少年少女の異世界英雄譚 ~ みんなで異世界を生き抜きます ~

エイスト

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第一章 勇者降臨、伝説の幕開け

第六話「解体と吸収」

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「ここは肉と皮の間だから、慎重にね。傷がつくと質が下がるんだ。次はここをこうしてーー」

 現在、みんなに解体のレクチャー中だ。慣れてない連中は皆、見ては吐いて見て吐いてまた見ての繰り返しだ。
 最初の頃はなんとか耐えてはいたけど、臓物を見たときほとんどの人が一度吐きに行って、戻って来てから臓物を取り出したとき、その匂いがあたり一面に広がって一斉に吐きに行ったのだが、途中我慢できなくなってその場に吐いてしまった。御愁傷様です。

「よしできた。まぁこんな感じかな。」

 解体を終え、目の前には一塊の肉と毛皮とツノ、あとは心臓の近くにあった、なにか不思議な玉を並べている。
『目利き』で調べてみると、『一角兎の魔核』と書かれている。
 これはおそらく、魔物からドロップする物だろう。ゲームやラノベでの知識だけど。
 それともう一つ、『目利き』で調べたときに、解体した一角兎の素材が薄く光り、〈普通〉から〈少し良質〉になった。スキル『解体』による効果で、品質が少し上がったようだ。

「それじゃあみんなもやってみようか。ナイフは数が限られてるから、みんなで回しながら使うようにね。僕は血抜きをやるから、みんなは血抜きを済んだのを解体していってね。」

「その血抜き、私にも手伝わせて。料理人の娘として、血に慣れておかなちゃ。」

 アロエが血抜きを志望してきた。すごくやる気を感じる。
 アロエは料理人の親の子供で、僕たちの中で一番料理が得意だ。料理をする上で解体をすることも大切だし、確かにアロエには早く解体できるようになってもらいたい。
 そういうわけで、アロエには血抜きの作業をやってもらう。
 先ほどの一角兎は血抜きをしたのだが、その匂いが臓物を取り出すとき並みに血生臭い。
 これは流石にキツいからみんなにはまだやらせないでおこうと思ってたが、アロエには特別に先に教えるようにしよう。
 アロエに血抜きのやり方を教えている間、血抜きが終わったのを各自協力しながら解体していく。残りの一角兎は四体で三人で解体すれば全員が解体できる分配だ。
 ちなみに、ノバラとザルビア、ストックの三人は解体を見るだけで失神しかけたから、ウツギとアーモンドの二人が一緒になって手伝ってもらってる。二人は血にすぐ慣れたため、ウツギにノバラとストック、アーモンドにザルビアと組んでいる。三人には早く血に慣れてほしいものだ。

 解体を始めて数分後、みんな終わらせたようだ。あの三人は予想通り失神しかけたが、なんとか解体できた。

「解体って、結構腕が痛くなるんだな。」

「それに血生臭い。」

「洗っても臭いが取れないでござる。」

 みんなかなり困憊してるようだ。初めての解体ではよくあることだし、少しずつ慣れていこう。

(そういえばこの魔核っていうの、この世界特有のものだよな。全てのモンスターにはこの魔核というのが存在するのか?)

 そう思い一角兎の魔核を手に取り、じっと見つめる。

〈【一角兎の魔核】を吸収しますか?Yes/No〉

 ピコンという音がした途端、目の前にボードが現れた。

(なんだこれ!)

 いきなり現れてびっくりした。
 これはウェポンスキルにあった『アイテム吸収』なのだろう。
 確か吸収したアイテムから稀にスキルを獲得できるそうだが。
 
「…とりあえず、試しにこれを吸収してみるか。」

 そういうわけで、Yesと念じる。
 すると、手に持ってた魔核が光の粒子状になり、ポケットの中に入っていく。
 ポケットに手を突っ込み中にあるものを取り出すと、キーホルダーに光の粒子が吸い込まれていく。
 
〈一角兎の魔核を吸収…スキル『脱兎』を獲得しました。〉
 
 なるほど。こんな感じにスキルが手に入るのか。魔核以外の素材を吸収すればどんなスキルを獲得できるんだろう。

「ヤッホーエイスト君、何してるの?」

「アザレアさん、ちょうどよかった。早速で悪いんだけど、この毛皮をじっと見つめてみて。」

 僕はアザレアさんに一角兎の毛皮を差し出す。

「どうしてなの?」

「いいからやってみて。」

 アザレアさんは僕のいう通りじーっと毛皮を見つめる。

「わっ、なんか出た、なにこれ?」

 アザレアさんも驚いている。

「吸収しますか、って書かれてるよね。そこでYesって言うか念じたりしてみて。」

「…うん、やってみる。」

 アザレアさんはYesと言ったその瞬間、毛皮が光の粒子状になって腕輪に吸い込まれていく。

「えっえっ、なにが起きてるの⁉︎」

 目の前で起きていることに混乱しているようだ、無理もない。

「なんだなんだ?」

「どうかしましたか?」

 アザレアさんの声にみんなが集まってきた、そりゃこうなるか。

「わっ、また出てきた。えっと、…『皮工』っていうスキルと、毛皮レシピを取得したみたい。」

 どうやらアザレアさんもスキルを獲得したみたいだ。スキル『皮工』と毛皮レシピを取得したと言ったが、モンスターの素材の部位によって得れるスキルとレシピがバラバラなのだろうか。

「すげー!スキルやレシピが手に入るのか。」

「僕もさっきスキルを手に入れたよ。部位によって手に入るスキルは異なるけどね。」

 みんなにも素材を吸収させればいろんなスキルが手に入って、戦闘で役に立つだろう。

「オレもやるぞ!」

「ぼくもぼくも!」

「拙者に新たな力を!」

 そうしてみんなが素材を吸収してスキルを獲得していく。中には既にあるスキルとダブってしまうこともあるが、レシピを取得したから喜んでた。スキルが重なってもなんの変化も起きないのだろうか。


 僕とアザレアさんが『アイテム吸収』でスキルとレシピを獲得及び取得して数分後、全員が素材になりそうなものを探している。
 みんなが一角兎の素材を吸収して、さまざまなスキルとレシピを獲得及び取得したことは大きな収穫だ。魔核以外の素材は戦闘に不向きな生産系だが、今後必要になってくるだろう。
 しかし解体して出た臓物も吸収したところ、スキル『解体』を全員が獲得できたときはみんな微妙な空気になった。
 こんな簡単にスキルを獲得できていいのだろうか。まぁ手に入って困ることは無いし、結果オーライとしとこう。
 ちなみにだが、一角兎の素材で得たスキルとレシピはこんな感じだ。

肉→スキル『調理』+肉料理レシピ
骨→スキル『細工』+骨細工レシピ、
ツノ→スキル『細工』+ツノ細工レシピ
毛皮→スキル『皮工』+毛皮レシピ
臓物→スキル『解体』

「これはどうだ…ダメか。」シュン

「これこそ拙者に更なる力を…これもダメでござるか。」ショボーン

 さっきから素材になりそうなものを探しては色々吸ってはいるのだが、全然見つからない。中にはそこら辺の雑草や石を吸収する始末。

「…そろそろやるかな。」

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