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第二章『異世界探索 新しい仲間(眷属)が入る(手に入る)予感』
新しい仲間(眷属)、サクラ🌸・サクラの過去
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新しい仲間(眷属)、サクラが僕らのパーティーに入って、まず僕らはサクラの変化に驚いていた。
元奴隷の猫人族の彼女に“サクラ”と名付けをして意識を失ったあと、目覚めたらサクラに大きな変化が起きた。
まず、僕の眷属になったことによって種族進化をした。元は猫人族だったのだが、今では“桜花猫姫(パール・キャッツ)”という種族に進化を果たした。
アンデット三人組にパール・キャッツのことを知ってるか聞いてみたけど、三人とも知らないそうだ。
きっとサクラは新種族なのだろう。アンデット・ヒューマンの件もそうだけど、眷属化、もしくは名付けとかが影響してるのだろうか。
あと、サクラが新しいクラスとスキルを獲得したそうだ。進化ボーナスみたいなものかな。
クラスは踊り子から舞妓(まいこ)になり、エクストラスキル『乱桜戦舞(ディスタヴァンス・フォール)』と『扇使い』が追加されてる。
新しいクラスの舞妓は踊り子の進化形で、エクストラスキル『乱桜戦舞』と『扇使い』がそこから派生したのだろう。
エクストラスキル『乱桜戦舞』は『舞踊者』の進化形で、回避系スキルだけでなく、攻撃や受け流し、カウンターなどのスキルが付属している。
『扇使い』はその名の通り扇を使い戦う戦闘スタイルだ。これは舞妓要素が高そうだ。
そういえば、ゲームだと扇の一つである鉄扇には剣を折るソードブレイカーの性能がある。鉄扇をサクラに持たせたらできるかもな。
他には適性属性が花と光、闇に変わっている。
属性の花は植物属性の派生のようだ。花に関する魔法でも使えるのだろうか。
そして最後に、傷跡だらけだった身体が綺麗になっていて、傷跡一つない15歳くらいの桜色の毛並みをした猫耳と尻尾をつけた女の子になっている。
「まさかここまで強く変化するなんてね。ある意味天才だよ。」
「ありがとうございます、キヨミツ様。」
サクラが可愛らしくニコッと笑う。
そんなこんなあって、僕らはいつも通りお金を稼ぐべくクエストを受け、近くの森まで来てる。
サクラにも戦ってもらうことになってるが、彼女のレベルは1になっている。
眷属にするとレベルが1になってしまう。三人組と同じか。これも眷属化によるデメリットだ。
でもその心配はなさそうだ。
「はぁ!」
サクラは鉄の扇を用いて素早い動きでモンスターに攻撃する。
そしてモンスターの攻撃を素早く躱す。
サクラは素早さと回避を活かした戦闘スタイルで、物理攻撃アタッカーといった感じだ。
ちなみにだが、武器を鉄の扇にしたことにより僕らの所持金がゴッソリと減った。
その原因は扇が関係していて、扇の価値が高価だったからだ。
そもそも扇使いというクラスは希少らしく、武器屋に行っても銅扇、青銅扇、鉄扇の三品だけで、しかも順に、金貨1枚、3枚、5枚と高価だ。
値切ろうと考えたけど、これでも原価ギリギリとのことだった。
武器屋に聞いた話だと、扇は観賞用や舞踊用に使われることが多く、戦闘用のは大きな街以外だと余り販売してないそうだ。
けど扇使いが希少というのもなんとなくわかる。銃使いもそうだが、銃や扇とかは剣と魔法の世界だとマイナー武器に分類される。
この世界の武器では僕の知ってる武器のジャンルと同じかもしれない。
話を戻すが、鉄扇を買ったことで金貨5枚もの大出費をした。そのためサクラにもお金を稼いでもらうべく戦ってもらってる。
けど扇だけでサクラの装備は完了していなくて、他にも買いたいものがある。
それはサクラの服装だ。今は胸鎧と麻の服を着ていて、正直僕らの中でとても浮いている。
けれど僕は、どうしてもサクラに着てほしい服を知ってる。
あれは鉄の扇を買った後のことだ。武器屋を出て防具屋と服屋を通りかかったとき、ショーウィンドウ越しに見かけた一つの商品に目を向けた。
それは着物と鎧が組み合わさった服装で、まるでくノ一の服装に見えた。
基本色が黄緑で、所々緑色を使ったコントラストが効いている着物と、黄緑寄りの緑と肌色の組み合わせの枯色の鎧と籠手で、豪華な装飾品はつけられてないシンプルなものだった。
