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おのれスパダリ族、おのれキラキラ効果!
しおりを挟むケトルでお湯を沸かしつつ、コーヒーの準備をしながら悶々とする。勿論、コーヒーはドリップなどではなく庶民御用達のインスタント。最近は蜂蜜を少々と、牛乳を入れてカフェオレにするのにハマっている。極甘党の吉弘ならばきっと気に入ってくれるだろう。
……などと湯気を立てるコーヒーの上でお徳用の蜂蜜チューブを握り込みながらも、舞花は悶々としていた。
――い、勢いで引き止めちゃったけど、この後どうしよう……。
吉弘とまだ離れたくない一心での提案だったけれど、ここからは全くのノープランである。
そうやって悶々としている間に、二人分の蜂蜜入りのカフェオレが出来上がってしまった。
「おい、出来たなら持っていくぞ」
「えっ、あっ」
悶々としている側から太い腕がニュッと現れ、舞花の肩が大げさに跳ねた。腕まくりした吉弘の腕は血管が走り、筋肉の筋がしっかり浮き出ていて逞しい限りだ。
おまけに身長差のせいで、半ば覆いかぶさるようにして覗き込んでいるからか。吉弘の首筋やら喉仏やら鎖骨が、至近距離でチラついてくるのである。
「……? 何だよ」
おのれスパダリ族。おのれキラキラ効果。
好きという気持ちを自覚したからか、吉弘が三割増しでキラキラと輝いて見えて仕方ない。
いつもは少し忌々しいと感じていた光の粒も、背後でいつの間にか咲いている紫の花も、今はどこまでも吉弘を格好良く見せてくる。
「わっ、ぁ、あっ」
……結果、顔と言わず耳と言わず、舞花はみるみるうちに全身真っ赤に茹で上がってしまったのだった。
「おい、顔真っ赤だぞ。風邪か?」
「ぁ、うっ……わっ……」
マグカップを置いて、大きな手の平が舞花のおでこを覆う。暫く熱を測った後、さりげなく指の背で頬を撫でられ擽ったくてたまらない。
「ちょっと熱いな……やっぱり疲れが出たんじゃねぇか?」
「う、わっ……! 吉弘、近いっ……!」
「そんな事言ってる場合かよ。飲み物はいいから、サッサと部屋で休んで――」
「っ!」
いけない。これは吉弘が帰る流れだ。これでは何のために引き止めたのか。
舞花はぐっと下腹に力を込めて気合を入れ直し、思い切って吉弘の腕を掴んだ。
「ま、まだっ……まだ一緒にいて。お願い、私は大丈夫だからっ……」
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