24 / 156
油断と代償(4)
しおりを挟む
江雪は無表情に蘇芳は見下ろしている。やがて
「お前がそんな風に言うなんて。花鶏殿下に冷たく当たっていたことを、私が知らないとでも?」
そんなお前のことを信用するのは難しいな、と焦らすような態度に、蘇芳は今されたことも半分忘れて言い募った。
ここで話が流れたら、いつまたチャンスが来るかわからない……!
「今までの私の行いは心から悔いております!だからこそ、私をお許しくださった殿下のためにも、これからは何の邪心なく殿下に尽くすつもりです」
(実際はまだ許すとは言ってもらえてないけど……ごめんな少年、嘘も方便ってことで!)
江雪はおかしそうに笑った。
「おやおや……またとんでもないことを言い出すものだ。お前程度の献身が、この先あの子に何の利をもたらすというのかな」
それは明確な嘲笑だった。蘇芳はカッとなりそうになる胸の内をさらけ出さないよう堪えた。
ただのカンでしかなかったが、江雪の挑発には含みが感じられたのだ。
(こいつ、俺の反応を見てるな)
「すべて本心です、江雪様。いかがすれば信じていただけるのですか?」
まるでつい先日、花鶏としたやり取りの再現だ。あの時は蘇芳が主導権を握っていたが、今回は逆に、江雪に(言わせられた)感が否めない。
それでも、蘇芳は江雪からの言質が欲しかった。
「だからさっきから言っているだろう。お前の覚悟を私に見せておくれ。殿下へのお気持ちがどの程度のものなのか、せめて私にだけは証明してもらわなければ、大事な殿下をお前に任せる決心がつかない」
「ですからどうやって」
「口先ではなんとでもいえる。褒賞は要らないだとか、相手のことが大切であるとか、真心というのは手の平に差し出してさあほらと見せることはできないが、行動はその心を示す指針となりうるものだ。……では、この場合のふさわしい行動とは何だろうか」
蘇芳の髪から手を放して、そのまま、また壁に手をついた元の体制に戻るよう促された。
「殿下のためにどこまで己の身を犠牲にできる?そのためにお前は何を示せるのだ。蘇芳」
江雪が何を求めているか、薄々感づいてはいた。
(処刑される最悪なENDを天秤にかけたら、よっぽどましだ。今だけ耐えりゃいいんだから)
むしろ、江雪がさっき見せた意味不明な行為の方が怖かったが、意外にも、あの湿ったような空気は尾を引いていない。
もしや蘇芳とそういう関係があったのか!?乙女ゲームの世界なのに?と、パニックになりかけたのだが……。
要求されるのがその手の行為であったなら、さすがに蘇芳も命と引き換えとはいえ即座に応じることができるか自信がない。
だから内心、安心していた。今この時だけ、痛みに耐えればいいと分かって。
それが二度目の油断だった。
「お前がそんな風に言うなんて。花鶏殿下に冷たく当たっていたことを、私が知らないとでも?」
そんなお前のことを信用するのは難しいな、と焦らすような態度に、蘇芳は今されたことも半分忘れて言い募った。
ここで話が流れたら、いつまたチャンスが来るかわからない……!
「今までの私の行いは心から悔いております!だからこそ、私をお許しくださった殿下のためにも、これからは何の邪心なく殿下に尽くすつもりです」
(実際はまだ許すとは言ってもらえてないけど……ごめんな少年、嘘も方便ってことで!)
江雪はおかしそうに笑った。
「おやおや……またとんでもないことを言い出すものだ。お前程度の献身が、この先あの子に何の利をもたらすというのかな」
それは明確な嘲笑だった。蘇芳はカッとなりそうになる胸の内をさらけ出さないよう堪えた。
ただのカンでしかなかったが、江雪の挑発には含みが感じられたのだ。
(こいつ、俺の反応を見てるな)
「すべて本心です、江雪様。いかがすれば信じていただけるのですか?」
まるでつい先日、花鶏としたやり取りの再現だ。あの時は蘇芳が主導権を握っていたが、今回は逆に、江雪に(言わせられた)感が否めない。
それでも、蘇芳は江雪からの言質が欲しかった。
「だからさっきから言っているだろう。お前の覚悟を私に見せておくれ。殿下へのお気持ちがどの程度のものなのか、せめて私にだけは証明してもらわなければ、大事な殿下をお前に任せる決心がつかない」
「ですからどうやって」
「口先ではなんとでもいえる。褒賞は要らないだとか、相手のことが大切であるとか、真心というのは手の平に差し出してさあほらと見せることはできないが、行動はその心を示す指針となりうるものだ。……では、この場合のふさわしい行動とは何だろうか」
蘇芳の髪から手を放して、そのまま、また壁に手をついた元の体制に戻るよう促された。
「殿下のためにどこまで己の身を犠牲にできる?そのためにお前は何を示せるのだ。蘇芳」
江雪が何を求めているか、薄々感づいてはいた。
(処刑される最悪なENDを天秤にかけたら、よっぽどましだ。今だけ耐えりゃいいんだから)
むしろ、江雪がさっき見せた意味不明な行為の方が怖かったが、意外にも、あの湿ったような空気は尾を引いていない。
もしや蘇芳とそういう関係があったのか!?乙女ゲームの世界なのに?と、パニックになりかけたのだが……。
要求されるのがその手の行為であったなら、さすがに蘇芳も命と引き換えとはいえ即座に応じることができるか自信がない。
だから内心、安心していた。今この時だけ、痛みに耐えればいいと分かって。
それが二度目の油断だった。
235
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる