【完結】瀧華国転生譚 ~処刑エンド回避のために幼い病弱皇子を手懐けようとしたら見事失敗した~

飛鳥えん

文字の大きさ
22 / 156

油断と代償(2)

しおりを挟む
江雪の私邸を訪ねるとき、最近では専らそれは花鶏との面会とセットになっていた。
言ってしまえば、そっちの方が目的だったので、江雪自身と対面するのは随分とご無沙汰である。
芦屋としてのボロが出ないよう、なるべく彼を避け、市街地にある自宅へ帰っているせいもあった。
それについて、江雪から何かを言われたことはない。江雪自身も官吏として多忙で、同じ住まいに間借りしていた時でさえ、そう頻繁に顔を合わせていただけではなかった……はずだ。

蘇芳の「記憶の中の江雪」は、それなりに良い後見人だった。もともと李家とは遠縁にあたり、その縁もああって若い蘇芳を推挙して後ろ立てになった。仮住まいだけでなく日々の小遣いまで与えられて、同じ官吏よりも贅沢な暮らしをさせてもらっていた。
それがもとで、ゲームの蘇芳は金遣いが荒く、「花蔦館」のような、いわゆる娼館に出入りしていたり、なにかとよくない噂もあったが、江雪はそれを知ってか知らずか……いや確実に知っていて、多めに見ていた感がある。

「君と会うのは随分と久々な気がするね。寂しく思っていたところだよ。元気にやっていたかい」
「ご無沙汰をしておりました。体調がすぐれず、自宅の方へ篭っておりましたもので」
「そうだったね。なおのこと、私の屋敷にいた方が、身の回りのことは楽だったろうに」
「長く使えてくれている使用人がよく気が利くので……あまりこちらの者に居候の私が迷惑をかけるのは申し訳なく思いまして」
「何を水臭いことを。私と君との仲だ。家族同然に思っているというのに、寂しいことを言わないでおくれ」

困ったように微笑む江雪は、まるで自立を始めたわが子を手元に引き留めたがる父親のように、慈愛を感じさせた。実際は、芦屋とそう年齢は変わらないだろう。穏やかで、そして主要登場人物なだけあって、大人の色気、ともいえる雰囲気を醸している。

(よく言う。この後の展開で蘇芳をボロ雑巾みたいに処刑させるくせに)

蘇芳は江雪に心酔していたようだが、まあ、あいつもまだ10代の若造だからな。
大人の魅力というやつは案外、同性相手の方が魅せられやすかったりする。年齢差があると余計にそうなる。

「最近は花鶏殿下のこともよく見舞ってくれているそうじゃないか。君があの子を気にかけてくれて嬉しいよ」
(やっぱ来たか)

あの子、という言い方に、内心カチンときた。

(殿下って呼べよ。不敬だぞ)

「君が関係各所に話をしているのを聞いたのだが、殿下に学舎にお入りいただきたいと?」
「はい。最年少の北斗様が、あと殿下を差し置いてすでにご兄弟方と同じ教授に習っているのです。遅れをとっては」
「遅れ、とは?」
「学舎に入り後宮に専用の宮をもらって初めて、皇子皇女として認められたも同然。お言葉ですが、せっかく第3皇子である花鶏様を飼いならしておいでなのに、当の本人があのように生気のない人形のまま後嗣の儀にも出れない有様では、我らの苦労も無意味ではありませんか」
江雪は優美な扇子をの角を口許にあて、観察するように蘇芳を見つめた。
「君はなにか誤解をしているようだね、蘇芳。私が主上から殿下の御身をお預かりしているのは、ひとえに多々良姫さまのへの忠義だよ。彼女の生家の後押しがなければ、わが蔡(さい)家がここまで厚遇されてこれたか怪しいものだ。決して殿下を擁立して利に与ろうとしてのことではないよ。邪推はいけないな」

(よく言うぜ)

まるで蘇芳の方こそ、江雪の気持ちを量ることができない私利私欲にまみれた人間である、と言っているようなものではないか。
「申し訳ございません。私はただ、江雪様のお役に立てればと……」
「それで各所に根回しを?この話はすでに主上の近習たちの耳にも入っているようだ」
主上も無視するわけにはいかないだろう、と江雪は言った。

「ああ、そうだ。これも聞かなくては思っていたのだった。私が殿下に差し入れている薬湯を、なぜか毒見と称して自分もかなりの量をのんでいると聞いているが、それはなぜか、私に教えてくれないかい」

蘇芳は慌てることはなかった。前もって答えを用意していたからだ。

「恐れながら江雪様、あの薬に含まれる効能は、殿下の気脈を塞ぎ、生まれ持った神気を損ないます。
もちろん、江雪様がそれをご存じでないのは無理もないこと。私も最初は気づきませんでしたが、あれは古い文献にある花柳草という野草の亜種で、私はそれを、その……懇意にしている”見世”で偶然にもその話を聞いて、気になって文献を手に入れて調べてみたのです」

