブは約2ヶ月後。
夕季の心はいつぶりか踊っていた。私は今生きている。
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