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text22 獣が檻から出た日
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海市蜃楼、その代表である蜃丹韻の襲撃は三日後の夜になった。
目的地はネオ横浜チャイナタウンに聳え立つ外道の巣窟〝桃源城〟。ここであの蜃丹韻の首を取ることが出来れば世界に与える影響、そしてヴィクターグループやプロメテウス社への大きな一歩と宣戦布告になることは明白であった
ーー 必ずお前たちの首を取る。
あの大戦の折、業火と瓦礫の中で一度死んだ〝美琴と言うただの女〟は神の御使い気取りの獲物の首を必ず取るとこの数年間牙を研ぎ続けたのである
女としての幸せも平穏な日常も全てあの日、業火と悲鳴の中にくべてきた。すべてはこの瞬間のため、ただそれだけのために
きっと海市蜃楼側も精鋭を向けてくるのだろう。そしてその中にはアルファの兄弟機も・・・
「ーーーー 慈悲なんて、向けない。」
横浜に向かうヤタガラス、そして大和独立党から派遣された車の中で握りしめた黒涙を手に美琴は静かに呟く。夜の高速道路は深夜帯だからか行きかう車の量も少なく、空を突くように伸びるビル群の群れから零れる光と高速道路に取り付けられた照明の明かりが交じり合い夜の闇を麦酒色に染めている
ツヴァイが運転席に乗りその後ろには美琴をかばうようにアルファが傍に控えていて、小さく呟いた美琴の言葉にツヴァイとアルファがにやり笑みをこぼす
「あァ、それでいい。それでこそ俺たちのマスターだ。」
「慈悲なんて一切かけなくていい・・・仮にもしお前の手が止まっても、俺が代わりにとどめをさす。」
ツヴァイとアルファの言葉に美琴が小さく笑みを零したその時、車に取り付けられていた無線にヤタガラスからの通信が入る『』
『後方から大型のトラックの接近を確認!!奴等さっそく刺客を送り込んできやがった!!』
「----。」
通信の内容に美琴の瞳が鋭くなったかと思うと後部座席のドアを開け身を乗り出す
「ツヴァイ、運転任せた。」
「へっ・・・了解。こっから先は安全運転無しで行かせてもらうぜマスター。」
ツヴァイの言葉に美琴はひらりと車のボンネットに飛び乗れば黒涙を引き抜き姿勢を低くして後続車のトラックを睨みつける
その上には二つの影が武器を構えてこちらを静かに見据えているようだった。
黒みがかった紫色のカンフー服をアレンジしたような戦闘服を身に纏っているのは2体のデウスロイドで、長身に仮面のような物を付けた一体の手に握られているのは恐らくは暗殺器であろう。そしてその隣には小柄な少年型のデウスロイドが静かに美琴を見つめている
「ふむ。・・・・アレがどうやら大姉の言っていた我等の敵で間違いは無いようだな。タウ」
「・・・うん・・・敵だね・・・シグマ・・」
2体から放たれる殺気に美琴も黒涙を構えて戦闘態勢を取るがその時自分の背後に大柄な影が立つのを感じ振り向く
そこに居たのはまるで檻から解き放たれた獣のような笑みとぎらついた視線を向けるアルファの姿だった
「出迎えにしちゃあ随分洒落た事するじゃねぇか。ーーーー なぁ?シグマ、タウ。」
「!!・・・じゃあ、この目の前にいる二人がアルファの・・」
ーー アルファの兄弟機。
アルファにとっては憎むべき破壊の対象が・・今こうして目の前に居る。
「口のきき方は相変わらずだな大兄よ。・・・玄塔に収監され少しは従順になったかとおもったのだが」
「・・・・意味がなかったね。シグマ」
シグマとタウの言葉にアルファは愉快そうに笑うとすぐに拳を構えて2体に殺気を向ける
「意味?・・・・意味ならあったさ」
「?」
首をかしげるタウにアルファは低く唸るように言葉を返した
「ーーーー てめぇら全員ブッ壊してやると言う確固たる決意を持ち直せたからな。」
まっすぐ敵を睨みつけるその凶暴な猛獣のような視線にもはや迷いなど一切なかった。
あの日、あの地獄のような場所から救い出してくれたこの女のために
この内に秘めた〝地獄の業火〟も牙もすべて使ってやるとまがいものの体に宿るはずもない〝魂〟に誓った
それが愛なのか欲望なのかアルファにはどうでもいい。