あくまで偶然で、発見は好奇心からであったのだと、蘇芳は気まずそうな表情を作った。

「偶然知ったのかい?」
「……はい。しかし、そのような場所で、そもそもどういう話の流れで聞いたのかと問われると……外聞が悪く、言い出せず。そんな時たまたま、身辺に怪しい動きのある侍女が行方をくらましたので、念のため毒見と称して殿下が飲む量を減らしていたのです」
「なぜ言わなかった? 古い文献で偶然知ったなら、すぐに教えてくれさえすれば、私も殿下に勧めたりなどしなかったのに。まさか気脈を封じる効用があるとは……知らぬとはいえ、可哀想なことをしてしまった」

気脈がふさがれれば、神気が蝕まれる。それは皇族にとって、心身を病むに十分な効果がある。
もちろん、江雪が知らないわけはない。古い薬で、主な材料は花柳草だが、他にも様々な種類の薬草が複合的に調合されている。意図して調合せねば作り出せるものではなかった。

「万が一にも、よからぬ疑いをかけられてはならぬと思ったのです……」
蘇芳は慎重に、
「江雪は様はご存じでないでしょうが、花柳草はその昔遊女の洗脳に用いられたとか……愚かな奴は、火のないところに煙を立たせ、こちらの足を引っ張ってくるやもしれません」

多少強引だが、これが蘇芳の考えた筋書きだった。

一、蘇芳が江雪を裏切ったわけではないと伝えること。
二、花柳草の効用をこちらが知っていることを伝え、その服用を止めること。
三、あくまで江雪の立場のために、花鶏の学舎入りを認めさせること。

正直、三に関してはまだ手札がそろっていない。先に外堀を埋めるため根回しを進めているものの、蘇芳の立場では大した足しにはならないだろう。

何とか打開策がないかとうかがっていると、ふいに江雪が背を向けて窓辺にゆっくりと歩んだ。
「君は心配性だね。それに、今更殿下を押し上げても、多々良姫様の様子を見るに、ご実家の援助はもう期待できないだろう。主上のお気持ちが離れてしまわれたのを、どうやら花鶏様と花雲様のせいだと思っていらっしゃるようだ」
「……お二人のせいなどではございませんでしょうに」
「殿下から何か聞いているかい?最近は仲良くしているのだろう。例えば、乳母をしていた女性の……名前はなんと言ったかな」
江雪は薄闇の庭園を眺めながら、当時を思い出すように
「君は知らなくて当然だが、当時あまりよろしくない噂があってね。小さかった殿下の耳に入っていないと良いのだが」
「朝月夜様のことですか?いえ、殿下からは何も。それにあれは証拠もなにもない後宮の中での噂話にすぎませぬゆえ」
「……そうか。それもそうだね。余計なことを言ってしまった、忘れておくれ」
江雪はついと目線を外した。
ぽん、と閉じた扇子を左手に持ち変える。

次の瞬間。

バシンっ、と鋭い衝撃が横っ面を打ったと思ったときには、蘇芳はとっさのことに態勢を崩してよろけていた。
(え、……は?俺、今もしかしなくてもぶたれた?)
訳が分からず間抜けにぽかんとしたままの蘇芳に、江雪はゆっくりと近づくと、そのまま頭を鷲掴みぐっと抑え込んだ。なすすべなく床に膝をつく。
「いっ、江雪様!?」
「お前に私が騙せると思うのかな」

蘇芳はぎょっとして、思わず江雪の手をつかんで逃れようとした。
江雪が、おや?という顔をしてみせた。蘇芳の反抗を、不思議そうに見下ろしている。

「どうしたんだい蘇芳。本当に最近のお前は前と少し違うようだ。早勢や、花鶏殿下まで同じことを言ってちいた。そうそう殿下と言えば、ここ最近は私が会いに行っても以前のような態度ではなくてね。なんというか、来たのがお前でなくてがっかりされているような、そんなご様子だ。……悲しいけれど、まあそれだけお前が殿下によくしてやってくれている証左なのだから、良いことだ。けれどね」
話している内容は穏やかだ。
しかし、ぎりぎりと締め付ける指がこめかみに食い込んで皮膚が裂けている。
何とか手を外そうとするが、片手のどこにそんな力があるのか、いくら蘇芳が細身とはいえ万力のように上から押さえつけられて身動きができない。

