最近流行りの異世界に来ました。

異世界転生は突然に

俵 竜司は呆然と立ち尽くしている。
目の前に広がる森。ギャアギャアと鳴く不気味な声に薄暗い景色、決して安全とは言えない状況で彼はこうなった原因に想いを馳せる。














「間違えた？」

「はい。」

目の前に立つ光のシルエットが申し訳なさそうにペコペコ頭を下げている。
死後の世界とでも言うべきか、その場所は真っ白で辺りには何も無い。
目の前の存在は頻りに俵に頭を下げてぼそぼそと事の成り行きを説明していた。

「実は、其方の神との交換条件と合致した魂が2人分ありまして…違う方が別の方法で此方に召喚されまして…しかも私の召喚と同時に…。」

「はぁ。」

要領を得なかったが纏めるとこうだ。
地球とフィデアリルの神の間で交換条件に合う魂の交換が行われており、見事に俵ともう1人の魂が合致した。
それでもう1人を呼び出そうとして召喚しようとしたらフィデアリルの世界で召喚儀式が同時に行われ、彼方にもう1人の魂が喚ばれ、此方に俵が呼び出されたのである。
しかも此方に来てしまうと向こうに返す事が出来ないそうで、お詫びとして地球の神からギフトを、フィデアリルの神からは最低限生きる為に必要な能力と言語能力を付与すると。
早い話が示談の相談であった。

「あ、これ地球の神からのギフトです。」

「はぁ、どうも…」

渡されたのは鞄、一緒に渡された説明書には地球の食料品や日用品、調理器具セットが入っていると書かれている。

「私からは此方を…」

光のシルエットが手をかざすと俵の身体が僅かに発光する。そして手の中にレシピ本と書かれた本が握らされていた。

「直ぐに死なれては困るのである程度の身体能力と言語機能を追加しました。」

そう言うと光のシルエットは再び頭を下げて口早に捲したてる。

「もう間も無く此方の世界に降り立ちます。それからは貴方が自由に行動してください。今回は、誠に申し訳ありませんでした。」

そう言い終わると同時に謎の空間からひび割れる音と共に崩壊した。





















思い出して俵はようやっと理解した。

「異世界って何！？」

俵 竜司  23歳
怒涛の展開に着いて行けずに今やっと置かれた状況を理解したのであった。