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第一章・学園編
第十話
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僕は今学校からの新しい課題で山に来ている。課題は『山に一泊して野営しよう』だ。
そんなわけで山に一泊するが、基本グループで共に野営するものだ。しかし僕は一人で野営しなければならない。
今までもそうで、みんなグループに入れてくれない。最初の頃は心細く寂しかったが、何回かするうちに一人が慣れてきた。
それに今なら人目がないためこれからすることが知られることはないだろう。
「ようし、不死鳥の加護の力を扱えるように特訓だ!」
今の僕は以前とは違って、不死鳥の加護がある。
どんな力なのかは本人に聞いたのだが、実際使ってみないと分からないこともある。
既に行使してるのは【解析眼】【業火】【炎魔法】【無帰】の四つだ。あとは【召喚】と【状態異常耐性】の二つだ。
「まず解析眼だけど、これはとても役に立つんだよな。」
実際にとても役に立っている。これがあれば対象の知りたい情報を知ることができるため、野営での生存率は上がる。
例えば飲み水だが、川や池などで水分補給する際、時折腹を下すことがある。つまり病原体がないか、安全性があるかの判定が分かるわけだ。他にも食材探しで森の恵みを採取する際にも安全性がどうかも分かる。
よって、本当に役に立つ。
「次は魔法だけど、炎魔法には攻撃系はないんだよな。」
炎魔法はその名の通り、炎を司る魔法のことだ。応用もできて万能、ではあるが、僕の場合は少し違う。
「今のところは、起爆焱柱陣と火炎付与、灯火の三つだけか。」
僕の使える炎魔法には、相手に火の玉を投げたり火の息を吹いたりとかの攻撃手段は出来なくて、主にサポートに適したものばかりだ。これらだけでは敵を倒すことはまずできない。
「でも前と比べれば、技のバリエーションは増えたかな。」
火を出せるのなら、わざわざ火を起こす必要は無くなるし、自分の手で水を沸かすことだってできる。あと松明やランプを必要する機会も減る。
以前の数倍は生活に楽ができるだろう。
「あと【業火】なんだけど…、これは悪党に効果的面としかいえないな。」
罪を犯したものほど熱さと痛みが増す性質があるというが、罪を犯すというのがイマイチ分からない。罪を犯す=命を奪うことなのか、悪逆非道な行いをすることなのか、まだ分からないままだ。
でも面白い性能もあって、同時に相手の記憶を読むことが出来るというものだ。
シラキ=スクラを業火で焼いて数分後、僕の知らない記憶が浮かび上がってきた。あのときの記憶はシラキ=スクラのものだろう。
その記憶なのだが、シラキ=スクラは元々ある組織にいた人物だったようだ。
組織の名は【七西星宿】といって、“白虎”を神獣として崇める集団だそうだ。
白虎は不死鳥と次いで伝説級のモンスターであって、聖獣だったり霊獣だったりと、だいたいは不死鳥と同じ扱いとされてる。
もともとシラキはそこで暗殺の任務をしていたそうだが、半年ほど前組織を追放された。なんでも任務で失敗してしまったのが原因のようだが。
しかし組織に戻りたい一心で考えてたとき、不死鳥の卵の情報を手に入れ、その卵を組織に献上すれば組織に戻れると思い計画を立てたようだ。
ちなみにだが、不死鳥を神と崇める集団もいて、二つの組織の仲はよろしくなくお互い睨み合ってる感じだ。
そしてシラキはそのために学園に侵入し、不死鳥の卵を奪おうと企んだわけだ。あと、学園に侵入したのはあくまで保険で、不死鳥の卵を奪われたことがバレたときその罪を学園になすりつけようと考えていたようだ。
そして僕に濡れ衣を着せ、再びチャンスを狙ってたところに僕が生きてるという情報を耳にしたようだ。そして自分の身が危ないと思い僕を殺そうと企んだそうだ。
(でも結局僕に殺されてしまったんだけどな。)
シラキが組織に戻りたいという気持ちは本当だったようだけど、一度は自分を捨てた場所に戻りたいとは。
(執着深いやつだな、正直気持ち悪い。)