それを見た瞬間、僕はサクラに着せたいと思った。クラスは舞妓だし、どうせなら和風な服装で戦ってもらいたい。
これは僕の我儘なだけだが、気にしたらダメだ。
ちなみにその服装なのだが、値段が扇よりも高く金貨20枚だ。
高いと思うが、その服装以外のだと値段は数倍もする。余り人気はなさそうだ。
けど欲しいものを誰にも取られることがないと思うと少し安心する。
早くお金を貯めてサクラ専用装備を買いたい。
「よし、これだけモンスターを倒せば、クエストの報酬も含めて金貨は数十枚は手に入るだろう。」
あの服装を見てから早五日、五日と短期間だったがモンスターとの戦闘記録を思い返せば数ヶ月分戦った気分だ。
今のレベルなのだが、自分は33、クルーエルは20、ガラハは21、グリムは24、サクラは8まで上がった。
「キヨミツ様、お疲れ様です。」
サクラが近寄ってきて、僕に水筒を手渡す。
「うん、サクラもお疲れ。」ゴクゴク
今日まで貯めた金貨は30枚くらいで、これだけ有れば買うことができる。
「しっかし、ここ五日くらい戦いばかりで街に帰っても宿で寝るくらいだったな。」
「食事は森や川で採った山菜やキノコ、魚だけでしたしね。肉は素材の売却として食べれませんでしたし。」
「…そろそろ…肉食いたい。」
アンデット三人組がモンスターの素材を袋に詰め担ぎながら後ろで談話をしている。
今更だけど、アンデットでもちゃんと食事するというのが分かった。本人らはそこまで食べなくても問題ないらしいが、美味いものを食べたい欲求はあるとのことだ。
「よしみんな、街に帰ってサクラの装備を買ったら今日は肉を食いまくろう!」
これだけ頑張ったんだ。少しは贅沢をしてもいいだろう。
「よっしゃ、今日は飲むぞ!」
「明日は遅くまで寝ていたいですねぇ。」
「…たまには、部屋でゴロゴロ…」
「…皆さん、お疲れ様です。」
「サクラ、着替え終わった?」
「はい、初めて着ますのでお時間おかけしました。」
僕らはショーウィンドウで見かけた服装があった店に来ている。
その店は防具屋と服屋がくっついていて、一つの店となっている。
その店の中の試着室で、サクラは購入したものを着ているところだ。
「お待たせしました。」ガラッ
試着室が開き、そこには僕が欲しいと思った服装を着たサクラが立っていた。
桜色の毛並みと着物の黄緑と緑の生地が似合ってる。
しかも綺麗だけじゃなく、サクラが着てる装備には追加付与効果で素早さと命中力が上昇する機能が施されていて、あとオマケとして口元を隠せる布マスクには『隠蔽』スキルが内蔵されている。
ここまでくると舞妓よりもくノ一なのだが、まぁいいだろう。
とりあえず、この装備でサクラは強化ができた。
「似合ってるよ。」
「ありがとうございます。」
これでサクラに新しい服装を着てもらうという僕の願望が叶った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「今日もクエストはモンスター討伐だな。」
サクラがパーティーに加わって一週間が経って、僕らはいつものようにクエストを受けようとギルドに来ている。
サクラの装備が新しくなってからというもの、サクラはすくすくと成長していった。
その原因は僕であり、『強制服従』のレベルがいつの間にか3にまで成長していた。
そしてスキルの効果で眷属の成長補正と能力値補正が加わっている。
これは経験値UPと能力値UPの補正効果ということだろう。
こういうのは大体レベルが低い時にやっておいた方が得になる。レベルが上がるごとに能力値も上がるため、高レベルから補正効果を得てるのと、低レベルからトコツコツと補正効果を得てるのだと、後者の方が最終的にいい。
(なんとか能力値だけを上げれる方法ないかな。)
そう思いながらクエスト受注していると、ギルドの外が騒がしいのが聞こえてくる。
「なんだ?」
「大変だ!この町に歌姫様がやってくるそうだぞ。」
歌姫?誰だそれ。
「みんな、歌姫って知ってる?」
「さぁ?」
「初めて聞きますね。」
うむ、ガラハとクルーエルは知らないようだ。
「…歌姫は踊り子の進化系クラス。で、その歌姫が所属してる事務所が各地を回って…パフォーマンスを披露してる。」
グリムが歌姫とそれに関することを説明してくれた。そういえば情報収集を得意としてたな。
「ちなみにだけど、その歌姫は“紅華猫人(ローズ・キャッツ)”という種族らしい。」
