シャウには抗えない

神栖 蒼華

文字の大きさ
1 / 67
第1章

 1 初めは舐めただけ

しおりを挟む

(はぁー)

(めんどくさい)

魔物に襲われて、どうにかこうにか勝てて後は帰るだけ、そう疲れたから早く帰りたいのに帰れない事が起きた。
ちらりと座り込むラオスに視線を向ける。

(置いていきたい……でも、まあ魔物を倒すのを頑張ってくれたのだから歩いて帰れるくらいには回復させてやらないと)

シャウはやることを決めると早速行動に移した。
ラオスの前に跪き、肩に手を乗せ、舌でラオスの唇を舐める。

「……んっ…」

本当は舌同士をくっつけた方が早く魔力を分け与えることが出来るのだが、ラオスが舌を出さないのだから仕方ない。
前に父さんに連れられて行った狩り場で、父さんが魔力切れを起こしたとき同行していた母さんがしていたのだ。
家に帰る時にあれは何をしていたのかを聞くと、母さんは恥ずかしそうにしながら自分の魔力を分け与えていたのだと教えてくれた。魔力譲渡は苦手だからこういうやり方しか出来ないのよと苦笑していた。
シャウも初めての魔力譲渡なため、他のやり方を知らないともいうが、母さんがしていた通りに実行してみた。

「………ん」

遅々として進まない魔力譲渡にイラつきを感じ、ラオスを睨みつけると、ラオスは目を見開いて固まっていた。

「…ッ、ぷっ」

その顔が今まで見たことの無い間抜けな顔だったため、笑いが堪えきれなかった。
シャウの笑い声に反応したのか、首元から徐々に赤くなっていっている。
そして口をパクパクさせ始めたのにも笑いが込み上げてくる。

「シャウ…?」

困惑したまま、僕の名を呼ぶ声に

「そのままで……んっ」

開いた口めがけて自分の舌を入れ込む。
奥に引っ込んでいたラオスの舌を絡め取り、魔力を流し込んでいく。
先程よりはスムーズに流れる魔力にどの位まで渡せば、歩けるようにまで回復するのだろう?と考えていると、突然ラオスの舌が動き始めた。

「ぅん?!」

ラオスの舌がうねり、シャウの舌を舐めたり吸ったり、それから口の中全部を舐め回すかのようにされて、驚いて離れようとしたのに、いつの間にか後頭部に回された手で押さえつけられ口も離せず、体だけでもと思ったのに、こちらもいつの間にか腰に腕が回されていた。

「んんん!」

離せと言葉にならない音を出しながらも懸命に腕に力を入れて離れようとしても、ラオスはびくともしない。

「…っ……」

息継ぎも出来ずに続けられる行為に、シャウは酸欠のために頭がクラクラしてきた。
自分の体から力が抜けてラオスにもたれかかると、ようやくラオスが拘束していた力を緩め口を離す。
シャウを見る目が何故かギラギラして見えるのは気のせいか。唇についた何かを舐める舌にぞくりとしたものを感じる。

「……あ」

何を言おうとしたのかもわからず、声がもれる。

「かわいい」

うっとりと熱を宿した目でみつめられ、ラオスの目から目を離せなくなった。
そしてまた近づいてくる唇を見つめることしかできない。

「んっ……あっ…」

唇が合わさり、また舌を絡められ、吸われ、腰にぞくりとしたものが駆け巡る。
自分の体に走る感覚が何なのかわからず、それについて考えたいのにわからない感覚に思考が乱される。

「…シャウ」

耳元で囁かれ、また舌を絡められながら、ラオスの手が腰の辺りを触れてくる。
ラオスの手が触れた辺りからザワザワとした感覚がする。

「…ぃや」

自分の声とは思えない小さな弱々しい言葉が漏れる。



ガッッッ!!


「ッ…」

目の前からラオスがいなくなるとともに、誰かの腕の中に包まれた。
見上げると、イラザが険しい顔をしてラオスを睨みつけていた。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

処理中です...