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ラミアの焦り
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第三学年へと進学し、どちらかといえば平穏な日々が過ぎていた。
ヴィルフレドに付き纏うことが減っていたラミアも、未だレオナルドに執着しているようで、アロイスに関心のかの字も見せない。
入学して暫くはアロイスにベッタリだったラミアの態度の変化も、周囲は学園に慣れたのだろうと興味を薄れさせていた。
王宮へ通い始めたヴィルフレドだが、学生時代とは違い、学園が終わる時間より遅くに帰ってくる。
二人で過ごす時間が減って寂しくなるかと思ったが、晩餐が終わると就寝前にヴィルフレドがアロイスの部屋を訪ねてくれるため杞憂に終わった。
僅かな時間だが、それでも二人で過ごす時間が嬉しかった。
そんなある日。
晩餐を終え自室に戻る時だ。もう遅い時間にも関わらず、玄関ホールの方から声が聞こえてくる。
「騒がしいな」
「なんだろう?」
「ヴィルフレド様、実は…」
二人で首を捻っていると、ルーシャンが慌てた様子でヴィルフレドの元へ来て耳打ちをした。
見る見るうちにヴィルフレドの眉間に深い皺が刻まれる。
「どうしたの?」
妙な胸騒ぎがした。何故かラミアの顔が脳裏を過ぎっていく。
最近のラミアはレオナルドにベッタリとは言え攻略が上手くいっているかと言えば微妙である。肝心のヴィルフレドが全く関心を示してないからだ。
辺境伯爵がどうなっているかは分からないが、三人の好感度が上がらないと攻略が進まなくなるため、ヴィルフレドの好感度も当然重要になってくる。
レオナルドと仲良くなって終わりでは無いのだ。
「いいじゃないっ!ヴィルフレド様に会わせてよ!!」
ホールの方から女性の大きな声が響いてくる。
ラミアだ。ラミアが二人が住むこのタウンハウスへと押しかけてきたのだ。
驚きのあまり放心するアロイスの横で、ヴィルフレドとルーシャンが呆れを含んだ驚愕の様を見せる。
「早く会わせなさいよっ!」
怒声に似た声にアロイスはビクリと肩を竦ませた。
騒ぎ続けるラミアに、ヴィルフレドは憤怒の表情を隠すことなく玄関へと向かっていく。アロイスも恐る恐る後を追った。
「どうしてアロイス兄様は一緒に住んで、私は一緒に住めないのよっ!?」
エーレンフリートが対応していたようで、見当違いな八つ当たりを受けている。
「どうした」
「ヴィルフレド様ぁ!」
ヴィルフレドが顔を見せると、それまで歪ませていた顔を一瞬で変え、ラミアが甘ったるい声を出した。
「ヴィルフレド様、私もこの家に一緒に住まわせて下さい。兄様だけずるいですわ!私ももっとヴィルフレド様と仲良くなりたいです」
体をしならせながらヴィルフレドに縋ろうとするラミアを、エーレンフリートがサッと手を出し遮る。
「みだりに触れませんよう」
「別にいいじゃない、ちょっと触るくらい」
「婚姻前の女性が家に住まわせろと宣わったり、異性の体に触れようとするなど…男爵家の淑女教育は随分斬新なようだな。婚約者であってもそんなはしたない事を言えば貞操観念の低さに婚約解消されてもおかしくないぞ」
明らかな嫌悪を示し、到底女性に向けるものではない顔をラミアに見せている。まるで汚物でも見ているようだ。
「なによ!私はこの世界のためを思ってやってるのに!なんでそんな事言われなきゃなんないのよッ」
心外だと騒ぎながら、エーレンフリートに誘導されとうとうラミアは外へと追い出されてしまった。
「なんなんだ、あの女は…」
ヴィルフレドの顔が珍しく引き攣っている。
アロイスの前でラミアのことをあの女呼ばわりしたのも初めてだ。一応アロイスの妹として最低限の礼節を保っていたが、沸点を超えてしまったのだろう。
だが、アロイスの頭の中はラミアの言葉でいっぱいになっていた。
『この世界のためにやってる』
矢張りスタンピードを防ぐ為に動いているのだ。強引に押しかけてきたということは攻略に躓いているからだろう。
だが今からヴィルフレドの好感度を上げるのはかなり困難だ。アロイスが見る限りラミアに対する好感度は底辺に等しく、今のラミアが必死に足掻けば足掻くほど下がってしまう。
好感度を戻すためには期間を開けて冷静な立ち振る舞い見せないといけないが、既にラミアは第二学年に上がっている。スタンピードまで二年を切っているのだ。あまりにも時間が無い。
アロイスがなにかフォローしようにも、それくらいでヴィルフレドが流されるほどヤワな意思じゃないことは重々承知だ。
(スタンピードさえ起こらなければ…)
何かヒントがないか過去の記憶を辿るが、これといって思い出せない。第一ラミア視点でストーリーが進んでいったのだからスタンピードについても王から要請された事くらいしか記憶にない。
歯痒さを感じながらアロイスは、ラミアが連れ出された扉を見つめた。
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