ローズ・キャッツ。つまりその歌姫も猫の毛並みと猫耳と尻尾があるということか。
ぜひ見てみたいな。
「……」
「ん?どうしたのサクラ?」
「あっ、いえ。皆さん、今日もクエスト達成頑張りましょう。」
サクラが俯いて何か考え込んでたようだけど、なにか悩みでもあるのだろうか。
クエストを受けて討伐対象のモンスターを倒して町に帰ると、いつもより賑わっている様子だった。
「今日は祭りでもあるのか?」
あちこちに屋台が出回ってて、まるで夏の頃の花火祭りみたいだ。
「そういえば…歌姫が三日後にこの町にやってくるって町の掲示板に書いてあった。今日は歌姫の事務所に所属してる踊り子たちが先に来て自分たちの踊りを披露する。」
つまり前日祭みたいなものか。メインの歌姫は最終日に来るってことなのか。
「それじゃあ僕らも祭りを楽しもうか。」
「「賛成」」
「……」
僕らはすぐにギルドにクエストの報酬を貰ったら宿に帰り、私服に着替え祭りの中に入る。
「それじゃあここからは別行動といこう。それぞれ祭りを楽しもう。」
そうしてそれぞれが別方向で祭りの中を歩いてく。
「やぁサクラ、一緒に回ろう。」
「…あ、キヨミツ様。はい、一緒に回りましょう。」
僕はサクラと一緒に祭りの中を歩く。
「サクラ、今日はどうしたの?なんだか歌姫のことを聞いてからずっと悩んでばかりで。」
「い、いえ、なんでもありません。」
サクラの言動がよそよそしい。これはなにか隠してるようだ。
「ずっと隠してたらこっちが気になるしさ…話してくれない?」
「……」
グイグイ迫りすぎだと思うけど、こうでもしないと話してくれないだろう。
サクラが黙ってるのは、迷惑を掛けてしまうと思ってるからかもしれないし。
「その…歌姫のことなんですが。」
おっ、サクラが口を開いてくれた。これでサクラの悩みを聞ける。
「…実はそのクラス、私の姉と同じなんです。」
「…え」
「それに、ローズ・キャッツも姉の種族と同じで…その…」
なるほど。
つまり、その歌姫がサクラを奴隷商に売った野郎かもしれないということか。
サクラの姉(元)は自分の取り巻きたちにサクラを襲わせ、ボロボロになったあとで奴隷商に売ったヤツだ。
はっきりいえばクズ野郎だ。
「言いたいことは大体分かった。それでサクラは自分の姉に会うのが嫌なの?」
「その…会いたくないといいますか…顔を見たくないといいますか…」
…恐らくサクラは自分を売った姉に会うのが怖いのだろう。
取り巻きからの暴行で痛めつけられた痛みと恐怖でトラウマを植え付けられた、といったところか。
「三日後は宿屋にいる?」
「い、いえ!私はキヨミツ様と祭りを回りたいです。」
先ほどまでおどおどしてた様子からいきなりグイグイ迫ってきた。
「…私、このままずっと姉に怖がってばかりじゃ嫌です!…でも、一体どうしたらいいのか。」
うーん…これは僕もどうすればいいのか思いつかない。
トラウマを克服するのは難しいだろうし、下手したら余計に悪化しかねない。
(第一に、サクラが自信を持つようになることか大切なんだよな。そのための方法…こういうのって、ダークファンタジーと似てるんだよな。)
ダークファンタジーは追放、裏切り、闇落ちなどなどの類のジャンルだ。
こういうのは主人公が裏切ったり追放した奴らを復讐して見返すのがよくある。そして復讐が完了すれば主人公は一歩前に踏み出すことができる。
(といっても、その復讐方法も思いつかないんだよな。それに失敗すればお尋ね者になるし、そうなるのは避けたい。)
「うーん、どうしたものかな。」
悩みながら祭りを回り、屋台で牛肉らしき肉の串焼きを購入して食べまわる。
「やっぱり思いつくのが仕返しくらいなんだよなぁ。」モグモグ
長年色んなジャンルの漫画に小説、アニメを堪能して主人公が苦難を乗り越える場面を見てきたが、実際(リアル)に自分がその場面に立ち会うといい解決策が思いつかない。
「仕返し、ですか?」モグモグ
「うん。話からしてサクラの姉が最低なヤツだというのが分かったからね。そういう奴にはギャフンと言わせてやりたいんだ。」
「ギャフン、ですか?」
「ギャーとかグエーでもなんでもいい。とりあえず懲らしめてやりたいんだ。でなきゃサクラはずっと姉に恐怖を持ったままだ。」
例えば仕返しの方法として、やられたことをやり返す方法がある。
痛いことや苦しいことを他人にするのは加害者がそれを知らないからだと僕は思う。
