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最初のダンジョン

とある戦闘

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「ブースト」



スピードがまた一段階早くなる。
相手からの攻撃を紙一重で避けていく。
攻撃を大袈裟に避けたら戦闘時間が長くなり、どんどん不利になっていくのは俺の方だ。



また、体力の消費も激しくなり、パフォーマンスも落ちてくる。
体力という概念を持っていない相手と戦うのはなかなかに辛いものがある。
一方的にこちら側のパフォーマンスが落ちていくだけなのだから。



自分より二回り大きい相手のモンスターから強烈な一撃がくる。
当たらなくともかすりでもしたら戦闘を継続できないような攻撃。



たがどんなに強い攻撃でも当・た・ら・な・け・れ・ば・意・味・が・な・い・



強力な攻撃の後はスキが大きい。
やっと相手の懐に潜り込むことができた。



「紅蓮嵐山」



火属性を攻撃に付与した攻撃だ。
下から上に切り上げる剣技である。
この際に渦を描くように相手の周りに炎が発生する。
さらに一定確率で「やけど」という異常状態にもすることができる。



「やけど」は10秒ごとに一定ダメージを与えることができる。
そのダメージは微々たるものだが、防御力を無視できるところが強い。
極端に防御力が高いモンスターはHPが少ない傾向にある。そういうモンスターには有効である。



しかし今回は「やけど」にはならなかったようだ。



まあこいつは防御力、HPともにそこそこ。
その分を攻撃力にまわした完全パワー系である。
そんな奴が「やけど」になったところで?って話なのだが。



相手からの追撃が来る。
「紅蓮嵐山」を使用したばかりで体は今、空中にある。
そこに横のなぎ払いだ。まともに受ければひとたまりもない。



空中で体を無理やり回転させる。
自分の短剣が相手の剣にあたる。相手のなぎ払いを回転することでうまくいなす。


足が地面についた。


「バックチェンジ」


相手の背後に回る。


「バッシュ」


右足のアキレス腱を切る。
あいての体制が崩れて、倒れてくる。それに合わせる。


「レイザント」


下から上へ切る無属性剣技。うなじを深くえぐる。


「グォォォォォォォォォォォォォォォォ」


(くそ!威圧をつかってきた。こいつまだやるのかよ!うなじをえぐったんだぞ!)


血がついた短剣を再び構える。
危機迫った表情で最後とも思える突進をしてくる。


横に大きく飛び回避すると同時に毒のついた投げナイフを投げる。



「くそっ」



皮膚が硬すぎて刺さらない。



だが永遠に続くかと思えた戦いも唐突に終わりを告げる。
モンスターが壁に激突したまま動かなくなった。



「やっと終わったか」



ダンジョンの発生に巻き込まれてから約1ヶ月がたった。
体感なのであまり当てにはできない。


人間の生活周期は25時間周期というのを聞いたことがある。そう考えるならば実際にはもう少し月日が経っているだろう。


(早くここを出る方法を見つけないとな…)



そしてまた階段を降りていく


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