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*とある薬師の人生譚
しおりを挟む夜。
灯りを落とした部屋は月明かりで薄暗い。
トーリは寝台に座り、スイハはその前に片膝をついていた。
金色の瞳がトーリだけを映す。
「……見すぎ」
「好きなものを見るのに、理由がいるのか?」
真顔で首を傾げている。
ふいに天然さを見せるのは何なのだろうか。
言葉を失っていると、スイハの手がトーリの頬に触れた。
その目はいつになく真剣だ。
「……精霊との契約については、どこまで知っている?」
唐突な問いに目をしばたたかせる。
精霊についてスイハが語ったことはない。
トーリが知っている事と言えば、皇城で療養中に調べた事くらいだ。
「本に書いてあったのは……魔力を媒介に契約を結び、精霊と契約した者は、不老不死の力を手に入れるって……」
捲ったページを思い出すように記憶を探っていく。が、まるで夢語りのように綴られていたその文は、言葉にすればするほど、ただのお伽噺のように思えた。
不老不死なんて、現実離れしていて、まるで雲を掴むような話だ。
「概ねは合っている。ただ、我々精霊は自然の力に左右されるもの。自然の力が弱まれば、人間界で精霊体を保つことは難しい……人間から見れば死として扱われるだろう。だが、精霊体を保てなくなれば我々は自然に返るだけ。精霊の概念として、死とは無なのだ」
「えっと……不老不死になるんじゃなくて、契約した人も自然に返るってこと?」
「そうだ。精霊がその身を保てなくなった時、契約者も共に自然へと返る」
頬に添えられたスイハの手に触れる。そして、ふっと笑みを漏らした。
「じゃあ……スイハと契約したら、ずっとスイハと一緒ってことだ」
「ふっ……そういう事だ」
一瞬、きょとんとした表情を浮かべたスイハも、嬉しそうに口元を緩めている。そして続きを語った。
「トーリは今、私と仮契約状態にある。トーリの命が尽きかけた時、私の魔力の殆どを譲渡したからね」
指先がゆっくりと頬を撫でる。
この体の中にスイハの力が巡っている。それは、目を閉じるだけで感じるとこができる。
「どうすれば契約が成立するの?」
持っと深く繋がるために、躊躇うことなどない。
「私がトーリの魔力を受け入れる。それだけで契約は結ばれる」
「それだけ?」
「それだけだ」
確かに、思い思われて精霊と契約するとは限らない。なんなら、こんなのレアケースだろう。
だがトーリが考えていたのは、もっと即物的だった。
「どうした?」
「もっと、触れ合いたいって言ったら……スイハは、嫌?」
その、性的な意味で、とか細い声で呟く。
「それは……どういう意味か、わかって言っているんだろうな」
頷いたと同時だった。
力強い腕に押し倒され、あっという間にベッドに背を預けていた。
「色んな人間を見てきたが……このような即物的な欲をぶつけたいと思ったのは、トーリが初めてだ」
その心情を表すように、スイハの目はどろりと惚けている。
触れるスイハの手はひどく丁寧だった。
まるで、壊れものを扱うように、トーリの体をなぞっていく。
「……もう、どこにも行かせない……私のそばで、生きろ」
それは、世界を救うよりもずっとシンプルで、ずっと重い願いだった。
「……うん」
短い返事。それと共に、唇が塞がれる。
一度だけ快感を教えられた胸の突起を擦られ、あの日の悦楽が蘇った。
かぁっと全身が熱くなり、この先に対する期待が膨らんでいく。
脱がされ、全身を愛撫され、力が抜けたところで、後孔にスイハの指が触れた。
「んっ、」
指先が窄まりを撫でる。ヒクヒクと勝手に動いているのがわかって、急に恥ずかしくなった。
開いた足の間でスイハの目がじっとそこに注がれている。
「ス、スイハ…恥ずかし、ぃ」
「いや……可愛らしくて、つい」
顔を赤くするトーリを他所に、何度も何度も指がそこを撫でた。時々指先が食い込み、中に入りたがっているのがわかる。
そして、それはトーリも望んでいること。
開かれたことのない体が、一本、二本と長い指を飲み込んでいく。
合わせるようにトーリの口からは甘い声が漏れた。
三本目の指がトーリの中に馴染んだ頃。ぬちゃ…と粘着質な音をたて抜かれていく。
そして、スイハの熱いものがトーリの後孔に宛てがわれた。
「ぁ、スイハ……」
「トーリ……」
熱を帯びた声。
名を呼ばれただけで後孔がスイハのものに吸い付く。
トーリのものも、先走りを垂らしながらピクっと揺れた。
「あ、あっ……」
グッとスイハの熱がトーリの中へと押し入る。圧迫感にスイハの手を握れば、宥めるように指が絡められた。
全て受け入れたい。
はぁ、はぁ、と大きく息をしながら、入ってくるその長大なものを受け入れていく。
「大丈夫か?」
ピタリとスイハの動きが止まり、窺うような目がトーリに向けられる。
それに小さく頷いた。
「平気……すごい、お腹がいっぱいで」
自身の下腹を撫でる。この中にスイハが居るのだ。
そう思うだけで愛しさが込み上げ、口元が緩む。
「ッ……あまり、煽るな」
「んぁっ」
ぐっと中で熱が膨らむ。
ゴリッと中を擦られる感覚が増し、トーリの口から堪らない快感がこぼれた。
「すまない……止まらない」
スイハの目が獰猛に変わり、普段と違う低い声にトーリの背筋がゾクリと震える。
どんなスイハでも受け入れたい。
それを伝えるように絡まったスイハの指をするりと撫でた。
瞬間、スイハの腰がパンッとトーリの臀部に打ち付けられた。先程より奥にスイハの熱を感じ、全身がふるふると震える。
落ち着く間もなくずるっと抜けていく感触。それは中が収縮する前にまた奥へと埋められた。
「あぁッ!あ!ッふ、ぅ……ッ、は、ぁ」
「トーリ……ッ、トーリ」
荒い息を吐きながら、スイハのものが奥を何度も抉る。その度にトーリの体は跳ねた。
ぐちゅっぬぼっと繋がった場所から水音が溢れ、トーリの口からは嬌声が止まらない。
早くなるスイハの腰の動き。跳ねる体。
「愛してる」
覆いかぶさったスイハに閉じ込められ、唇が塞がれる。
応えるように、スイハへと魔力を流した。
途端、全身が弛緩していく。
「ん、ん……っんあああッ!」
ぬぼっと、体の奥を貫かれた音が聞こえた気がした。刹那、全身に走る快感に仰け反り、腹の奥に熱いものを感じると同時に、トーリのものから白濁が飛び出した。
「はぁ……はぁ……これで、私のものだ」
スイハの腕がきつくトーリを抱きしめる。
その暖かさにトーリは微笑みながら、静かに目を閉じた。
森の家には、静かな朝と、穏やかな夜が訪れていた。
朝の光がカーテン代わりの布越しに差し込み、目を覚ました時、背中に感じるぬくもりに頬を緩める。
鳥たちに餌を与え、簡単に朝食を済ませ、森で薬草を摘む。たまにだか、ライアンとニコが戻ってきた時はその冒険譚を聞き、夜になれば居心地のいいスイハの隣で眠りにつく。
そんな日々が、世界の片隅でひっそりと続いていた。
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