一度痛い目に合わせてやらなきゃ更に被害者が増え続ける。
しかし実際、歌姫ことサクラの姉は凄い有名人だから、仕返しが公に晒されたら有名人殺害容疑とかでお尋ね者になる。
「けれど、その作戦が全然思いつかないんだよね。仕返しといっても具体的に何をすればいいのか。どうしたものかなぁ。」ハァ
そうして溜息をついていると、僕の影から『気配探知』の反応がきた。
ここでだが、町についてから今日までレベル上げと金稼ぎで忙しかったため現在のステータス確認をやってなかった。
けれど自分が強くなってることに実感はある。勿論スキル上げに素材吸収もやってきたため、最初の頃より強くなってる。
~ ステータス ~
【名前】黒川聖光
【Lv】33
【適性属性】闇・影・光・聖
【称号】 異世界人・不死者の支配者(アンデット・ルーラー)・希少猫人の主人(レアキャッツ・オーナー)
【クラス(職業)】混沌之主(マスターオブカオス)・銃士(ガンナー)・ひきこもり
~ エクストラスキル・スキル ~
【闇之主(ダークマスター)】
『黒鞭』Lv8
『黒壁』Lv10
→『漆黒城壁』Lv1
『黒爪』Lv10
→『呪爪』Lv2・『毒爪』Lv1
『暗黒箱』Lv10
→『暗黒宝箱』Lv1
『影潜』Lv8
『黒翼』Lv1(未解放)
『影分身』Lv10
→『陰影分身』Lv1・『暗影分身』Lv1
『強制服従』Lv3
『武器闇化』Lv8
『邪眼(改)』Lv5
→『麻痺眼』・『呪怨眼』・『催眠眼』・『封印眼』、『幻惑眼』
『闇魔法』Lv5
→『暗黒弾』⇨『暗黒魔弾』・『黒渦』・『黒繭』・『涅沼』
【光之主(セイントマスター)】
『光速』Lv10
→『超光速』Lv2
『光壁』Lv10
→『聖光城壁』Lv1
『光剣』Lv10
→『聖光剣』Lv3 ・『飛光剣』Lv1
『光翼』Lv1(未解放)
『武器聖化』Lv5
『魔眼(改)』Lv4
→『鑑定眼』『暗視』『遠視』『透視』
『光魔法』Lv5
→『フラッシュアロー』⇨『ツインフラッシュアロー』⇨『トリプルフラッシュアロー』・『ライト』⇨『サンライト』・『シャインレイ』
【一人身(ぼっち)】
『隠密』Lv8
『気配察知』Lv10
→『気配探知』Lv2
『隠蔽』Lv4
『無音』Lv10
『気配遮断』Lv7
【銃使い】
『命中』Lv10
→『必中』Lv2
『身体向上』Lv18
『集中』Lv10
→『思考加速』Lv2
正直、ステータスのインフレがヤバい。
それとスキルレベルが上がって進化しているスキルがある。見たところ10が上限のようだが、『身体向上』だけは18だ。それに『無音』も10で頭打ちのようだ。
恐らく上限に達してないのか、それともこれ以上は上がらないのか。
「マスター…その仕返しというのを、詳しく。」
僕の影からグリムが頭を出して現れる。
そういえばグリムには『影潜』を貸与してた。
それよりも、グリムから仕返しについてのことだ。
「ああ、仕返しというのはーーー」
僕はグリムにこれまでのことを話した。
サクラの姉に仕返しをしてやることなんだが、グリムが突っ込んでくるとなると、暗殺が思い浮かぶ。
グリムは昔、国の諜報員に属してたからだろうか。自分の中で諜報員は暗殺者のイメージが思いつく。
「…俺はそういうのに詳しい。俺の力が、必要なときは、呼んでくれ。」
そう言ってグリムは再び影に潜って、探知内から気配が消える。
しかしグリムがこういうことに詳しいとは。…この世界だと諜報員というのは暗殺術とかを習ってるのがメジャーなのだろうか。
「なにはともあれ、サクラが前に進めるようになるチャンスはできたかな。」
サクラが自信を持つことがこの仕返しの目標だ。ずっと姉への恐怖で縛られて生きることのないようにする、これは絶対達成すべき目標だ。
「キヨミツ様…、その、私なんかのために、すみません。」
「サクラが謝る必要はないよ。ずっとトラウマを抱えて生きるなんて、そんなの苦しいだけだからね。」
サクラは僕の眷属であるけど、一人の仲間だ。仲間が苦しんでるのに放っておけない。
「それに、僕個人として君の姉が許せないんだ。」
僕は前の世界で不良たちに酷い目に遭わされた。アイツらはクズだ。そいつらを許せないと思う気持ちはある。
そしてそんなクズどもと同じやつがいることも許せない。
可笑しい話だ。アイツら以外のやつは僕に何もしてないのに許せないという感情を抱くなんて。
