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レオン登場
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ヒースはそんなアイリスを見てなぜか目を伏せてしまった。偽りの恋人役から解放されたリリは、さっさと立ち上がりアイリスの後ろについて、そんなヒースをあきれた眼差しで見つめている。
「それでなぜ婚約を続行できないんですか、ヒース殿下。やはりわたくしのことを嫌いになったのですか」
どうにか冷静さを取り戻そうとアイリスが尋ねた。
「「いや、機雷になどなっていない。むしろアイリスに嫌われているのは私のほうだと思うのだが」
少しずつ落ち着きを取り戻しているアイリスとは対照的に、ヒースは困惑を隠せない様子で答える。
「先ほども申し上げたでしょう。わたくしはヒース殿下をお慕いしております。なぜその心をお疑いになるのですか」
せっかくうまく事が運ぶと思っていたら最初の議論に戻ってきてしまいアイリスは怒りを圧し隠すのが精いっぱいだった。人の話を聞かない人にはこれぐらい強くものを言ってもよいだろうと心の中で正当化しておく。しかし、
「それは君の責任感からくるものだろう。だって君はレオンを好いているはずだ。何度も庭園で楽しそうにしているところを見たことがあるのだから隠す必要はない。私は君のことが好きだが、無理やり結婚させるような真似はしたくないんだ。私に任せてもらえればレオンとの婚約を整えることができるのだから君にとってもよい話だろう」
ヒースは突然感情をあらわにしたアイリスの真意を推し量ることもできず更なる爆弾を投下してしまった。
アイリスははっとしてヒースを見る。その顔は朱に染まっていて何とも言い難い艶を帯びていた。。ヒースはその表情を見て自分の考えが正しかったことを確信する。それと同時にレオンへの妬心が心に満ちていった。
{なぜ、彼女は私でなくレオンを選んだのか。なぜ私はアイリスの心を囲い込むことができなかったのか。}
一方アイリスはレオンとのことを思い返していた。レオンはヒースを慕うかわいらしい弟で、よくアイリスの相談にも乗ってくれた。特にヒースの婚約者に決まってから努力して淑女になったが、元々は感情表現が豊かでのびやかに過ごすのが自然体だということをヒースに知られたら気持ちが離れてしまうのではと不安だった時には、のろけるのはやめてほしいですね、兄上は何があっても貴方を手放しませんよと屈託なく笑って励ましてくれたのだ。それからはより親しく言葉を交わすようになり、ヒースの良さについて語り合ったことも一度や二度ではない。その姿をヒースにみられていたことを知ってアイリスは恥ずかしさのあまり赤面することを抑えられなかった。
「レオン殿下とはそんな中ではありません。ヒース殿下の誤解です。だからヒース殿下が納得されるまで恥を忍んで説明いたします。どうか聞いてください」
いつまでもこのままにしておくわけにはいかないと気持ちを切り替えヒースに向き合ったアイリスであったが、
「そんなものは聞きたくない。君はレオンの横で楽しそうに笑っていた。私には小さかった時しかそんな顔を見せてくれたことはないのに。君はおとなしくしていれば幸せになれるんだ。邪魔をしないでほしい、私の決意が揺らいでしまう」
ヒースはそう叫んだかと思うと席を立ち、東屋から出ていこうとした。
「ふーん、兄上は僕がアイリス嬢と結婚してもいいと思ってるんだ。それじゃあ遠慮なくそうさせてもらおうかな」
立ち止まり、声がしたほうに視線を向けたヒースは瞠目する。東屋の入口にははちみつ色の髪を靡かせたレオンがいたからだ。
「それでなぜ婚約を続行できないんですか、ヒース殿下。やはりわたくしのことを嫌いになったのですか」
どうにか冷静さを取り戻そうとアイリスが尋ねた。
「「いや、機雷になどなっていない。むしろアイリスに嫌われているのは私のほうだと思うのだが」
少しずつ落ち着きを取り戻しているアイリスとは対照的に、ヒースは困惑を隠せない様子で答える。
「先ほども申し上げたでしょう。わたくしはヒース殿下をお慕いしております。なぜその心をお疑いになるのですか」
せっかくうまく事が運ぶと思っていたら最初の議論に戻ってきてしまいアイリスは怒りを圧し隠すのが精いっぱいだった。人の話を聞かない人にはこれぐらい強くものを言ってもよいだろうと心の中で正当化しておく。しかし、
「それは君の責任感からくるものだろう。だって君はレオンを好いているはずだ。何度も庭園で楽しそうにしているところを見たことがあるのだから隠す必要はない。私は君のことが好きだが、無理やり結婚させるような真似はしたくないんだ。私に任せてもらえればレオンとの婚約を整えることができるのだから君にとってもよい話だろう」
ヒースは突然感情をあらわにしたアイリスの真意を推し量ることもできず更なる爆弾を投下してしまった。
アイリスははっとしてヒースを見る。その顔は朱に染まっていて何とも言い難い艶を帯びていた。。ヒースはその表情を見て自分の考えが正しかったことを確信する。それと同時にレオンへの妬心が心に満ちていった。
{なぜ、彼女は私でなくレオンを選んだのか。なぜ私はアイリスの心を囲い込むことができなかったのか。}
一方アイリスはレオンとのことを思い返していた。レオンはヒースを慕うかわいらしい弟で、よくアイリスの相談にも乗ってくれた。特にヒースの婚約者に決まってから努力して淑女になったが、元々は感情表現が豊かでのびやかに過ごすのが自然体だということをヒースに知られたら気持ちが離れてしまうのではと不安だった時には、のろけるのはやめてほしいですね、兄上は何があっても貴方を手放しませんよと屈託なく笑って励ましてくれたのだ。それからはより親しく言葉を交わすようになり、ヒースの良さについて語り合ったことも一度や二度ではない。その姿をヒースにみられていたことを知ってアイリスは恥ずかしさのあまり赤面することを抑えられなかった。
「レオン殿下とはそんな中ではありません。ヒース殿下の誤解です。だからヒース殿下が納得されるまで恥を忍んで説明いたします。どうか聞いてください」
いつまでもこのままにしておくわけにはいかないと気持ちを切り替えヒースに向き合ったアイリスであったが、
「そんなものは聞きたくない。君はレオンの横で楽しそうに笑っていた。私には小さかった時しかそんな顔を見せてくれたことはないのに。君はおとなしくしていれば幸せになれるんだ。邪魔をしないでほしい、私の決意が揺らいでしまう」
ヒースはそう叫んだかと思うと席を立ち、東屋から出ていこうとした。
「ふーん、兄上は僕がアイリス嬢と結婚してもいいと思ってるんだ。それじゃあ遠慮なくそうさせてもらおうかな」
立ち止まり、声がしたほうに視線を向けたヒースは瞠目する。東屋の入口にははちみつ色の髪を靡かせたレオンがいたからだ。
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