シャウには抗えない

神栖 蒼華

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第1章

43 ラオスとイラザの治療

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「ラオス、イラザ、待たせてごめんね」

ルティスの治療を母さんが代わってくれたので、やっとラオスとイラザの治療ができることにシャウは安堵していた。
ずっと気になりながらルティスの治療をしていたのだ。ルティスや父さんの呪いが広範囲だった為どうしても優先順位は2人が先にするしかなかったけれど、足の呪いがどれだけ広がってしまうのかシャウは気が気じゃなかった。

「辛かったよね? すぐに治すからね」

ラオスとイラザの代わりに父さんが見張り役を交代してくれた。

近づいてきた2人の顔は足の痛みからなのか不機嫌そうだった。
パッと見で呪いがそこまで広がっていなかったことにホッとして、より呪いの範囲の広いラオスから治療することにした。

「先にラオスを治した方がいいよね」
「そうですね。ラオスの方が呪いが広いですから」

イラザの同意でラオスから治療することにする。
するとおもむろにラオスが下衣を脱ぎ捨て下穿き姿になった。

「えっ!?」
「治療するんだろ」

驚くシャウを見てラオスは苛立ったように言葉を発した。

「そう、だけど…」
「ユリベルティス殿下だって脱いでただろうが、何驚いてるんだよ」
「そうだね…」

それを言われるとぐうの音も出ないけれど、僕から促して脱いでもらうのと突然脱ぎすてられる衝撃度はだいぶ違うと思う。
でも、そんなことを気にしている場合でもないのは理解しているので、ラオスの下穿き姿のところは視界に入れないようにしながら呪いに触れる。
ラオスの左足にくっきりと魔大樹の枝が絡みついたあとが呪いとして残っていた。
この呪いは思ったよりも濃度が高いのかどんどんとシャウの中から力が吸い取られていくようだった。
どうにかラオスの足の呪いが全部消えた時には、シャウは額に汗をびっしょりとかいていた。
ラオスの治療を終えて、シャウはイラザに向き直る。

「イラザ、待たせちゃってごめんね」
「それは大丈夫ですが、シャウの方こそ大丈夫なのですか?」
「大丈夫だよ。さあ早く足出して」

イラザの心配そうな顔に、シャウは笑って答えた。
少し辛かったけれど、それをイラザに悟らせる訳にはいかなかった。
この中で呪いを治療出来るのは母さんとシャウしかいないのだ。
そして、僕よりも母さんの方が治療は出来るから、これからまだ森を抜けるまで長いのに母さんが治療出来なくなることは避けなければいけない。だからこそ今はシャウが頑張るところなのだ。

イラザは下穿き姿になると足を差し出してきた。
シャウは手を伸ばしイラザの呪いを治療していく。
やはりラオスと同じで、呪いの濃度が高いのかシャウの中から力が吸い取られていく。
力を振り絞り、何とかイラザの呪いも浄化し終えた。

全部の呪いを治療し終えた時には気が抜けて、シャウは地面に座り込んでしまった。

「シャウ、大丈夫ですか?」
「んー、大丈夫…」

イラザの問いかけに力なく答える。
母さんも心配げに近寄ってきた。

「シャウ、貰った石使わなかったの?」
「! 忘れてた…」
「もう! …魔力の使いすぎね。今、魔力回復するわ」
「待って! これから先も魔力が必要になるかもしれないから、回復はいいよ」
「でも、動けないんでしょう?」
「…それは」
「「俺が背負います」」

ラオスとイラザの言葉が重なった。

「魔力が回復するまで俺がシャウを抱いて運びます」
「俺も! 呪いを治療してもらってシャウが動けないなら運ぶのは当然だから」
「それでいうと、私もシャウを運んでも良いということですか?」

ルティスの言葉にラオスとイラザが睨みつけてそれは赦さないと目で語っていた。
ルティスは肩を軽く竦めると引き下がった。

「シャウはラオスとイラザに交代で運んでもらえ」
「「了解しました」」

父さんの鶴の一声でどうやら決まったようだ。
2人は嬉しげに返事をしている。

「それよりも、お聞きしたいことがあるのですが、よろしいですか?」

ルティスの声音に嫌な予感がした。

「何でしょうか、ユリベルティス殿下」

代表で父さんが答えてくれるみたいだ。

「シャウは呪いに直接触れるのですよね? しかも、直接触って呪いを治療も出来るのですよね?」
「……そうです。出来ます」
「やはり、そうなのですね……」

そう言ったあと、ルティスは考え込むように黙り込んだ。
そして、少し経ったあと、顔を上げてシャウを見つめた。

「シャウ、私と結婚しませんか?」

突然の爆弾発言に思考が停止した。

「は?!」
「何を言っているんですか?」

ラオスとイラザが僕の言いたいことを代弁してくれていた。
ただ2人は怒りと苛立ちと不機嫌なオーラを放っていたけれど。






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