なんていうか、アイツらと同じ酷いことをしてるやつが存在しているのは気分がいいものじゃない。だからだろうか、許せないと思うのは。
「それじゃあ、まずは情報収集からしようか。」
仕返し、いや復讐、天誅の準備だ。
元奴隷の猫人族の彼女に“サクラ”と名付けをして意識を失ったあと、目覚めたらサクラに大きな変化が起きた。
まず、僕の眷属になったことによって種族進化をした。元は猫人族だったのだが、今では“桜花猫姫(パール・キャッツ)”という種族に進化を果たした。
アンデット三人組にパール・キャッツのことを知ってるか聞いてみたけど、三人とも知らないそうだ。
きっとサクラは新種族なのだろう。アンデット・ヒューマンの件もそうだけど、眷属化、もしくは名付けとかが影響してるのだろうか。
あと、サクラが新しいクラスとスキルを獲得したそうだ。進化ボーナスみたいなものかな。
クラスは踊り子から舞妓(まいこ)になり、エクストラスキル『乱桜戦舞(ディスタヴァンス・フォール)』と『扇使い』が追加されてる。
新しいクラスの舞妓は踊り子の進化形で、エクストラスキル『乱桜戦舞』と『扇使い』がそこから派生したのだろう。
エクストラスキル『乱桜戦舞』は『舞踊者』の進化形で、回避系スキルだけでなく、攻撃や受け流し、カウンターなどのスキルが付属している。
『扇使い』はその名の通り扇を使い戦う戦闘スタイルだ。これは舞妓要素が高そうだ。
そういえば、ゲームだと扇の一つである鉄扇には剣を折るソードブレイカーの性能がある。鉄扇をサクラに持たせたらできるかもな。
他には適性属性が花と光、闇に変わっている。
属性の花は植物属性の派生のようだ。花に関する魔法でも使えるのだろうか。
そして最後に、傷跡だらけだった身体が綺麗になっていて、傷跡一つない15歳くらいの桜色の毛並みをした猫耳と尻尾をつけた女の子になっている。
「まさかここまで強く変化するなんてね。ある意味天才だよ。」
「ありがとうございます、キヨミツ様。」
サクラが可愛らしくニコッと笑う。
そんなこんなあって、僕らはいつも通りお金を稼ぐべくクエストを受け、近くの森まで来てる。
サクラにも戦ってもらうことになってるが、彼女のレベルは1になっている。
眷属にするとレベルが1になってしまう。三人組と同じか。これも眷属化によるデメリットだ。
でもその心配はなさそうだ。
「はぁ!」
サクラは鉄の扇を用いて素早い動きでモンスターに攻撃する。
そしてモンスターの攻撃を素早く躱す。
サクラは素早さと回避を活かした戦闘スタイルで、物理攻撃アタッカーといった感じだ。
ちなみにだが、武器を鉄の扇にしたことにより僕らの所持金がゴッソリと減った。
その原因は扇が関係していて、扇の価値が高価だったからだ。
そもそも扇使いというクラスは希少らしく、武器屋に行っても銅扇、青銅扇、鉄扇の三品だけで、しかも順に、金貨1枚、3枚、5枚と高価だ。
値切ろうと考えたけど、これでも原価ギリギリとのことだった。
武器屋に聞いた話だと、扇は観賞用や舞踊用に使われることが多く、戦闘用のは大きな街以外だと余り販売してないそうだ。
けど扇使いが希少というのもなんとなくわかる。銃使いもそうだが、銃や扇とかは剣と魔法の世界だとマイナー武器に分類される。
この世界の武器では僕の知ってる武器のジャンルと同じかもしれない。
話を戻すが、鉄扇を買ったことで金貨5枚もの大出費をした。そのためサクラにもお金を稼いでもらうべく戦ってもらってる。
けど扇だけでサクラの装備は完了していなくて、他にも買いたいものがある。
それはサクラの服装だ。今は胸鎧と麻の服を着ていて、正直僕らの中でとても浮いている。
けれど僕は、どうしてもサクラに着てほしい服を知ってる。
あれは鉄の扇を買った後のことだ。武器屋を出て防具屋と服屋を通りかかったとき、ショーウィンドウ越しに見かけた一つの商品に目を向けた。
それは着物と鎧が組み合わさった服装で、まるでくノ一の服装に見えた。
基本色が黄緑で、所々緑色を使ったコントラストが効いている着物と、黄緑寄りの緑と肌色の組み合わせの枯色の鎧と籠手で、豪華な装飾品はつけられてないシンプルなものだった。
それを見た瞬間、僕はサクラに着せたいと思った。クラスは舞妓だし、どうせなら和風な服装で戦ってもらいたい。
これは僕の我儘なだけだが、気にしたらダメだ。
ちなみにその服装なのだが、値段が扇よりも高く金貨20枚だ。
高いと思うが、その服装以外のだと値段は数倍もする。余り人気はなさそうだ。
