少年少女の異世界英雄譚 ~ みんなで異世界を生き抜きます ~

エイスト

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第一章 勇者降臨、伝説の幕開け

第五話「勇気と覚悟」

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 一角兎たちとの戦闘のあと、僕たちはすぐさまその場から離れた。そのすぐあと、僕は怪我のことを心配され、ジニアに肩を借りて走りながら遠くに見える川まで行こうと提案した。
   
 そのあと、後ろから来ている一角兎の群れがやってきて、僕たちを襲ってきた。
 距離がだんだんと縮まってきて、不味いと思ったその時、デイジーが杖を持ってその場に立ち止まった。そして、なにかぶつぶつと呪文の詠唱みたいなことをしている。そして杖の先からバチバチと放電する小さな球体が現れた。

「いくでござるよ、『雷響球(らいきょうきゅう)』!」

 その球体は一羽の一角兎に向かって飛び出し、命中した一羽がひっくり返って、ピクピクと痙攣しだした。
 あれはおそらく状態異常魔法だろう。あの球体に当たった敵は電気ショックによって感電して、感電及び痺れ状態になる。

 少しは時間稼ぎになると思ったんだろうけど、一角兎の群れは全く止まろうとはしない。

「やっぱり単体攻撃だと敵全体の動きを止めきれないでござるよ!」

 デイジーが泣きべそ顔になりながらこっちに走ってくる。いつもより早く走って見えるのは気のせいだろうか。これが火事場の馬鹿力というのだろう。



「ハァハァ、みんな、大丈夫かい。」

「ハァハァハァ、これで大丈夫に見えるか。」ゼェゼェ

「ハァハァ、疲れた。」グデーン

 みんなスタミナをかなり消費してるようだ。僕もだけど。
 あのあとなんとか振り切ることができ、今は川岸で休んでいるところだ。

「ふぅ、疲れた。とりあえず水分補給をしておこうか。すぐ近くに川があるし、しばらくここで休んでいよう。」

「そうだな。」

「喉がカラカラだよー。」

 ジニアとアーモンドが川水をすくって飲もうとした。

「ちょっと待ってください!」

 二人が水を飲もうとした瞬間、ノバラが二人を止めた。

「川の水をそのまま飲むのは危険ですよ。」

「一度煮沸したほうがいいです。」

 ザルビアも声を上げた。この二人は川水をそのまま飲むのは危ないことを知っているようだ。
 確かに一度、水を沸騰してからではないといけない。そのまま飲めば病原体が体内に入り、嘔吐やめまいが起きることがある。

「確かに二人の言う通り、川水はそのまま飲んだら危険だ。でも、今は煮沸のための道具がないし、今はそのままで飲むしかない。」

 今はサバイバルのときだし、それに『病気耐性』があるから多少は大丈夫だろう。いつでも食糧や水が手に入れ摂取できるよう、訓練しておかなければならない。

「とりあえず、慣れるしかないね。」

 幸いにも、この川はそこまで汚くはない。水草が生えているし、よく見ると小さなエビや小魚みたいな生き物も見える。綺麗な証拠だ。

「…分かりました。」

「慣れるしかないんですね。」

「……」

 ノバラとザルビアがショボーンとした感じで了承してくれた。ストックは渋い顔になってすごく嫌そうだけど、妹もやるなら兄もやるしかないと思ってるだろうし大丈夫だろう。

(知識を知ってる人には精神的にキツいだろうな。)

 余談だけど、全員が『病気耐性』を持っていたため、川の生水を飲んでも腹を下さなかったそうな。



「うぅ。しかし地味に痛いな。」

 僕は痛みで歪んだ表情になりながら小さな岩に腰掛け、傷を負ってる部分をハンカチで覆い、応急処置を済ませている。
 ズキズキと一角兎にやられた傷がまだ少し痛む。今の自分の防御力が低いのだからだろうか、あれで大ダメージを負ってしまったみたいだ。