でもそれはともかく、一つ思いがけない収穫があった。シラキが焼け尽きた際に記憶が僕の中で巡ると同時に、シラキの技術と技能も頭に入ってきたことだ。
その証拠に僕の潜在能力値が前と変わっている。
【潜在能力値】
『名前』コトノ=オオトリ
『年齢』17
『性別』男
『種族』人間
『基礎レベル』7
『職業』剣士・魔法使い
『適正属性』無・炎
『称号』不死鳥の加護
『技術』剣術(片手剣術、短剣術、双剣術)、投擲術、暗殺術、魔術、探索、隠密
『魔法』無属性魔法(初級)、炎属性魔法(初級)
『固有能力』
解析眼、業火、無帰、契約召喚、状態異常耐性
『能力』
・剣撃威力向上:剣での攻撃時に、速度及び威力にプラス補正
・魔法威力向上:攻撃魔法の威力上昇
・高速演算処理(小):初級魔法の演算処理向上
・演唱破棄(小):初級魔法の魔法演唱を破棄
・不死鳥の寵愛:不死鳥に気に入られた存在。全能力値に上昇補正(小)。更に気に入られることにより補正の強化可能。
『技能』
「剣技」
一閃、円斬
「双剣技」
二段斬り
「投擲技」
投擲刃
「暗殺技」
首刈、心穿突
「魔法」
(無)魔力盾、魔力弾
(炎)起爆焱柱陣、火炎付与、灯火
「魔法剣技」
魔力斬
焔十文字
「魔術」
魔力感知、魔力操作
「探索」
五感集中、気配感知→魔力探知、距離把握
「隠密」
気配遮断、忍足→消音歩行、隠蔽
「でもまさか業火にこんな特性があるなんてな。正直驚いた。」
不死鳥は教えてくれなかったけど、まさか加護を授けた本人も知らなかったのだろうか。
とすれば、僕自身しか知らない力というわけだ。
「もし僕が処刑人になって悪人を殺しまくれば…」
いや、こういう考えはちょっとやめとこう。沢山の技術と技能を素早く手に入れて誰よりも強くはなれるかもしれないが、こういうことのために力を使うのは人としてどうだろうか。
それに加護をくれた不死鳥がそんな僕を見たらきっと失望するかもしれない。不死鳥から加護を没収されるかもしれないし、とにかくやめておこう。
「最後に耐性のやつだけど、まさか全ての耐性がつくなんてな。」
最後に【状態異常耐性】なのだが、これも【業火】と【無帰】と同じくらい凄い。
詰まるところ、全ての耐性を手に入れたもの同然ということだ。火傷だろうが毒だろうが、それらに対する耐性があるわけだ。
しかしながら、今悩んでいることがある。
「全ての状態の耐性ということは、強化とかの状態にも耐性がつくのかな?」
そう思い、今のところはそれが悩みだ。
状態異常のため、悪い方の状態もあれば良い方の状態もある。悪い方はともかく、良い方は困る。
「試そうにもこれって常時発動な感じだし、切り替えは出来ないんだよな。」
謂わゆるパッシブとアクティブというやつだ。
例えばだが、パッシブとは常時発動型で、無帰と状態異常耐性が当てはまる。
アクティブとは切り替え発動型で、解析眼と【業火】が当てはまる。
「これは気にしてても仕方ないか。切り替えできない以上確かめようはないし。」
そんなわけで試してみることは諦める。
「【無帰】がまだ残ってたけど、これは一日一回だけでも凄いんだよな。」
無帰は一日一回の蘇生が可能であって、例え心臓を貫かれようが首を切られようが、はたまた毒で死のうが、一回だけ蘇ることができる。
「でも蘇れるとはいえ、死ぬときが痛いのは嫌だな。それに死ぬと思うと…やっぱり怖い。」
ポツリと弱音を吐く。
蘇生するとはいえ、死ぬときは怖いものだ。心臓を貫かれたときのあの感触は、まだ記憶に残っている。激痛が走り、そしてだんだんと意識がなくなっていき、最後には力が入らなくなり目を閉じ眠る感覚に襲われる。
(でも怖いと思える辺り、僕はまだまともなのかな。)
死ぬのは怖い、当たり前だ。生きているからこそ、生きたいと願うからこそ怖いものだ。死ぬことが怖くないヤツというのは、感情が欠如しているイカレた野郎くらいだ。
「…こうでも思わないとやっていけないな。」
死ぬのは怖い、が、だからといっていつまでも怖がってビクビクしてるわけにはいかない。
僕は冒険者になるのだから、こんなところで臆すわけにはいかない。
怖くても前に進んでこそ一人前の冒険者に近づける、と僕は信じてる。