けど欲しいものを誰にも取られることがないと思うと少し安心する。
早くお金を貯めてサクラ専用装備を買いたい。
「よし、これだけモンスターを倒せば、クエストの報酬も含めて金貨は数十枚は手に入るだろう。」
あの服装を見てから早五日、五日と短期間だったがモンスターとの戦闘記録を思い返せば数ヶ月分戦った気分だ。
今のレベルなのだが、自分は33、クルーエルは20、ガラハは21、グリムは24、サクラは8まで上がった。
「キヨミツ様、お疲れ様です。」
サクラが近寄ってきて、僕に水筒を手渡す。
「うん、サクラもお疲れ。」ゴクゴク
今日まで貯めた金貨は30枚くらいで、これだけ有れば買うことができる。
「しっかし、ここ五日くらい戦いばかりで街に帰っても宿で寝るくらいだったな。」
「食事は森や川で採った山菜やキノコ、魚だけでしたしね。肉は素材の売却として食べれませんでしたし。」
「…そろそろ…肉食いたい。」
アンデット三人組がモンスターの素材を袋に詰め担ぎながら後ろで談話をしている。
今更だけど、アンデットでもちゃんと食事するというのが分かった。本人らはそこまで食べなくても問題ないらしいが、美味いものを食べたい欲求はあるとのことだ。
「よしみんな、街に帰ってサクラの装備を買ったら今日は肉を食いまくろう!」
これだけ頑張ったんだ。少しは贅沢をしてもいいだろう。
「よっしゃ、今日は飲むぞ!」
「明日は遅くまで寝ていたいですねぇ。」
「…たまには、部屋でゴロゴロ…」
「…皆さん、お疲れ様です。」
「サクラ、着替え終わった?」
「はい、初めて着ますのでお時間おかけしました。」
僕らはショーウィンドウで見かけた服装があった店に来ている。
その店は防具屋と服屋がくっついていて、一つの店となっている。
その店の中の試着室で、サクラは購入したものを着ているところだ。
「お待たせしました。」ガラッ
試着室が開き、そこには僕が欲しいと思った服装を着たサクラが立っていた。
桜色の毛並みと着物の黄緑と緑の生地が似合ってる。
しかも綺麗だけじゃなく、サクラが着てる装備には追加付与効果で素早さと命中力が上昇する機能が施されていて、あとオマケとして口元を隠せる布マスクには『隠蔽』スキルが内蔵されている。
ここまでくると舞妓よりもくノ一なのだが、まぁいいだろう。
とりあえず、この装備でサクラは強化ができた。
「似合ってるよ。」
「ありがとうございます。」
これでサクラに新しい服装を着てもらうという僕の願望が叶った。
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「今日もクエストはモンスター討伐だな。」
サクラがパーティーに加わって一週間が経って、僕らはいつものようにクエストを受けようとギルドに来ている。
サクラの装備が新しくなってからというもの、サクラはすくすくと成長していった。
その原因は僕であり、『強制服従』のレベルがいつの間にか3にまで成長していた。
そしてスキルの効果で眷属の成長補正と能力値補正が加わっている。
これは経験値UPと能力値UPの補正効果ということだろう。
こういうのは大体レベルが低い時にやっておいた方が得になる。レベルが上がるごとに能力値も上がるため、高レベルから補正効果を得てるのと、低レベルからトコツコツと補正効果を得てるのだと、後者の方が最終的にいい。
(なんとか能力値だけを上げれる方法ないかな。)
そう思いながらクエスト受注していると、ギルドの外が騒がしいのが聞こえてくる。
「なんだ?」
「大変だ!この町に歌姫様がやってくるそうだぞ。」
歌姫?誰だそれ。
「みんな、歌姫って知ってる?」
「さぁ?」
「初めて聞きますね。」
うむ、ガラハとクルーエルは知らないようだ。
「…歌姫は踊り子の進化系クラス。で、その歌姫が所属してる事務所が各地を回って…パフォーマンスを披露してる。」
グリムが歌姫とそれに関することを説明してくれた。そういえば情報収集を得意としてたな。
「ちなみにだけど、その歌姫は“紅華猫人(ローズ・キャッツ)”という種族らしい。」
ローズ・キャッツ。つまりその歌姫も猫の毛並みと猫耳と尻尾があるということか。
ぜひ見てみたいな。
「……」
「ん?どうしたのサクラ?」
「あっ、いえ。皆さん、今日もクエスト達成頑張りましょう。」
サクラが俯いて何か考え込んでたようだけど、なにか悩みでもあるのだろうか。