「エイスト君、怪我してるの?」

 アザレアさんが心配してきて、僕は咄嗟に痛みで歪んだ表情から笑顔になる。

「ああ、このくらいかすり傷だからそこまで気にしなくて--」

 気にしなくてもいいと言おうとした途端、アザレアさんは僕の手を握りながら言ってきた。

「ダメだよエイスト君。怪我してるなら治さなきゃ。」

 そう言ってアザレアさんは、ガーベラに向かって呼びかけた。

「ガーベラちゃん、こっち来て~。」

 すると、ガーベラは静かにこっちに寄ってくる。相変わらず顔の表情が読めない。

「どうしたのぉ?」

「エイスト君怪我してるみたいなの。ガーベラちゃん、さっき回復魔法使えるって言ってたよね、それやってほしいの。」

 アザレアさんがガーベラに頼んだ。するとガーベラは分かったぁと言って、手に持っているワンドを両手で持ち、目を瞑ったあと、デイジーのように呪文を言い出した。

「分かったぁ。ブツブツ…『癒しの光』」

 すると傷の部分が光り出した。そしてだんだん塞いでいき傷跡なく治った。

「すごい!傷がなくなってる。」

 さっきアザレアさんは、ガーベラは回復魔法が使えると言ってた。ということは、ガーベラのクラスは《回復術士(ヒーラー)》なんだろう。
 《回復術士(ヒーラー)》は回復に特化しているクラスで、ゲームだとチームに入れるべき職業の一つに入っている。
 しかし物理攻撃力と防御力がとても低いのが特徴で、ソロだと無能と呼ばれることが多い。

(でも今の状況だとすごく役に立つクラスだ。)

 そう思いながら立ち上がり、ガーベラに目を向ける。

「ありがとう、助かったよ。」

 そして、アザレアさんにも目を向ける。

「アザレアさんも、心配してくれてありがとう。」



 川の水を飲み傷を治してもらった後、みんなが休んでる間に僕は河岸であるものを探していた。

「エイスト君、何か探し物?」

「うん、ちょっとあるものを…あっ!あれがちゃうどいいか。」

 僕は見つけたものに向かって走る。それは大きく真っ平らな岩だった。これからやることにちょうどいい土台だ。

「はい、みんな集合!」

 みんなを呼び、集まったのを確認したら、手に持っているものをみんなに見せながらこれからやることを説明する。

「今からみんなに、このウサギモンスターを解体してもらいます。まず僕が手本を見せるから、みんなはその作業を覚えるように。」

 喋ってる最中、それぞれが手を押さえてたり唖然としていた。

「あ、あの、待ってください。」

 ザルビアが動揺しながら発言してきた。

「どうして私たちは解体を覚えなければならないのですか。その説明をお願いします。」

 …ザルビアはまだ血を見るのが苦手そうだ。
 ザルビアだけじゃない。ノバラも、ストックも手が震えてる。
 反対に、パチラとウツギ、アーモンドは手が震えてない。三人の家は牛や豚を飼っていて、解体の現場を見たことあるからなのだろう。でも元気がない表情から見て、全く怖くないわけではなさそうだ。

「さっきもいったけど、僕たちはサバイバルをしなければいけないんだよ。その上で大切なのは血に慣れること。魚や肉を食べるには、その命を殺さなくちゃいけない。その際、血を見ることになる。…これはもう、生きるか死ぬかの問題でもあるんだ。」

 みんなは静かに、僕の話を聞いている。少しずつ分かってきたんだろう。

「それに、戦闘のときも血を見ることがあるからね。今からでも慣れておかないと、これから大変な思いをするだろうね。」

 説明し終えて数秒の間、周りが静かになった。風の音と川の流れの音が聞こえる。

「…エイスト君、私やる。」

 アザレアさんが先に口を開いた。若干手が震えてるけど、目は真っ直ぐだ。

「よっしゃ、オレもやるぞ!」

「わ、わたしも。」

「どの道避けては通れないしな。」

「そ、そうでござるな。」

 ジニアとダリア、デイジーも覚悟を決めたようだ。

「うぅ、やるしかないのですね。」

「覚悟を決めなければいけませんね。」

 ザルビアとノバラはかなり落ち込んでるようだけど、覚悟は決めたようだ。ちなみにストックは黙っているけど、彼のことだから、妹だけ苦労はさせんと思ってるんだろう。

「俺の家では牛を育ててるから解体は多少慣れてる。初めてやるやつに手を貸すぞ。」

「昔爺ちゃんと牛や豚の解体を見たことがあるから、すぐに慣れるかも。」

「うちも爺様と婆様が解体してるのを見たことがあるから、すぐに慣れるかもな。」

 みんな、覚悟を決めたようだ。僕は、その覚悟に応えなきゃ。

「それじゃ、早速始めるよ。」

 そう言って僕は、サバイバルナイフを取り出し、土台に一角兎を置き、お辞儀をして解体を始める。

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