ーー ただ壊す。この女のために
獣の性質を秘めた自分にとっては理由なんて、それで十分なのだから
目的地はネオ横浜チャイナタウンに聳え立つ外道の巣窟〝桃源城〟。ここであの蜃丹韻の首を取ることが出来れば世界に与える影響、そしてヴィクターグループやプロメテウス社への大きな一歩と宣戦布告になることは明白であった
ーー 必ずお前たちの首を取る。
あの大戦の折、業火と瓦礫の中で一度死んだ〝美琴と言うただの女〟は神の御使い気取りの獲物の首を必ず取るとこの数年間牙を研ぎ続けたのである
女としての幸せも平穏な日常も全てあの日、業火と悲鳴の中にくべてきた。すべてはこの瞬間のため、ただそれだけのために
きっと海市蜃楼側も精鋭を向けてくるのだろう。そしてその中にはアルファの兄弟機も・・・
「ーーーー 慈悲なんて、向けない。」
横浜に向かうヤタガラス、そして大和独立党から派遣された車の中で握りしめた黒涙を手に美琴は静かに呟く。夜の高速道路は深夜帯だからか行きかう車の量も少なく、空を突くように伸びるビル群の群れから零れる光と高速道路に取り付けられた照明の明かりが交じり合い夜の闇を麦酒色に染めている
ツヴァイが運転席に乗りその後ろには美琴をかばうようにアルファが傍に控えていて、小さく呟いた美琴の言葉にツヴァイとアルファがにやり笑みをこぼす
「あァ、それでいい。それでこそ俺たちのマスターだ。」
「慈悲なんて一切かけなくていい・・・仮にもしお前の手が止まっても、俺が代わりにとどめをさす。」
ツヴァイとアルファの言葉に美琴が小さく笑みを零したその時、車に取り付けられていた無線にヤタガラスからの通信が入る『』
『後方から大型のトラックの接近を確認!!奴等さっそく刺客を送り込んできやがった!!』
「----。」
通信の内容に美琴の瞳が鋭くなったかと思うと後部座席のドアを開け身を乗り出す
「ツヴァイ、運転任せた。」
「へっ・・・了解。こっから先は安全運転無しで行かせてもらうぜマスター。」
ツヴァイの言葉に美琴はひらりと車のボンネットに飛び乗れば黒涙を引き抜き姿勢を低くして後続車のトラックを睨みつける
その上には二つの影が武器を構えてこちらを静かに見据えているようだった。
黒みがかった紫色のカンフー服をアレンジしたような戦闘服を身に纏っているのは2体のデウスロイドで、長身に仮面のような物を付けた一体の手に握られているのは恐らくは暗殺器であろう。そしてその隣には小柄な少年型のデウスロイドが静かに美琴を見つめている
「ふむ。・・・・アレがどうやら大姉の言っていた我等の敵で間違いは無いようだな。タウ」
「・・・うん・・・敵だね・・・シグマ・・」
2体から放たれる殺気に美琴も黒涙を構えて戦闘態勢を取るがその時自分の背後に大柄な影が立つのを感じ振り向く
そこに居たのはまるで檻から解き放たれた獣のような笑みとぎらついた視線を向けるアルファの姿だった
「出迎えにしちゃあ随分洒落た事するじゃねぇか。ーーーー なぁ?シグマ、タウ。」
「!!・・・じゃあ、この目の前にいる二人がアルファの・・」
ーー アルファの兄弟機。
アルファにとっては憎むべき破壊の対象が・・今こうして目の前に居る。
「口のきき方は相変わらずだな大兄よ。・・・玄塔に収監され少しは従順になったかとおもったのだが」
「・・・・意味がなかったね。シグマ」
シグマとタウの言葉にアルファは愉快そうに笑うとすぐに拳を構えて2体に殺気を向ける
「意味?・・・・意味ならあったさ」
「?」
首をかしげるタウにアルファは低く唸るように言葉を返した
「ーーーー てめぇら全員ブッ壊してやると言う確固たる決意を持ち直せたからな。」
まっすぐ敵を睨みつけるその凶暴な猛獣のような視線にもはや迷いなど一切なかった。
あの日、あの地獄のような場所から救い出してくれたこの女のために
この内に秘めた〝地獄の業火〟も牙もすべて使ってやるとまがいものの体に宿るはずもない〝魂〟に誓った
それが愛なのか欲望なのかアルファにはどうでもいい。
ーー ただ壊す。この女のために
獣の性質を秘めた自分にとっては理由なんて、それで十分なのだから
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