クエストを受けて討伐対象のモンスターを倒して町に帰ると、いつもより賑わっている様子だった。
「今日は祭りでもあるのか?」
あちこちに屋台が出回ってて、まるで夏の頃の花火祭りみたいだ。
「そういえば…歌姫が三日後にこの町にやってくるって町の掲示板に書いてあった。今日は歌姫の事務所に所属してる踊り子たちが先に来て自分たちの踊りを披露する。」
つまり前日祭みたいなものか。メインの歌姫は最終日に来るってことなのか。
「それじゃあ僕らも祭りを楽しもうか。」
「「賛成」」
「……」
僕らはすぐにギルドにクエストの報酬を貰ったら宿に帰り、私服に着替え祭りの中に入る。
「それじゃあここからは別行動といこう。それぞれ祭りを楽しもう。」
そうしてそれぞれが別方向で祭りの中を歩いてく。
「やぁサクラ、一緒に回ろう。」
「…あ、キヨミツ様。はい、一緒に回りましょう。」
僕はサクラと一緒に祭りの中を歩く。
「サクラ、今日はどうしたの?なんだか歌姫のことを聞いてからずっと悩んでばかりで。」
「い、いえ、なんでもありません。」
サクラの言動がよそよそしい。これはなにか隠してるようだ。
「ずっと隠してたらこっちが気になるしさ…話してくれない?」
「……」
グイグイ迫りすぎだと思うけど、こうでもしないと話してくれないだろう。
サクラが黙ってるのは、迷惑を掛けてしまうと思ってるからかもしれないし。
「その…歌姫のことなんですが。」
おっ、サクラが口を開いてくれた。これでサクラの悩みを聞ける。
「…実はそのクラス、私の姉と同じなんです。」
「…え」
「それに、ローズ・キャッツも姉の種族と同じで…その…」
なるほど。
つまり、その歌姫がサクラを奴隷商に売った野郎かもしれないということか。
サクラの姉(元)は自分の取り巻きたちにサクラを襲わせ、ボロボロになったあとで奴隷商に売ったヤツだ。
はっきりいえばクズ野郎だ。
「言いたいことは大体分かった。それでサクラは自分の姉に会うのが嫌なの?」
「その…会いたくないといいますか…顔を見たくないといいますか…」
…恐らくサクラは自分を売った姉に会うのが怖いのだろう。
取り巻きからの暴行で痛めつけられた痛みと恐怖でトラウマを植え付けられた、といったところか。
「三日後は宿屋にいる?」
「い、いえ!私はキヨミツ様と祭りを回りたいです。」
先ほどまでおどおどしてた様子からいきなりグイグイ迫ってきた。
「…私、このままずっと姉に怖がってばかりじゃ嫌です!…でも、一体どうしたらいいのか。」
うーん…これは僕もどうすればいいのか思いつかない。
トラウマを克服するのは難しいだろうし、下手したら余計に悪化しかねない。
(第一に、サクラが自信を持つようになることか大切なんだよな。そのための方法…こういうのって、ダークファンタジーと似てるんだよな。)
ダークファンタジーは追放、裏切り、闇落ちなどなどの類のジャンルだ。
こういうのは主人公が裏切ったり追放した奴らを復讐して見返すのがよくある。そして復讐が完了すれば主人公は一歩前に踏み出すことができる。
(といっても、その復讐方法も思いつかないんだよな。それに失敗すればお尋ね者になるし、そうなるのは避けたい。)
「うーん、どうしたものかな。」
悩みながら祭りを回り、屋台で牛肉らしき肉の串焼きを購入して食べまわる。
「やっぱり思いつくのが仕返しくらいなんだよなぁ。」モグモグ
長年色んなジャンルの漫画に小説、アニメを堪能して主人公が苦難を乗り越える場面を見てきたが、実際(リアル)に自分がその場面に立ち会うといい解決策が思いつかない。
「仕返し、ですか?」モグモグ
「うん。話からしてサクラの姉が最低なヤツだというのが分かったからね。そういう奴にはギャフンと言わせてやりたいんだ。」
「ギャフン、ですか?」
「ギャーとかグエーでもなんでもいい。とりあえず懲らしめてやりたいんだ。でなきゃサクラはずっと姉に恐怖を持ったままだ。」
例えば仕返しの方法として、やられたことをやり返す方法がある。
痛いことや苦しいことを他人にするのは加害者がそれを知らないからだと僕は思う。
一度痛い目に合わせてやらなきゃ更に被害者が増え続ける。
しかし実際、歌姫ことサクラの姉は凄い有名人だから、仕返しが公に晒されたら有名人殺害容疑とかでお尋ね者になる。
「けれど、その作戦が全然思いつかないんだよね。仕返しといっても具体的に何をすればいいのか。どうしたものかなぁ。」ハァ