(こういうのを勇敢というのかな。これじゃ冒険者というより、“勇者”のほうが近いかな、なんて。)
そう一人で頭の中で愚痴りながら野営の準備を始める。
そんなわけで山に一泊するが、基本グループで共に野営するものだ。しかし僕は一人で野営しなければならない。
今までもそうで、みんなグループに入れてくれない。最初の頃は心細く寂しかったが、何回かするうちに一人が慣れてきた。
それに今なら人目がないためこれからすることが知られることはないだろう。
「ようし、不死鳥の加護の力を扱えるように特訓だ!」
今の僕は以前とは違って、不死鳥の加護がある。
どんな力なのかは本人に聞いたのだが、実際使ってみないと分からないこともある。
既に行使してるのは【解析眼】【業火】【炎魔法】【無帰】の四つだ。あとは【召喚】と【状態異常耐性】の二つだ。
「まず解析眼だけど、これはとても役に立つんだよな。」
実際にとても役に立っている。これがあれば対象の知りたい情報を知ることができるため、野営での生存率は上がる。
例えば飲み水だが、川や池などで水分補給する際、時折腹を下すことがある。つまり病原体がないか、安全性があるかの判定が分かるわけだ。他にも食材探しで森の恵みを採取する際にも安全性がどうかも分かる。
よって、本当に役に立つ。
「次は魔法だけど、炎魔法には攻撃系はないんだよな。」
炎魔法はその名の通り、炎を司る魔法のことだ。応用もできて万能、ではあるが、僕の場合は少し違う。
「今のところは、起爆焱柱陣と火炎付与、灯火の三つだけか。」
僕の使える炎魔法には、相手に火の玉を投げたり火の息を吹いたりとかの攻撃手段は出来なくて、主にサポートに適したものばかりだ。これらだけでは敵を倒すことはまずできない。
「でも前と比べれば、技のバリエーションは増えたかな。」
火を出せるのなら、わざわざ火を起こす必要は無くなるし、自分の手で水を沸かすことだってできる。あと松明やランプを必要する機会も減る。
以前の数倍は生活に楽ができるだろう。
「あと【業火】なんだけど…、これは悪党に効果的面としかいえないな。」
罪を犯したものほど熱さと痛みが増す性質があるというが、罪を犯すというのがイマイチ分からない。罪を犯す=命を奪うことなのか、悪逆非道な行いをすることなのか、まだ分からないままだ。
でも面白い性能もあって、同時に相手の記憶を読むことが出来るというものだ。
シラキ=スクラを業火で焼いて数分後、僕の知らない記憶が浮かび上がってきた。あのときの記憶はシラキ=スクラのものだろう。
その記憶なのだが、シラキ=スクラは元々ある組織にいた人物だったようだ。
組織の名は【七西星宿】といって、“白虎”を神獣として崇める集団だそうだ。
白虎は不死鳥と次いで伝説級のモンスターであって、聖獣だったり霊獣だったりと、だいたいは不死鳥と同じ扱いとされてる。
もともとシラキはそこで暗殺の任務をしていたそうだが、半年ほど前組織を追放された。なんでも任務で失敗してしまったのが原因のようだが。
しかし組織に戻りたい一心で考えてたとき、不死鳥の卵の情報を手に入れ、その卵を組織に献上すれば組織に戻れると思い計画を立てたようだ。
ちなみにだが、不死鳥を神と崇める集団もいて、二つの組織の仲はよろしくなくお互い睨み合ってる感じだ。
そしてシラキはそのために学園に侵入し、不死鳥の卵を奪おうと企んだわけだ。あと、学園に侵入したのはあくまで保険で、不死鳥の卵を奪われたことがバレたときその罪を学園になすりつけようと考えていたようだ。
そして僕に濡れ衣を着せ、再びチャンスを狙ってたところに僕が生きてるという情報を耳にしたようだ。そして自分の身が危ないと思い僕を殺そうと企んだそうだ。
(でも結局僕に殺されてしまったんだけどな。)
シラキが組織に戻りたいという気持ちは本当だったようだけど、一度は自分を捨てた場所に戻りたいとは。
(執着深いやつだな、正直気持ち悪い。)
でもそれはともかく、一つ思いがけない収穫があった。シラキが焼け尽きた際に記憶が僕の中で巡ると同時に、シラキの技術と技能も頭に入ってきたことだ。
その証拠に僕の潜在能力値が前と変わっている。
【潜在能力値】
『名前』コトノ=オオトリ
『年齢』17
『性別』男
