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世界の片隅で、いちばん近くに
しおりを挟む精霊は戻り、帝国は再建した。それに伴い帝国内の争いは、少しずつ減っていった。
けれど、物語の中心は、もうそこにはない。
森の奥。
国の中心から少し離れた小さな家で、ただの薬師と精霊王として、今日も平穏を堪能していた。
午後の森はどこか眠たげで、柔らかな陽射しが木漏れ日となって地面に落ちる。風が、乾かした薬草の香りを運んでいた。
軒下に木製のチェアとミニテーブルを置いただけの、テラスと呼ぶには些かシンプルすぎるカフェスペース。
そこに腰掛け、慣れた手つきで薬草を仕分けていく。
「……あ」
背後からの温もりに、小さな声を漏らした。
気づいたときには腕が回され、その暖かさを享受する。
「また背後から……」
「正面から行くと、逃げるだろう」
「逃げないってば」
くすりと笑ってみせるが、スイハの言葉が固くなる。
「信用できない」
あまりにもきっぱり断言するので、思わず笑みが強ばった。
スイハの顎が、トーリの肩に軽く乗る。
重みはほとんどないのに、存在感だけが強い。
「今日は、どこにも行かないだろうな」
「行かないよ。薬も仕上げないとだし」
「……ならいい」
そう言いながらも腕は緩まない。
むしろ、じわじわと距離を詰めてくる。
「……スイハ、暑い」
「我慢しろ」
「精霊王なのにわがまま言って」
「精霊王だからだ」
呆れたようにいえば、すぐさま開き直られた。理不尽だ。
トーリは小さく笑うと抵抗するのをやめ、背中を預けた。
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