そうして溜息をついていると、僕の影から『気配探知』の反応がきた。
ここでだが、町についてから今日までレベル上げと金稼ぎで忙しかったため現在のステータス確認をやってなかった。
けれど自分が強くなってることに実感はある。勿論スキル上げに素材吸収もやってきたため、最初の頃より強くなってる。
~ ステータス ~
【名前】黒川聖光
【Lv】33
【適性属性】闇・影・光・聖
【称号】 異世界人・不死者の支配者(アンデット・ルーラー)・希少猫人の主人(レアキャッツ・オーナー)
【クラス(職業)】混沌之主(マスターオブカオス)・銃士(ガンナー)・ひきこもり
~ エクストラスキル・スキル ~
【闇之主(ダークマスター)】
『黒鞭』Lv8
『黒壁』Lv10
→『漆黒城壁』Lv1
『黒爪』Lv10
→『呪爪』Lv2・『毒爪』Lv1
『暗黒箱』Lv10
→『暗黒宝箱』Lv1
『影潜』Lv8
『黒翼』Lv1(未解放)
『影分身』Lv10
→『陰影分身』Lv1・『暗影分身』Lv1
『強制服従』Lv3
『武器闇化』Lv8
『邪眼(改)』Lv5
→『麻痺眼』・『呪怨眼』・『催眠眼』・『封印眼』、『幻惑眼』
『闇魔法』Lv5
→『暗黒弾』⇨『暗黒魔弾』・『黒渦』・『黒繭』・『涅沼』
【光之主(セイントマスター)】
『光速』Lv10
→『超光速』Lv2
『光壁』Lv10
→『聖光城壁』Lv1
『光剣』Lv10
→『聖光剣』Lv3 ・『飛光剣』Lv1
『光翼』Lv1(未解放)
『武器聖化』Lv5
『魔眼(改)』Lv4
→『鑑定眼』『暗視』『遠視』『透視』
『光魔法』Lv5
→『フラッシュアロー』⇨『ツインフラッシュアロー』⇨『トリプルフラッシュアロー』・『ライト』⇨『サンライト』・『シャインレイ』
【一人身(ぼっち)】
『隠密』Lv8
『気配察知』Lv10
→『気配探知』Lv2
『隠蔽』Lv4
『無音』Lv10
『気配遮断』Lv7
【銃使い】
『命中』Lv10
→『必中』Lv2
『身体向上』Lv18
『集中』Lv10
→『思考加速』Lv2
正直、ステータスのインフレがヤバい。
それとスキルレベルが上がって進化しているスキルがある。見たところ10が上限のようだが、『身体向上』だけは18だ。それに『無音』も10で頭打ちのようだ。
恐らく上限に達してないのか、それともこれ以上は上がらないのか。
「マスター…その仕返しというのを、詳しく。」
僕の影からグリムが頭を出して現れる。
そういえばグリムには『影潜』を貸与してた。
それよりも、グリムから仕返しについてのことだ。
「ああ、仕返しというのはーーー」
僕はグリムにこれまでのことを話した。
サクラの姉に仕返しをしてやることなんだが、グリムが突っ込んでくるとなると、暗殺が思い浮かぶ。
グリムは昔、国の諜報員に属してたからだろうか。自分の中で諜報員は暗殺者のイメージが思いつく。
「…俺はそういうのに詳しい。俺の力が、必要なときは、呼んでくれ。」
そう言ってグリムは再び影に潜って、探知内から気配が消える。
しかしグリムがこういうことに詳しいとは。…この世界だと諜報員というのは暗殺術とかを習ってるのがメジャーなのだろうか。
「なにはともあれ、サクラが前に進めるようになるチャンスはできたかな。」
サクラが自信を持つことがこの仕返しの目標だ。ずっと姉への恐怖で縛られて生きることのないようにする、これは絶対達成すべき目標だ。
「キヨミツ様…、その、私なんかのために、すみません。」
「サクラが謝る必要はないよ。ずっとトラウマを抱えて生きるなんて、そんなの苦しいだけだからね。」
サクラは僕の眷属であるけど、一人の仲間だ。仲間が苦しんでるのに放っておけない。
「それに、僕個人として君の姉が許せないんだ。」
僕は前の世界で不良たちに酷い目に遭わされた。アイツらはクズだ。そいつらを許せないと思う気持ちはある。
そしてそんなクズどもと同じやつがいることも許せない。
可笑しい話だ。アイツら以外のやつは僕に何もしてないのに許せないという感情を抱くなんて。
なんていうか、アイツらと同じ酷いことをしてるやつが存在しているのは気分がいいものじゃない。だからだろうか、許せないと思うのは。
「それじゃあ、まずは情報収集からしようか。」
仕返し、いや復讐、天誅の準備だ。
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