『種族』人間
『基礎レベル』7
『職業』剣士・魔法使い
『適正属性』無・炎
『称号』不死鳥の加護
『技術』剣術(片手剣術、短剣術、双剣術)、投擲術、暗殺術、魔術、探索、隠密
『魔法』無属性魔法(初級)、炎属性魔法(初級)
『固有能力』
解析眼、業火、無帰、契約召喚、状態異常耐性
『能力』
・剣撃威力向上:剣での攻撃時に、速度及び威力にプラス補正
・魔法威力向上:攻撃魔法の威力上昇
・高速演算処理(小):初級魔法の演算処理向上
・演唱破棄(小):初級魔法の魔法演唱を破棄
・不死鳥の寵愛:不死鳥に気に入られた存在。全能力値に上昇補正(小)。更に気に入られることにより補正の強化可能。
『技能』
「剣技」
一閃、円斬
「双剣技」
二段斬り
「投擲技」
投擲刃
「暗殺技」
首刈、心穿突
「魔法」
(無)魔力盾、魔力弾
(炎)起爆焱柱陣、火炎付与、灯火
「魔法剣技」
魔力斬
焔十文字
「魔術」
魔力感知、魔力操作
「探索」
五感集中、気配感知→魔力探知、距離把握
「隠密」
気配遮断、忍足→消音歩行、隠蔽
「でもまさか業火にこんな特性があるなんてな。正直驚いた。」
不死鳥は教えてくれなかったけど、まさか加護を授けた本人も知らなかったのだろうか。
とすれば、僕自身しか知らない力というわけだ。
「もし僕が処刑人になって悪人を殺しまくれば…」
いや、こういう考えはちょっとやめとこう。沢山の技術と技能を素早く手に入れて誰よりも強くはなれるかもしれないが、こういうことのために力を使うのは人としてどうだろうか。
それに加護をくれた不死鳥がそんな僕を見たらきっと失望するかもしれない。不死鳥から加護を没収されるかもしれないし、とにかくやめておこう。
「最後に耐性のやつだけど、まさか全ての耐性がつくなんてな。」
最後に【状態異常耐性】なのだが、これも【業火】と【無帰】と同じくらい凄い。
詰まるところ、全ての耐性を手に入れたもの同然ということだ。火傷だろうが毒だろうが、それらに対する耐性があるわけだ。
しかしながら、今悩んでいることがある。
「全ての状態の耐性ということは、強化とかの状態にも耐性がつくのかな?」
そう思い、今のところはそれが悩みだ。
状態異常のため、悪い方の状態もあれば良い方の状態もある。悪い方はともかく、良い方は困る。
「試そうにもこれって常時発動な感じだし、切り替えは出来ないんだよな。」
謂わゆるパッシブとアクティブというやつだ。
例えばだが、パッシブとは常時発動型で、無帰と状態異常耐性が当てはまる。
アクティブとは切り替え発動型で、解析眼と【業火】が当てはまる。
「これは気にしてても仕方ないか。切り替えできない以上確かめようはないし。」
そんなわけで試してみることは諦める。
「【無帰】がまだ残ってたけど、これは一日一回だけでも凄いんだよな。」
無帰は一日一回の蘇生が可能であって、例え心臓を貫かれようが首を切られようが、はたまた毒で死のうが、一回だけ蘇ることができる。
「でも蘇れるとはいえ、死ぬときが痛いのは嫌だな。それに死ぬと思うと…やっぱり怖い。」
ポツリと弱音を吐く。
蘇生するとはいえ、死ぬときは怖いものだ。心臓を貫かれたときのあの感触は、まだ記憶に残っている。激痛が走り、そしてだんだんと意識がなくなっていき、最後には力が入らなくなり目を閉じ眠る感覚に襲われる。
(でも怖いと思える辺り、僕はまだまともなのかな。)
死ぬのは怖い、当たり前だ。生きているからこそ、生きたいと願うからこそ怖いものだ。死ぬことが怖くないヤツというのは、感情が欠如しているイカレた野郎くらいだ。
「…こうでも思わないとやっていけないな。」
死ぬのは怖い、が、だからといっていつまでも怖がってビクビクしてるわけにはいかない。
僕は冒険者になるのだから、こんなところで臆すわけにはいかない。
怖くても前に進んでこそ一人前の冒険者に近づける、と僕は信じてる。
(こういうのを勇敢というのかな。これじゃ冒険者というより、“勇者”のほうが近いかな、なんて。)
そう一人で頭の中で愚痴りながら野営の準備を始める。
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