(なんだ!?なんなんだ、どこで間違ったんだ?なんでいきなりこうなった?)
ぐるぐると会話を思い出していても、地雷原が分からず、だからこそ次の選択を選べない。

「江雪様っ、お許しください!何かお気に障ったのでしたらいかようにも謝罪いたします!どうかっ」
江雪はくすりと笑った。いつもの優し気な微笑みは、しかしかえって場にそぐわず不気味だった。
「私の可愛い蘇芳に怒ってなどいるものか。ただ、気がかりではある」
江雪はやっと手を退けて、その手をそのままつと蘇芳の頬に滑らせた。温かい親指の腹で血がにじんだこめかみをさすると、蘇芳の背筋にぞわぞわとした悪寒が走った。
(何だ、今の)

「……江雪様?」
「そんな顔をしないでおくれ。私はただ不安なだけだ。お前が本当に私の知る蘇芳か、否か」
蘇芳は思わずビクッと肩を揺らした。
(落ち着け、中身が入れ替わったなんて思いつくわけないっ。言葉の綾だろ)

「私を裏切っているわけではないだろうね、うん?」
「勿論です。なぜそんなことをっ、私が何をしたというのですか!」
「では確かめさせてくれないか、私の蘇芳」
優し気な笑みを浮かべ、江雪は扇子の先で蘇芳の顎をぐいと持ち上げた。

またあの感覚だ。
蘇芳は混乱しながら、江雪が求めているものが何なのか読み取ろうとした。しかし、まったくわからない。

そんな蘇芳の様子を見て、江雪はやれやれという様子で椅子に腰を下ろした。

「服を脱いで、背中を見せなさい。は1年も前になるのか。殿下のせいで、お前を構ってやれていなかったね」

しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る

竜鳴躍
BL
異性間でも子どもが産まれにくくなった世界。 子どもは魔法の力を借りて同性間でも産めるようになったため、性別に関係なく結婚するようになった世界。 ファーマ王国のアレン=ファーメット公爵令息は、白銀に近い髪に真っ赤な瞳、真っ白な肌を持つ。 神秘的で美しい姿に王子に見初められた彼は公爵家の長男でありながら唯一の王子の婚約者に選ばれてしまった。どこに行くにも欠かせない大きな日傘。日に焼けると爛れてしまいかねない皮膚。 公爵家は両親とも黒髪黒目であるが、彼一人が色が違う。 それは彼が全てアルビノだったからなのに、成長した教養のない王子は、アレンを魔女扱いした上、聖女らしき男爵令嬢に現を抜かして婚約破棄の上スラム街に追放してしまう。 だが、王子は知らない。 アレンにも王位継承権があることを。 従者を一人連れてスラムに行ったアレンは、イケメンでスパダリな従者に溺愛されながらスラムを改革していって……!? *誤字報告ありがとうございます! *カエサル=プレート 修正しました。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった

angel
BL
つまらないことで死んでしまったボクを不憫に思った神様が1つのゲームを持ちかけてきた。 『転生先で王様になれたら元の体に戻してあげる』と。 生まれ変わったボクは美貌の第一王子で兄弟もなく、将来王様になることが約束されていた。 「イージーゲームすぎね?」とは思ったが、この好条件をありがたく受け止め 現世に戻れるまでノラリクラリと王子様生活を楽しむはずだった…。 完結しました。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

植物チートを持つ俺は王子に捨てられたけど、実は食いしん坊な氷の公爵様に拾われ、胃袋を掴んでとことん溺愛されています

水凪しおん
BL
日本の社畜だった俺、ミナトは過労死した末に異世界の貧乏男爵家の三男に転生した。しかも、なぜか傲慢な第二王子エリアスの婚約者にされてしまう。 「地味で男のくせに可愛らしいだけの役立たず」 王子からそう蔑まれ、冷遇される日々にうんざりした俺は、前世の知識とチート能力【植物育成】を使い、実家の領地を豊かにすることだけを生きがいにしていた。 そんなある日、王宮の夜会で王子から公衆の面前で婚約破棄を叩きつけられる。 絶望する俺の前に現れたのは、この国で最も恐れられる『氷の公爵』アレクシス・フォン・ヴァインベルク。 「王子がご不要というのなら、その方を私が貰い受けよう」 冷たく、しかし力強い声。気づけば俺は、彼の腕の中にいた。 連れてこられた公爵邸での生活は、噂とは大違いの甘すぎる日々の始まりだった。 俺の作る料理を「世界一美味い」と幸せそうに食べ、俺の能力を「素晴らしい」と褒めてくれ、「可愛い、愛らしい」と頭を撫でてくれる公爵様。 彼の不器用だけど真っ直ぐな愛情に、俺の心は次第に絆されていく。 これは、婚約破棄から始まった、不遇な俺が世界一の幸せを手に入れるまでの物語。

処理中です...